今冬のインフルエンザは
季節外れの流行が懸念される
昨年の冬は、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の同時流行が危惧されたものの、幸い同時流行は見られませんでした。
新型コロナ対策としての「マスクの着用」「こまめな手洗い・消毒」「3密(密閉、密集、密接)の回避」「十分な換気」といった感染対策の徹底が、インフルエンザの感染予防にも効果的であったため、と説明されています。
ならば、新型コロナは小康状態にあるものの、感染対策を引き続き励行している今年の冬も、インフルエンザの流行は避けられるのではないかと考えたいところです。
ところが、どうも今年(2023年)はそういうわけにいかないようです。
厚生労働省は、すでに9月24日の時点で、沖縄県や千葉県、愛媛県、宮崎県、大分県などで、インフルエンザの患者数が流行入りの目安を超えたことを発表しているのです。
全国的な流行にはまだ至っていないものの、その兆候は確実に見られ、季節外れの流行が懸念されるとして、早めに予防対策を徹底するよう呼び掛けています。
日本感染症学会もまた、インフルエンザの感染が例年にないスピードで広がっていることを懸念し、インフルエンザワクチンの積極的接種をすすめる文書を公表しています。
インフルエンザワクチンは
11月上旬には済ませておきたい
気になるのはインフルエンザワクチン接種の時期です。
例年は、インフルエンザの流行は冬の乾燥期、12月下旬から翌年3月の上旬ですから、ワクチン接種は12月上旬までに受けておけばいいだろうと考えがちです。
しかし、季節外れの流行が懸念される今年は、「遅くとも11月上旬までに接種することが推奨される」とのことです。
ちなみに、厚生労働省の発表によれば、今シーズンのインフルエンザワクチンの供給量(確保量)は、過去最大だったシーズン(2020-2021)に比べると2割程度減少はするものの、ほぼ例年なみだということです。
インフルエンザワクチンの接種はすでに10月から全国各地で始まっていますが、ワクチンの供給は、12月中旬頃まで順次出荷が続く見込み、とのことです。
従来から、インフルエンザに罹患すると合併症を起こすリスクが高いとされる以下の因子を有する人(インフルエンザハイリスク者)を含め、生後6か月以降で禁忌でない人には、インフルエンザワクチンの接種を強く推奨するとしています。
ワクチン接種が強く推奨される
インフルエンザハイリスク者
インフルエンザウイルスに感染しやすく、感染すると合併症を起こすリスクが高い、いわゆるインフルエンザハイリスク者としては、以下があげられています。
- 6カ月以上5歳未満の小児
- 65歳以上の高齢者
インフルエンザワクチンの供給が始まり次第、速やかに接種するのが望ましい - 慢性呼吸器疾患(気管支喘息やCOPD*など)がある人
*COPD(シーオーピーディー)とは慢性閉塞性肺疾患のこと。 - 心血管疾患(高血圧単独を除く)がある人
- 慢性腎・肝・血液・代謝(糖尿病など)疾患がある人
- 神経筋疾患(運動麻痺、痙攣、嚥下障害を含む)がある人
- 免疫抑制状態(HIV*や薬剤によるものを含む)にある人
- 妊婦(妊娠中のワクチン接種により母体および新生児のインフルエンザ感染を減らすことができる)
- 長期療養施設の入所者
- 著しい肥満状態の人
- アスピリンの長期投与を受けている人
- がん患者
該当する方は、ワクチン接種の可否をかかりつけ医に相談することをおすすめします。
インフルエンザ接種に加え
感染対策の徹底も
インフルエンザの流行状況を毎年分析している国立感染症研究所の報告によれば、インフルエンザが全国的に流行するのは、多少の地域差はあるものの、毎年、早くて11月以降です。
そのため、「まだいいだろう」とワクチンの接種時期を遅らせる傾向にありますが、今年はそれでは手遅れになるリスクがあります。
したがって高齢者等のハイリスク者は、自治体から通知を受け取ったら、早めにインフルエンザワクチンを接種しておくことをおすすめします。
ただし、インフルエンザワクチンには、「ウイルスに感染しても発症しにくく、もしくは発症しても重症化を防ぐ」効果が期待できるものの、必ず感染を防ぐというわけではありません。
そのため厚生労働省は、以下の感染対策の徹底も、引き続き励行するよう促しています。
- フィジカルディスタンス(身体的距離)の確保など、3密(密閉、密集、密接)を避け
- こまめな手洗いや咳エチケット(マスクの着用)を実施する
- 定期的な清掃、十分な換気を行う、
ワクチン接種の費用負担は
全国一律ではない
インフルエンザワクチンには、明らかな発熱(37.5℃以上)が認められる場合など、接種不適当と判断される場合があります。
また、ワクチン接種時の体調によっては、副反応が生じることもありますから、接種後に体調に異変が生じたら、速やかにかかりつけ医に相談することをおすすめします。
なお、インフルエンザワクチンの接種は、原則全額自己負担です。
ただし、定期接種対象者である65歳以上の高齢者と上記のハイリスク者の条件に該当する人は、自治体によっては公費の助成が受けられます(自治体からの通知を参照)。
参考までに、インフルエンザワクチン0.5ml・1回接種で、自己負担額は3000~5000円、65歳から74歳では2000~3000円、75歳以上では全額公費負担参照(自己負担0円)、といったところが一般的です。