エンシュア等、経腸栄養剤による下痢の防ぎ方

鉢植え

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クダを介さず口から食べたいが
エンシュアは下痢が心配?

食道がんで放射線治療を受けている知人のA氏が、口から食べることにこだわり、エンシュア・リキッド(以下、「エンシュア」)を食事代わりにした生活を続けている話を先にこちらで紹介しましたが、読んでいただけましたでしょうか。この、80歳は優に超える大先輩のA氏からこんな相談を受けました。

「同病の仲間たちにエンシュアをすすめているのだが、下痢になるからと敬遠する人が多い。なかには下痢のつらさに負けて、医師からの胃瘻(いろう)の提案を受けようかと言い出す仲間もいる。下痢を防いでエンシュアを飲み続ける方法はないだろうか」

エンシュアに乳糖不耐症による
下痢の心配はない

エンシュア・リキッドにしても、エンシュア・H等にしても、経腸栄養剤は下痢しやすいという話はよく聞きます。水のような下痢とまではいかないまでも、泥状便(でいじょうべん)と呼ばれる、泥のような便が1日に何回も出る状態に陥ることも少なくないようです。

水様の下痢にしても泥状便にしても、本人にとってはつらいもの。そこで、日本人、それも特に高齢者に多いと言われる乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)*による下痢だろうと自己判断し、「自分は体質的にエンシュアが向いていない」と、早々に諦めてしまう方も少なくないようです。

しかし、エンシュアに乳糖は使われていません。ですから、「健康だった頃から牛乳を飲むと下痢していた」という乳糖不耐症の方も、安心して飲むことができるはずです。

*乳糖不耐症とは、牛乳などの乳製品に含まれる乳糖を消化する「ラクターゼ」と呼ばれる消化酵素の働きが十分でないために、乳糖を十分に消化吸収できず、お腹がゴロゴロしたり下痢などを起こす病気のこと。詳しくはこちらをご覧ください。

少量ずつゆっくり飲むか
液体を半固形化する

一方でエンシュアのように濃厚で浸透圧の高い栄養剤は、飲むスピードが速すぎると腸管における吸収が追い付かず、腸管内に高濃度の栄養剤が溜まってしまいます。これが原因となり、下痢を起こすことがあるようです。

この場合の下痢は、1回に飲む量を、たとえば「おちょこ」に一杯、約50mlずつ何回かに分けて飲むなど、少量ずつゆっくり飲んで、腸管内にエンシュアがいっきに溜まらないように工夫することで、ある程度防ぐことができます。

ゲル化剤で半固形化する

あるいは、「 ミキサーゲル 」のような、液体をゼリーやプリンのように固形化するための「ゲル化剤」を使い、エンシュア等を半固形化するのも、下痢の防止、あるいは改善に役立つようです。

ゲル化剤によってゼリー状、あるいはムース状になったエンシュア等は、胃からゆっくり十二指腸に排出され、その後の腸の通過時間もスピードダウンしますから、結果として下痢になりにくいというわけです。

人肌程度に温めてから
ゆっくり飲む

また、飲みやすいからと冷蔵庫で冷やしておいたものをそのまま飲んで下痢をするケースも多いようです。

この場合は、アイスクリームのような冷えたものを食べ過ぎたり、お腹を冷やしたときなどに下痢しやすいのと同じです。冷感刺激により腸管の運動が異常に高まり、栄養剤の通過スピードが速すぎて下痢してしまうのです。

このタイプの下痢は、冷蔵庫に入れてあったエンシュアは、せめて人肌程度に温めてから飲むことで防ぐことができます。実際、エンシュアを飲み始めた当初は何度か下痢をしたが、ほどよく温めてからゆっくり飲むようにしたところ、下痢はしなくなったという体験談を耳にしたことがあります。

エンシュアを温めるときは直火でなく湯煎で

この場合の温め方ですが、エンシュア・リキッドの添付文書には、直火(じかび)で加熱するのは避けるように促しています。

そのうえで温め方としては、缶を開けずにそのまま微温湯(30~40℃)で湯煎(ゆせん)することをすすめています。エンシュア缶より一回り大きい鍋等に微温湯を入れ、その中にエンシュア缶を入れて間接的に温めるわけです。

このとき鍋等の湯は沸騰させないこと。鍋を火にかけたまま缶を入れると、缶の中に残っている空気が膨張して缶が破裂する危険があります。また、加熱する温度が高すぎると、せっかくの栄養成分が変質してしまいから、ご注意ください。

内服薬や栄養補助食品により
下痢や便秘になることも

エンシュアが原因と思い込んでいる下痢のなかには、処方を受けて内服している薬、たとえば抗生物質のような抗菌薬や抗がん剤、消炎鎮痛薬等の副作用によるものもあります。

「便が泥のようになっている」「トイレから離れられないほど頻回に下痢をする」「差し込むような腹痛とともに下痢をする」「下痢便に血が混ざっている」ようなときは、放置せず、直ちにエンシュアを処方してもらっている医師に下痢していることを伝え、内服薬の内容を調整してもらうといいでしょう。

また、エンシュアを下痢などのトラブルもなく飲めるようになってくると、ムース状にした食事を少量ずつ食べたり、市販の栄養補助食品を加えたりする方が多いようです。

ところが、新たに加えた食事や食品により腸内細菌叢(そう)、いわゆる腸内フローラにおける善玉菌と悪玉菌のバランスが乱れてしまい、再び下痢になったり、逆に便秘になったりすることも起こり得ます。

こうした事態を防ぐためにも、エンシュアを処方してもらっている医師や訪問看護師等に、エンシュアに追加して何か食べたいこと、自分としては何を食べたいのかを逐一具体的に話し、問題がないことを確認してから食べることをおすすめします。

下痢が続くときは脱水に注意する

なお、下痢が続くと、身体の中の水分や電解質が便と一緒に出てしまいますから脱水状態に陥るリスクがあります。「いつもより口が渇く」とか「トイレ(尿)に行く回数が少ない」のはそのサインです。経口補水液 を飲むなど水分補給をしてから、医師に相談することをおすすめします。

あるいは、たとえば大塚製薬 ポカリスエット パウダー を常備していると、パウダータイプですから、水や微温湯に溶かしてすぐに飲むことができます。しかも長期保存も可能ですから、下痢や発汗で失われた水分や電解質をスムーズに補給することができます。

携帯できるスティックタイプの大塚製薬 ポカリスエット イオンウォーター パウダーなら、水分補給が必要なときにどこでも使えるうえに、通常のパウダータイプに比べて甘さが控えめになっているのも魅力です。