「エンシュア」をおいしく&効果的に飲む

抹茶ドリンク

エンシュア・リキッドで
最低限の栄養を確保している

「最近の食事は、もっぱらエンシュア・リキッドに頼っています。最低限の栄養が確保されているからでしょうか、お蔭で今年はインフルエンザにも風邪にもかからず、なんとか桜のシーズンを迎えられそうです。また一緒にお花見に出かけましょうね」

――今年もまた、こんなうれしいメールが、そろそろ80歳になる知人女性から届きました。彼女は仕事上の大先輩です。3年前の春先、食事中に喉を詰まらせて救急搬送されています。

このとき診察した医師から、この先も食べたり飲んだりしたものがうまく呑み込めずに誤って肺に入る可能性が多分にあることを伝えられた、とのこと。続いて、それを繰り返していると誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を起こす危険がある。そうなったら命とりだからと、口から食べたり飲んだりすることをやめたほうがいいのではないか、と提案されたそうです。

でも先輩は、「もしものとき」について書き記した事前指示書のなかで、「口からものを食べられなくなっても人工的に栄養を補給することは望まない」選択を明記しています。

このことを伝えると、医師はしばし考えたのち、「それなら自然でいきますか」と納得。そして処方してくれたのが、エンシュア・リキッドという経腸栄養剤(けいちょうえいようざい)だったのです。

口から食べることを続けている

このエンシュア・リキッドについては、中咽頭がんの手術後、固形食を続けていて誤嚥性肺炎になるのが怖いからと、エンシュア・リキッドを食事代わりにしているという医師の話をこちらの記事で紹介しました。

→ 「エンシュア」で「口から食べる」をあきらめない

そこでも書きましたが、エンシュア・リキッドとは、1缶(250ml、250Kcal)にたんぱく質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラルといった主要栄養分のすべてがバランスよく配合された医療用医薬品としての経腸栄養剤です。

手術後の栄養保持や長期にわたり経口摂取することが困難な場合の栄養補給に使用することを目的に開発された、言わば総合栄養ドリンク剤です。「固形物を食べられない」「食欲がない」などの症状が続くような場合に、医師の処方のもとに利用されています。

最近では先輩のように、食事中にむせたり咳き込んだりするようになり、医師から誤嚥性肺炎のリスクを指摘されたものの、「口から食べることにこだわりたいから」と、このエンシュア・リキッドを選択する高齢者が少しずつ増えているそうです。

むせるなど嚥下障害のある方は、とろみ調整用食品を使ってエンシュアにとろみをつけて飲むようにすると誤嚥防止になります。

嚥下障害があるとエンシュアなどの経腸栄養剤は流動性が高く、誤嚥しやすい。そのリスクを避けようと「とろみ調整用食品」でとろみをつけようとしても、うまく混ざらないという経験はないだろうか。その解決策として、二度混ぜ法を紹介。併せてとろみ調整用食品の使用法も。

なお、高齢者のなかには、エンシュアの甘みとドロッとした濃さに馴染めない方もいるようです。その場合は、「ラコール」を処方する医師が多いと聞きます。

エンシュア・リキッドは医療用医薬品です。入手には医師の処方箋が必要ですが、処方してもらえない場合は、ネットで購入可能な「Nestle(ネスレ) アイソカル」 や「明治 メイバランス」 等の栄養補助食品がお勧めです。
→ 明治メイバランスMiniカップを試してみた

エンシュア・リキッドの濃縮タイプ
エンシュア・Hで効率的に栄養補給

エンシュア・リキッドは、1mlが1Kcalになるように調整された栄養ドリンクです。1缶飲めばエネルギーが250Kcal、たんぱく質と脂質がそれぞれ8.8g、炭水化物が34.3gとれるようになっています。

食事が十分とれない人に食事代わりに飲んでもらえるようにと、フレーバー(食用香料)を変えて「バニラ味」「コーヒー味*」「ストロベリー味」の3種類が用意されています。

エンシュア・リキッドのコーヒー味について、製造販売元のアボットジャパンは2022年2月、諸般の事情により在庫品の出荷をもって販売を中止する旨発表している。コーヒー味をご愛用の方は、ハイカロリータイプのエンシュア・Hのコーヒー味を検討してほしいとのこと。

エンシュア・リキッドには、「飲む量を減らしたい」「水分を制限したい」という方のための、「エンシュア・H」という濃縮された高エネルギータイプの経腸栄養剤もあります。こちらは1缶(250ml)で375Kcal、たんぱく質と脂質がそれぞれ13.2g、炭水化物が51.5gと効率的に栄養補給できるように調整されています。

