「エンシュア」を医師に処方してもらえない!?




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「エンシュア」の処方を
老健施設の医師に断られた

「最近の父は口からほとんど食べられなくなっている。胃瘻(いろう)のような人工栄養は頑として拒否するので困っていたところに、やっといいものを教えてもらい、お世話になっている老健施設の医師に相談したら、ここでは処方できないと断られてしまった。病院なら処方してもらえると聞いたのに、老健施設はどうしてだめなの?」

父親に面会に行くたびに、心身ともに消耗の度合いが激しくなっていることが気がかりだと話していた友人から、いささか怒り心頭気味の電話が入りました。
エンシュア・リキッドの話です。

彼女にはつい先日、食が細くなり口からの食事だけでは十分な栄養が補えなくなってきた、あるいはつっかえ感があったりむせたりして満足に食べられなくなったときに、「エンシュア・リキッド」や「エンシュア・H」という医薬品の総合栄養ドリンク剤を食事代わりにしている人がいる、という話を伝えたばかりです。

医療医薬品の「エンシュア」は
医療保険の適用になるが

彼女がまくしたてるように話すのを聞いていて、「ああ、そう言われれば、説明不足だった!!」と気づかされたことがあります。
彼女の父親が入所しているという老健施設、正確には介護老人保健施設は、医療施設ではなく、公的な介護保険施設だったのです。

病院などの医療施設であれば公的な医療保険を使うことができます。
しかし介護保険施設は、公的介護保険サービスで利用できる施設ですから、介護保険は適用になっても医療保険の適用からは外れます。

エンシュア・リキッドもエンシュア・Hも医療用医薬品ですから、入手には医師の処方せんが必要で、処方箋があれば即、医療保険が適用になります。
エンシュア・リキッドの薬価は0.54円/mlですから1缶(250ml入り)135円、エンシュア・Hの薬価は0.95円ですから1缶(250ml入り)237.5円となり、その健康保険負担分の3割あるいは1割を支払えば手に入れることができます。

介護保険施設の老健では
「エンシュア」は医療保険適用外

ところが、公的な介護保険により運営が成り立っている老健施設のような公的介護保険施設となると、ちょっと話が厄介です。
介護保険施設にも常勤や嘱託のかたちで医師はいますから、たとえば「嚥下障害により食事摂取が困難で、長期にわたり低栄養状態が続いている」ことなどを根拠に、エンシュア・リキッドやエンシュア・Hを処方してもらうことはできます。

が、介護保険では、施設入所者に提供されるもろもろの介護サービスにかかる費用は、全部まとめて一定額が支払われる仕組みになっています。
そのなかには、「栄養マネジメント加算」といって、利用者個々の栄養状態を改善する目的で行われるサービスにかかる費用も含まれています。

低栄養状態にある入所者に医師がその必要性を認めれば、エンシュア・リキッドやエンシュア・Hの処方を受けることはできます。
しかしその処方は、栄養マネジメントの一環として扱われますから、エンシュアにかかるコストは施設側が負担することになります。

このような負担が生じることを嫌って、残念ながら医師によるエンシュアの処方は「できない」とする施設が少なくないと聞きます。
友人の話はこのケースでしょう。

誕生したばかりの介護医療院なら
介護保険も医療保険も使える

介護保険施設で医療保険も使えるようになればこの問題はクリアできます。
そこで思い出していただきたいのが、昨年(2018年)の4月から稼働している「介護医療院」という名の施設です。
ここでは介護サービスと並行して医療サービスも同時に受けることができるという新しいタイプの医療施設です。

2018年4月から開設されている「介護医療院」は、要介護高齢者が介護サービスと併行して医療サービスも受けながら、看取りのときまで暮らすことのできる新しいタイプの施設です。その入居条件など、簡単に紹介してみました。

医療施設ですから、ここに入所できて「栄養障害」などという病名がつけば、医薬品であるエンシュア・リキッドやエンシュア・Hを医師に処方してもらうことができます。
この場合は医療保険が適用されますから、健康保険の自己負担分だけでOKとなります。

とは言っても、介護医療院制度はまだスタートしたばかりです。
厚生労働省の直近の報告によれば、2019(平成31)年の時点で、介護医療院は全国に113施設開設されているものの、総ベッド数は7,414床にとどまっています。

しかも、友人の父親が現在入所中の老健施設は神奈川県内にあって、ここでは県内はもちろん、近隣の東京都や千葉県にも介護医療院の病床はゼロですから、簡単に「介護医療院に移れば……」などという無責任な話もできません。

「エンシュア」の代替品として栄養補助剤を

結局友人には、エンシュア・リキッドやエンシュア・Hの代替品として、「少し高くつくことになるけど栄養補助食品として街の薬局やインターネットでも購入できるメディエフやメイバランス、あるいはプロシュアなどを、かかりつけ医に相談して使ってみてはどうかしら」と話したところです。

参考までに、メディエフはバニラ風味で1パック(200ml)200Kcal、たんぱく質9g、メイバランスmini にはコーヒー味、バナナ味、ブルーベリー味など8種類の味があり、1パック(125ml)200Kcal、たんぱく質7.5gのほか、不足しがちなビタミン・ミネラルも豊富に配合されているのが特徴です。
またプロシュアは飲みやすいバナナ味で、1ボトル(220ml)280Kcal、たんぱく質14.6gと多く、さらにn-3系脂肪酸であるEPA/DHAも効率よく摂取できるうえに、食物繊維、亜鉛、鉛の含有量にまで配慮が行き届いているのが特徴です。

なおエンシュアについては、こちらの記事もお役に立てると思います。
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