「ラコール」なら甘すぎないから飲みやすい

抹茶ドリンク

運動不足が響いて
食が進まず、体重も減ってきた

新型コロナウイルス感染症対策としての外出制限などが解除されてからもうずいぶんになるものの、その間の運動不足の影響は、今になってもさまざまなかたちで現れています。

たとえば先日は、遠方で暮らす叔父からこんなメールが届きました。

空腹感があまりなく、食が進まない日々が続くうちに、「ちょっと痩せてきたのでは?」などと家族から心配されるようになった――。

心配になり、すぐに電話をして詳しい話を聞くと、体重が、ここ数か月で5㎏ほど減っているとのこと。

ラコールは甘さ控えめでドロッとしていない

今年で、確か85歳になる叔父は、5年ほど前に誤嚥(ごえん)騒ぎを起こしています。

以来、叔母が毎食用意する少し軟らかめの食事に加え、栄養補給にと、かかりつけ医の処方によるエンシュア・リキッドを飲むようになっています。

そこで、「エンシュア・リキッドはきちんと飲んでいるんでしょ」と尋ねてみました。

これに叔父は、「いろいろな味を試してはいるが、あの甘さとドロッとし舌ざわりがどうも苦手で、このごろは飲んでも3日に1本くらいになっている」とのこと。

だったらと、甘さ控えめに作られている経腸栄養剤のラコールのことを思い出した私は、かかりつけ医に処方を変更してもらってはどうだろうか、と提案してみました。

ラコールもエンシュア同様に
五大栄養素を配合

ラコールとは、これまで紹介してきたエンシュア・リキッドやエンシュア・Hなどと同じ「半消化態栄養剤」です。

半消化態栄養剤とは、たんぱく質や脂質、糖質、ミネラル、ビタミンの5代栄養素をバランスよく含む、普通の食材に最も近い栄養剤です。

薬臭さなどはなく、消化吸収機能が低下している方のために用意されている「消化態栄養剤」や「成分栄養剤」に比べると味も飲みやすいように工夫されていて、抵抗なく飲むことができるというメリットがあります。

ただし、「半消化態」とあるように、体内で吸収されて栄養分となるには消化の過程を経る必要がありますから、消化機能が低下している方には不向きというデメリットがあります。

薬局やインターネット上などで医師の処方箋がなくても入手できる総合栄養剤の多くは、このタイプ、つまり半消化態栄養剤です。

数ある半消化態栄養剤のなかで、現時点(2023年7月)で医療保険が使える、つまり医師が医薬品として処方できるものとしては、エンシュア・リキッド、エンシュア・H、イノラスエネーボ、そしてラコールがあります。

液剤タイプのラコールは
1mlが1Kcal

叔父の話に戻しましょう。

私との電話の翌日、早速、かかりつけ医を受診し、「このところ食が進まなくて、食事の量が落ちてきたのですが……」と相談したそうです。

これにかかりつけ医は、叔父の様子や、長く続いたコロナ禍での社会状況から、おそらく叔父が受診するに至った真意を即座に把握されたのでしょう。

簡単な診察をしたうえで、「そのようですね。今処方して飲んでいただいているエンシュアは、ご高齢の方には甘さと濃さが気になって飲みにくいようですから、一度、ラコールに替えてみましょう」と、了解してくれたと言います。

エンシュア・リキッドは1.0kcal/1mlですが、ラコールの液剤タイプ*も1mlが1.0kcalになるように調整されています。

ラコールは缶ではなくアルミパウチ、つまりアルミ製の袋に入っています。

1パック200ml(200kcal)と400ml(400kcal)の2種類があり、まずは試しにと200mlのパウチを処方してもらったそうです。

ラコール(正式名:ラコールNF配合経腸用液・大塚製薬)には、液剤と半固形剤の2種類がある。経口摂取できるのは液剤で、粘度が高いゲル状の半固形剤は、胃ろうに使用される。

ラコールには
ドロッとした感触がない

ラコールの特徴としては、次の2点があげられます。

  • 甘さを抑えるために精製白糖(甘味を生み出すショ糖の割合が多い)を少なくしている
  • ドロッとした舌触りを苦手とする方のために、脂質の含有量を少なめにして、そのぶん炭水化物の含量を多めにしている

食事が十分とれない方に食事代わりに、あるいは食事を補うために飲んでもらえるようにと、フレーバー(食用香料)を変えて、「ミルク味」「コーヒー味」「バナナ味」「コーン味」「抹茶味」が用意されています。

なお、食事を補うためにラコールを飲む場合は、食欲との関係から、どのタイミングで飲むか、またその飲み方が難しいのではないでしょうか。

この点について、岐阜大学の田中善宏医師らが提案している方法をこちらの記事で紹介しています。エンシュアもラコールと同じ経腸栄養剤ですから、応用して飲んでみてください。

「エンシュア」などの経腸栄養剤を食事の不足分を補う目的で飲んでいる方は、エンシュアを飲むタイミングや飲み方で悩む方が少なくない。食前に一気に飲めば食欲が落ちて食事を十分摂れないし、その逆も……。そんな問題をクリアする方法を紹介する。

ラコールは抗血栓薬と飲み合わせが悪い

注意点としては、ラコールは抗血栓薬のワルファリン(ワーファリン)との飲み合わせが悪く、ワルファリンの作用を弱めるリスクがあることです。

静脈血栓症や心筋梗塞、脳血栓などでこの薬を服用している方がラコールを利用する際は、定期的に血液凝固検査(血液のかたまり具合を調べる検査)を受ける必要があります。

牛乳アレルギーがあればエレンタールを

また、ラコールにはたんぱく源として牛乳と大豆が使われています。

したがって、牛乳に由来する「カゼイン」と呼ばれるたんぱく質が配合されていますから、牛乳アレルギーのある方は使用できません。

その点「エレンタール」なら、牛乳アレルギーの方も安心して飲むことができます。

胃瘻や点滴などによる人工的栄養法を嫌い、口から食べることにこだわる人は少なくない。その際はエンシュアやエネーボ等の経口可能な経腸栄養剤が頼りになる。だが、牛乳アレルギーでそれらを利用できない方には安心して摂取可能なエレンタールを紹介する。

なお、食事中にむせたり咳き込むなどの嚥下障害がある方は、誤嚥(ごえん)防止に、とろみ調整用食品を使ってとろみをつけることをおすすめします。その方法はこちらを。

嚥下障害があるとエンシュアなどの経腸栄養剤は流動性が高く、誤嚥しやすい。そのリスクを避けようと「とろみ調整用食品」でとろみをつけようとしても、うまく混ざらないという経験はないだろうか。その解決策として、二度混ぜ法を紹介。併せてとろみ調整用食品の使用法も。