おむつの現物支給や
おむつ代を補助する制度
要介護高齢者が在宅で医療や介護を受けながら生活していくには、やはりそれなりのお金がかかります。ただ、訪問診療や訪問看護等の医療にかかる費用については、公的医療保険制度や高額療養費制度があります。また、訪問介護等の介護にかかる費用については、公的介護保険制度や高額介護サービス費制度などが用意されています。
これらの制度を上手に利用すれば、在宅の高齢者個々の状態や利用するサービスの内容や使用頻度(回数)などによって多少の違いはありますが、かかる費用は、おおむねある程度まで抑えることができるようになっています。
とは言え在宅での療養生活には、そのほかにも、たとえば食事の宅配サービスや紙おむつが必要な状態であればおむつ代など、介護保険の対象から外れる費用もあり、思わぬ出費になることがあります。
おむつ代が月に1万円を超えることも
このうちおむつにかかる費用は、使い方によってはひと月に1万円を超えることも珍しくないと聞きます。幸いこの費用についても、地域の自治体である各市区町村が大人用おむつの現物を配達、支給したり、おむつ代を助成するなど、かかる費用を補助する制度を用意していることをご存じでしょうか。
市区町村によりこの制度を利用できる対象者や助成内容は大きく異なりますが、今回はこの制度の概要を紹介したいと思います。
おむつ支給・助成の対象は
在宅の要介護高齢者
たとえば東京の八王子市では、寝たきり高齢者などの在宅で生活する要介護高齢者に、月1回定期的に、紙おむつ(尿とりパッドを含む)を配達し、その費用の一部を助成(補助)する「在宅高齢者おむつ給付事業」を行っています。
八王子市の公式ホームページ*¹によれば、この事業を利用できる対象者は、以下の条件「すべてに該当し、おむつを必要とされている方」となっています。
- 市内に住所を有し、かつ現に市内で在宅生活をする65歳以上の方
- (要介護認定により)「要介護1」以上の方
- 高齢者が属する世帯全員が市民税非課税である方
該当する要介護高齢者が入院している場合は、この事業(現物支給)の対象から外れます。しかし、入院中におむつの購入(使用)に要した費用については、その一部を助成する別の制度が用意されています*²。
要介護認定を受けていることが条件に
条件「2」にあるように、おむつの支給やおむつ代の助成制度を利用するには要介護認定を受けていることを条件にしている市区町村が多く、なかには「要介護3以上」、あるいは「要介護4または5」と条件が厳しくなっている自治体もあります。
また、要介護レベルに関係なく、日常的におむつが必要な状態にあることを担当医が認めた場合は、助成の対象となる市区町村もあるようです。
なお、要介護認定を受けるには、介護サービスの利用を希望する本人または家族が最寄りの地域包括支援センター(通称「高齢者あんしん相談センター」など)、あるいは市区町村の介護保険担当窓口で申請手続きを行う必要があります。その詳細はこちらを参照してください。
おむつ代の助成には
各市区町村に上限額がある
次に助成内容ですが、先に例に挙げた八王子市では、パッドを含むおむつの購入(現物支給)については月額4,400円を上限に、その費用の8割が助成(支給)され、2割を利用者が自己負担することになります。この上限額(支給限度額)を超えて現物支給を受けると、その超過分は全額が自己負担となります。
たとえば1か月に10,000円分のおむつの現物支給を受けたとしましょう。この場合、助成の上限が4,400円ですから、市からの助成金額はその8割の3,520円となり、この月の自己負担額は6,480円となります。
この助成内容も市区町村によって差があります。助成の上限額を8,000円(横浜市)にしているところもあれば、要介護レベルに合わせて、あるいは利用者の収入に応じて支給限度額を変えている市区町村もあります。
申請手続きは担当ケアマネジャーに相談を
紹介してきたおむつの現物支給やおむつ代の助成サービスを利用するには、所定の窓口で申請手続きをする必要があります。
その際には、希望するおむつの商品や数量、受け取り方など、詳細を所定の書類などに明記することになりますから、まずは担当のケアマネジャーに相談されるのがいいと思います。
なお、要介護高齢者のおむつ代は医療費控除の対象となりますが、いくつか厳しい条件があります。この点についても担当ケアマネジャーにお尋ねになってください。