エンシュア等に「とろみ」をつけて誤嚥を防ぐ

とろみスープ

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嚥下障害があると
エンシュア等を誤嚥しやすい

歳を重ねていくとどうしても食が細くなります。一度に食べられる量が少なくなりますから、低栄養状態に陥るリスクが高まります。低栄養に陥ると免疫力が低下し、インフルエンザのような感染症にかかるリスクが高まるうえに、「フレイル*」も心配になります。

あるいは食事中にむせるとか咳き込むなど、飲み込み、つまり嚥下(えんげ)に支障があれば、食べたり飲んだりしたものを誤嚥(ごえん)しがちですが、その際に食べ物などと一緒に気道に入った細菌が肺に炎症を起こす「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」を発症するリスクも高くなります。

このようなリスクを防ごうと、「エンシュア」等の栄養補助食品、正確には医療用医薬品の「経腸栄養剤」を活用している方も少なくないと思います。ただ、特に嚥下障害があると、流動性の高いエンシュア等の経腸栄養剤は誤嚥しやすいという問題があります。

*フレイルとは、加齢により心身の活力が低下した状態で、「要介護」の一歩手前の状態と説明されています。こちらを参照して、フレイルの自己チェックを。

エンシュアなどの経腸栄養剤にとろみをつける

そこで、嚥下に多少でも支障のある方が流動性のエンシュア等、各種の経腸栄養剤を飲む際には、誤嚥の危険性を極力少なくするために、とろみ調整用食品(いわゆる「とろみ剤」)を使って飲み込みやすくする必要があります。

ところが、この「とろみのつけ方」が難しく、通常の方法ではうまく混ざらずに「ダマになってしまう」(粉が小さなつぶつぶのかたまりになって残ってしまう)など、日々苦労しているという話をよくうかがいます。

そこで今回は、経腸栄養剤にとろみをつけて飲みやすくする方法を紹介したいと思います。

二度混ぜ法で
エンシュア等に適度なとろみを

結論から言えば、とろみ剤の使用法の一つとして知られる「二度混ぜ法」なら、エンシュアをはじめとする経腸栄養剤にも比較的簡単に適度なとろみをつけることができます。その方法は、一般に以下の手順で行われます。

  1. コップに入れたエンシュア等の経腸栄養剤にとろみ剤を加え、すぐに30秒ほど手早くかき混ぜる(スプーンかフォークで円状にかき混ぜるだけでなく、前後に激しく往復させて、とろみ剤を散らすようにかき混ぜるのがコツ。ゆっくり混ぜるとダマになりやすいので、100均などでも手に入る電動の小型ミキサーがあると便利)
  2. かき混ぜた状態で、そのまま10分ほど置く(とろみ剤に水分を吸わせるため)
  3. 再度、約30秒よくかき混ぜる

このように、手順自体はいたって簡単です。ただし適度なとろみをつけるには、経腸栄養剤の種類によって、また使用するとろみ剤の種類によっても、とろみ剤の使用量、かき混ぜる時間、二度目のかき混ぜまでの時間等が微妙に違うことが実験により確認されています。

とろみをつけられる経腸栄養剤と
とろみ剤の種類

経腸栄養剤には、「エンシュ・リキッド」「エンシュア・H」をはじめとして、エンシュアには含まれていない「セレン」などの必須ミネラルが含まれている「エネーボ」、甘さと濃さを抑えた「ラコール」、少量でも高たんぱくで高カロリーの「イノラス」などがあります。

それぞれの栄養成分や特徴は先に紹介しましたが、いずれもとろみ剤の二度混ぜ法によりお好みのとろみをつけることができます。

なお、牛乳アレルギーの方でも安心して飲める経腸栄養剤の「エレンタール」には、ゼリーやムース状に固める素材が用意されていますから、それを活用するといいでしょう。

消費者庁の認可が必要な「とろみ調整用食品」

とろみ剤、正確には「とろみ調整用食品」とは、食べ物や飲み物などの液体にとろみをつけることができる食品で、消費者庁認可の「特別用途食品」の一つです。

とろみ調整用食品をご覧になるとおわかりのように、パッケージには「消費者庁認可」と「えん下困難者用食品」の文字が明記されたマークが表示されています。この、消費者庁の認可を得ているとろみ剤には次のような特徴があります。

  • 飲み物などの液体に混ぜることで、とろみをつけることができる
  • 加熱をしなくても、混ぜるだけで簡単にとろみがつけられる
  • 混ぜてから時間が経ってもとろみが保たれるように、成分が調整されている

とろみ調整用食品使用上の注意点

とろみ調整用食品の使用上の注意点として、消費者庁は以下の4点をあげています

  1. 嚥下の状態などにより、適切なとろみの強さ(濃さ)が異なるため、使用前に、医師、歯科医師、管理栄養士、薬剤師、言語聴覚士(話す・聞くコミュニケーションの障害や摂食嚥下障害のリハビリテーションの専門家)等に相談して、あなたにとって適切なとろみの強さを確認しておく
  2. 同じ量のとろみ調整用食品を混ぜても、飲み物の種類や温度の変化等によりとろみの強さが変わるため、食べる前に必ずとろみの強さを確認する
  3. 食べてみてとろみが弱いと感じたら、濃いめにとろみをつけたものを別に用意し、それを混ぜて粘度(とろみの度合い)を調整する(一度とろみがついたものに、とろみが弱いからと、とろみ剤を後から加えない)
  4. とろみ調整用食品を一度に大量を加えると、だま(小さなかたまり)ができることがあるため、少しずつ加えて調整する。だまができてしまったときは、必ずだまを取り除いてから食べる

3種類に分けられる
とろみ調整用食品

とろみ調整用食品は数多くのメーカーから各種販売されていますが、原材料により以下の3つに大別されます。

  1. デンプン系(第一世代)
    デンプンや加工デンプン(デキストリン)が原料の、「とろみエール」「トロメリン顆粒」「ムースアップ」「とろみファイン」等
  2. グアーガム系(第二世代)
    マメ科植物グアーの種子から得られるグアーガム(水溶性食物繊維)が原料の、「ハイトロミール」「トロミアップエース」等
  3. キサンタンガム系(第三世代)
    トウモロコシなどのデンプンを微生物で発酵させてつくられたキサンタンガム(増粘剤として食品のドレッシングやソースのとろみづけに使われている)が原料の、「トロメリンEX」「つるりんこ牛乳・流動食用」「ネオハイトロミールⅢ」「トロメイクSP」「トロミアップパーフェクトEN」等

世代が新しくなるほど、「おいしさ」「安全性」「使いやすさ」の面で改良がすすみ、現在は「第三世代」のキサンタンガム系が主流になっているようです。

ネットをチェックしてみると、「1」のアサヒグループ食品の「とろみエール 」がよく使われているようですが、エンシュアなどの濃厚なものには、「3」の「日清オイリオ トロミアップ パーフェクト  」がダマになりにくいうえに、とろみがつきやすいと好評です(我が家でも飲み物だけでなく濃厚な流動食のとろみつけにも使っています)。

いずれもパッケージに使用量が明記してありますが、先の注意事項の「1」にあるように、自己判断で使用すべきではありません。

あなたの嚥下障害の程度や栄養状態を把握している主治医や訪問看護師、管理栄養士などに、自分にはどの経腸栄養剤がいいのか、その経腸栄養剤にあなたに適したとろみをつけるにはどのとろみ調整用食品を、どの程度使えばいいのかを相談し、指示を受けることをお忘れなく。

参考資料*¹:消費者庁「とろみ調整用食品ってなに?」