このタイプには、「バニラ味」「コーヒー味」「ストロベリー味」「メロン味」「バナナ味」「黒糖味」のほか、2019年2月には「抹茶味」が新たに加わり、7種類の風味を楽しめるようになっています。なかでもとりわけ人気の高い「コーヒー味」は、65歳以上の高齢者の嗜好に合わせようと、2020年に、インスタントコーヒーやコーヒー牛乳の風味を味わえるようにリニューアルされています。

詳しくはこちらを読んでみてください。
→ エンシュア・Hのコーヒー味が美味しくなった

栄養をより効率的にとりたい方には、エンシュア・Hの方が向いているでしょう。ただ、試しに飲ませてもらったのですが、かなり甘いうえに濃くドロッとしていて、正直、飲みにくかったです。本来冷たいはずのスムージーが温かくなった感じ、と言ったらいいでしょうか。

エンシュア・リキッドは1缶250mlです。小食で1缶を飲み切れないという方のために、2019年6月、少量でも高たんぱく・高カロリーを補給できる「イノラス」が新発売されています。詳しくはこちらの記事を。
→ 「エンシュア」を「イノラス」に変えてみたら

エンシュア・リキッドを
無理なくおいしく飲む工夫を

試飲してみてちょっと気になったののは、どちらのタイプも薬のような風味が残ることです。この点について先輩は、日によって粉末タイプの青汁を混ぜたり、時にインスタントコーヒー、あるいはココアを混ぜたりと、味を変えて飲んでいるそうです。

ネットで検索してみると、そのままでは飲みにくいからと、ゼラチンを加えてプリン状にしたり、ゼリーにしたり、いったん凍らせてシャーベット状にしたりしている方もいるようです。

ただ、ゼリーやプリンにする方法では、加熱処理や凍らせることにより貴重な栄養素であるビタミンやミネラル類の一部が失われてしまいます。この点を考えると加熱や凍らせる方法は、積極的にはお勧めできません。

ただ、「ビタミンやミネラル類は他の方法で補うから、とにかくエンシュアでエネルギーを補給したいという場合は、飲みやすさを優先して凍らせたりするのもやむを得ない」と話す医師もいることを付け加えておきます。

加熱・冷凍で栄養分が失われる

エンシュア・リキッドの添付文書でも、直火で加熱するのは避け、温める場合は、未開缶のまま微温等(30~40℃)で湯煎(ゆせん)する、つまり間接的に温めるように注意しています。また、冷凍も避けるよう注意を促しています。

エンシュア・リキッドもエンシュア・Hも、飲んですぐに下痢をしてしまうことがままあるようです。この場合、乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)*のためではないかと早とちりして、飲むことをあきらめてしまう方が多いようです。

しかし、この栄養剤には乳糖は使われていませんから、乳糖不耐症の方でも安心して飲むことができるはずです。先輩も、飲み始めた当初は何度か下痢をしたそうですが、少し湯煎(ゆせん)してほどよく温めてから飲むようにしたところ、下痢はしなくなったとのこと。

そして最近では、湯煎しなくてもゆっくり時間をかけて飲むことで、下痢は全くしなくなっているとのこと。下痢に関するさらなる情報はこちらの記事を読んでみてください。
→ エンシュアによる下痢はこうして防ぐ・止める

牛乳アレルギーの方はこちらの記事を参考に!!
→ 牛乳アレルギーで「エンシュア」を飲めない!?

*乳糖不耐症とは、牛乳などに含まれる乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)の働きが十分でないために、乳糖を消化吸収できず、お腹がゴロゴロしたり下痢したりすること。
詳しくはこちらを。
高齢者にとって牛乳は、フレイルやサルコペニアの予防に貴重なたんぱく源だ。しかし、牛乳を飲むと「お腹ゴロゴロ」等の症状に見舞われるため牛乳は飲めない人が少なくない。その主な原因である乳糖不耐症でも飲み方を工夫すれば牛乳を飲めるようになるという話をまとめた。

なお、食事と「エンシュア」を併用している方は、食欲との関係で、飲むタイミングや飲み方で苦労しておられるのではないでしょうか。

この点については、こちらの記事で岐阜大学の田中善宏医師らが提案する方法を紹介しています。是非お役立てください。
→ 食事の妨げにならない「エンシュア」の飲み方

「エンシュア」については、以下の記事もお役に立てると思います。

→ 「エンシュア」を医師に処方してもらえない?
→ 「エンシュア」はどこまで食事代わりになるのか
→ エンシュアに「エネーボ」の併用はどうかしら