ヒートショックより多い入浴熱中症にご用心

入浴

高齢者の入浴中の事故は
8割が「入浴熱中症」

今年の冬は暖冬と聞いていましたが、ここ数日は10年に一度と言われるほどの厳しい寒さとなっています。特に夜間は一段と冷え込んでいます。入浴して体をしっかり温めてから床に就きたいところですが、入浴中の事故が気になります。

入浴中の事故は、65歳以上の高齢者が増加するのに伴い増え続けていて、全国で毎年2万人前後の方が入浴中に意識を失って溺れ、そのまま浴室で亡くなっています。この数は、1年間に交通事故死した方の数を大きく上回っているそうです。

入浴中の事故と聞いて、誰もがとっさに頭に浮かぶのは、ヒートショックではないでしょうか。冷え切った脱衣所からいきなり熱い湯を張った浴槽に入って起こる急激な温度差により血圧が大きく変動し、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞など、心血管系の発作を引き起こして突然死につながるケースです。

健康長寿の実現を難しくしている要因の一つである入浴中の事故死が、交通事故死を超えて増えています。原因は、冬場の急激な温度差による血圧の変動、いわゆる「ヒートショック」です。その防止策としての入浴法や「ヒートショック予報」を紹介します。

しかし、高齢者の入浴事故を調査した結果では、このようなヒートショックによる入浴中の事故は全体の1割未満(7%)にとどまっていて、圧倒的に多い原因は「入浴熱中症」と呼ばれるケースで、8割以上(84%)を占めていたことが報告されているそうです

入浴熱中症の原因は
長風呂と高すぎるお湯の温度

入浴熱中症は、長風呂(長湯)、つまり浴槽に長時間つかり過ぎたり、浴槽内のお湯の温度か高すぎることが原因で起こります。体が温まりすぎて体温調節がうまくいかなくなり、体温が上がって血管が広がり、血圧が低下して意識障害を伴う熱中症状態に陥るわけです。

たとえば体温37度の方が、肩までお湯につかる全身浴をした場合、浴槽内のお湯の温度が41度では33分で、またお湯の温度がさらに1度上がって42度になると26分で、体温が40度に達するという研究報告があるそうです*¹。

体温が40度を超えると脳が耐え切れずに意識障害が起き、さらに42.5度に達してしまうと心室細動(心臓が不規則にブルブル震えること)を起こして脳を含む全身の臓器への血流が途絶えてしまい、死に至る危険性が高まることがわかっています。

体温を過度に上昇させない入浴法で
入浴熱中症を防ぐ

40度近くまで体温が上がる前に、大量の汗が出たり、のぼせたりして、とてもそのままお湯につかっていられないのではないかと思うのですが……。

千葉科学大学危機管理学部の黒木尚長(くろき ひさなが)教授によれば、特に肌感覚が鈍っている高齢者は熱さを感じにくいために長風呂を好む傾向にあり、頭痛や動悸など熱中症のサインを自覚しないまま、いきなり意識障害に陥りやすいのだそうです。

このような入浴熱中症を防ぐには、体温を過度に上昇させない安全な入浴法を心がけることです。その方法として黒木教授は、以下の7点を勧めています。

  1. 浴槽のお湯の温度を41度以下にする
  2. 肩までお湯につかる時間は10分以内にする
  3. 浴室に時計を設置して入浴時間をチェックする
  4. 半身浴(みぞおちのあたりから下をお湯につかる)やシャワー浴を取り入れる
  5. 入浴後の体温測定を習慣にする
  6. 飲酒後に入浴しない(眠り込んでしまって長風呂になるため)
  7. 入浴する前に家族など同居者に一声かける(声をかけられた側は入浴時間を気に掛ける)

参考資料*¹:日本医師会 日医ニュース 健康プラザNo.549「入浴中の事故 ―ヒートショックと入浴熱中症ー」

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