「エンシュア」に「とろみ」をつけて誤嚥を防ぐ

とろみスープ

嚥下障害があると
エンシュアを誤嚥しやすい

歳を重ねていくと食が細くなって一度に食べられる食事の量がどうしても少なくなり、低栄養に陥るリスクが高まります。

低栄養の状態に陥ると免疫力が低下し、今や最大の関心事である新型コロナウイルス感染症等々にかかるリスクが高くなってしまいます。

さらには、低栄養による「フレイル*」も心配です。

あるいは、食事中にむせるとか咳き込むなどの嚥下障害(えんげしょうがい)があれば、食べたり飲んだりしたものを誤嚥(ごえん)しがちで、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)のリスクも高くなってきます。

このようなリスクを防ごうと、「エンシュア」等、ドリンクタイプの総合栄養剤、正確には医療用医薬品の「経腸栄養剤」を活用している方も少なくないと思います。

ところが、特に嚥下障害のある方には、流動性の高い飲み物であるエンシュア等の経腸栄養剤は誤嚥しやすいという問題があります。

*フレイルとは、加齢により心身の活力が低下した状態で、「要介護」の一歩手前の状態と説明されている。コチラを参照して、フレイルの自己チェックを。
かつては「もう歳だから」と諦めていた体力や気力が低下した「フレイル」と呼ばれる状態は、その兆候に早めに気づき生活習慣を改善すれば、要介護状態への進行を食い止めることができます。その第一歩となるフレイルチェックの方法を紹介します。

エンシュアなどの経腸栄養剤にとろみをつける

そこで、嚥下(飲み込み)に多少でも支障のある方がエンシュア等、各種の経腸栄養剤を飲む際には、誤嚥の危険性を極力少なくするために、とろみ調整用食品を使って飲み込みやすくする必要があります。

ところが、この「とろみのつけ方」が難しく、通常の方法ではうまく混ざらず「だまになってしまう」(粉が小さなつぶつぶのかたまりになって残ってしまう)など、日々苦労しているという話をよく耳にします。

そこで今回は、経腸栄養剤にとろみをつける方法を紹介しておきたいと思います。

二度混ぜ法で
エンシュアに適度なとろみを

結論から言えば、とろみ調整用食品の使用法の一つとして知られる「二度混ぜ法」なら、経腸栄養剤にも比較的簡単に適度なとろみをつけることができます。

とろみ調整用食品(「とろみ剤」や「増粘剤」と呼ばれている食品)の二度混ぜ法は、一般に以下の手順で行われます。

  1. コップに入れたエンシュア等の経腸栄養剤にとろみ調整用食品を加え、すぐに30秒ほどかき混ぜる(お箸で卵を溶くイメージで、手早くかき混ぜるといい)
  2. かき混ぜた状態で、そのまま10分ほど置く(とろみ調整用食品に水分を吸わせるため)
  3. 再度、約30秒よくかき混ぜる

おわかりのように、手順自体はいたって簡単です。

ただし、適度なとろみをつけるためには、経腸栄養剤の種類によって、また使用するとろみ調整用食品の種類や使用量、かき混ぜる時間、二度目のかき混ぜまでの時間等が微妙に違うことが実験により確認されています。

とろみをつけられる経腸栄養剤と
とろみ調整用食品の種類

経腸栄養剤には、「エンシュ・リキッド」「エンシュア・H」をはじめとして、エンシュアには含まれていない「セレン」などの必須ミネラルが含まれている「エネーボ」、甘さと濃さを抑えた「ラコール」、少量でも高たんぱくで高カロリーの「イノラス」などがあります。

それぞれの栄養成分や特徴は先に紹介しましたが、いずれもとろみ調整用食品の二度混ぜ法によりお好みのとろみをつけることができます。

なお、牛乳アレルギーの方でも安心して飲める「エレンタール」には、ゼリーやムース状に固める素材があらかじめ用意されています。

消費者庁の認可が必要な「とろみ調整用食品」

一方のとろみ調整用食品とは、先刻ご承知のように、食べ物や飲み物などの液体にとろみをつけることができる食品で、消費者庁認可の「特別用途食品」の一つです。

とろみ調整用食品をご覧になるとおわかりのように、パッケージには「消費者庁認可」と「えん下困難者用食品」の文字が明記されたマークが表示されています。

この、消費者庁の認可を得ているとろみ調整用食品には次のような特徴があります。

  • 飲み物などの液体に混ぜることで、とろみをつけることができる
  • 加熱をしなくても、混ぜるだけで簡単にとろみがつけられる
  • 混ぜてから時間が経ってもとろみが保たれるように、成分が調整されている

とろみ調整用食品使用上の注意点

とろみ調整用食品の使用上の注意点として、消費者庁は以下の4点をあげています*¹。

  1. 嚥下の状態などにより、適切なとろみの強さが異なるため、使用前に、医師、歯科医師、管理栄養士、薬剤師、言語聴覚士(話す・聞くコミュニケーションの障害や摂食嚥下障害のリハビリテーションの専門家)等に相談して、あなたにとって適切なとろみの強さを確認しておく
  2. 同じ量のとろみ調整用食品を混ぜても、飲み物の種類や温度の変化等によりとろみの強さが変わるため、食べる前に必ずとろみの強さを確認する
  3. 食べてみてとろみが弱いと感じたら、強くとろみをつけたものを別に用意し、それを混ぜて粘度(とろみの度合い)を調整する
  4. とろみ調整用食品を一度に大量を加えると、だま(小さなかたまり)ができることがあるため、少しずつ加えて調整する
    だまができてしまったときは、必ずだまを取り除いてから食べる

3種類に分けられる
とろみ調整用食品

とろみ調整用食品は数多くのメーカーから各種販売されていますが、原材料により以下の3つに大別されます。

  1. デンプン系(第一世代)
    デンプンや加工デンプン(デキストリン)を原料に、1991年頃から発売されている
    「トロメリン顆粒」「ムースアップ」「とろみファイン」等
  2. グアーガム系(第二世代)
    マメ科植物グアーの種子から得られるグアーガム(水溶性食物繊維)を原料に、1994年頃から発売されている
    「ハイトロミール」「トロミアップエース」等
  3. キサンタンガム系(第三世代)
    トウモロコシなどのデンプンを微生物で発酵させてつくられたキサンタンガム(増粘剤として食品のドレッシングやソースのとろみづけに使われている)を原料に、2000年頃から発売されている
    「トロメリンEX」「つるりんこ牛乳・流動食用」「ネオハイトロミールⅢ」「トロメイクSP」「トロミアップパーフェクトEN」等

世代が新しくなるほど、「おいしさ」「安全性」「使いやすさ」の面で改良がすすみ、現在は「第三世代」のキサンタンガム系が主流になっているようです。

いずれのとろみ調整用食品にも、パッケージに使用量が目安量として明記されています。

しかし、先の注意事項の「1」にあるように、自己判断で使用すべきではありません。

あなたの嚥下障害の程度や栄養状態を把握している主治医や管理栄養士などに、自分にはどの経腸栄養剤がいいのか、その経腸栄養剤にあなたに適したとろみをつけるにはどのとろみ調整用食品を、どの程度使えばいいのかを相談し、指示を受けることをお忘れなく。

参考資料*¹:消費者庁「とろみ調整用食品ってなに?」