牛乳アレルギーでエンシュアを飲めない方へ

ジュース

牛乳アレルギーでも飲める
「エレンタール」

歳を重ねるにつれて食が細くなってくると、低栄養の状態に陥るリスクが高くなってきます。あるいは食事中にむせて咳き込むことが多くなり、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)が懸念されることもあるでしょう。

このような場合、かかりつけ医から胃瘻(いろう)や鼻チューブを介して、あるいは点滴による栄養補給を提案されることも珍しくありません。

医師からこのような提案を受けたとき、口からものが食べられなくなることを嫌い、「できるだけ自然にゆだねたいから」と、胃瘻や点滴のような人工的な栄養補給法を拒否する方が最近は増えていると聞きます。

そこで、このような方々に、「エンシュア・リキッド」や「エンシュア・H」「エネーボ」あるいは「イノラス」「ラコール」といった飲むタイプの「経腸(けいちょう)栄養剤」と呼ばれる栄養ドリンク剤を紹介してきました。

ところがこれらの栄養剤は、いずれも牛乳たんぱく質を成分にしているために、牛乳アレルギーのある方は利用できないという問題がありました。

そこで今日は、牛乳アレルギーでエンシュアなどを飲めない方にも安心して飲んでいただける、エンシュアなどと同じ経腸栄養剤の「エレンタール」を紹介したいと思います。

なお、ご自分がアレルギー体質かどうかは簡単な検査ですぐにわかりますから、牛乳アレルギーを疑っている方は内科を受診してアレルギー検査を受けておくことをおすすめします。

「牛乳アレルギー」と
「乳糖不耐症」は同じではない

「牛乳アレルギー」は、卵(鶏卵)アレルギーや小麦アレルギー、大豆アレルギー、蕎麦アレルギー等と同じ、食物アレルギーの1種です。

牛乳などの乳製品に含まれる乳たんぱく質を摂取した後にアレルギー反応が起こり、腹痛、下痢、咳、湿疹、蕁麻疹(じんましん)などの症状が現れます。アレルギー反応が強いと、アナフラキシーショックと言って、呼吸困難や血圧の急激な低下、意識障害などにより深刻な事態に陥ることもあります。

この牛乳アレルギーは、牛乳を飲んだり、チーズなどの乳製品を食べると腹痛や下痢などの症状が出ることから、「乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)*」と間違えられることが多いようです。しかし、両者の原因は、また現れる症状の程度も全く異なります。

*乳糖不耐症とは、牛乳などの乳製品に含まれている乳糖を消化する「ラクターゼ」と呼ばれる酵素の働きが体質的に十分でないために、乳糖を消化、吸収することができず、乳糖を摂取すると消化不良の状態になって、お腹がゴロゴロしたり、下痢などをする病態のこと。詳しくはこちらをご覧ください。

牛乳アレルギーでも
「エレンタール」なら安心

経腸栄養剤の「エンシュア」や「エネーボ」には、また「イノラス」にも、牛乳由来の「カゼイン」と呼ばれるたんぱく質成分が含まれています。

カゼインは、それ自体が栄養価の高いたんぱく質ですから、栄養補給を目的とした栄養補助剤の類には好んで使われています。ただ、牛乳たんぱくですから、牛乳にアレルギーのある方はアレルギー反応を起こすリスクがあるため、摂取できません。

一方、ここで紹介する「エレンタール」、正式名「エレンタール配合内用剤」は、アミノ酸、糖質、脂質、電解質、ビタミンの5大栄養素をバランスよく配合した栄養補助剤です。

たんぱく源として使われているのは、たんぱく質を分解し終えたアミノ酸ですから、体内でたんぱく質を消化する必要はありません。

アレルギー反応を起こすリスクがない

またアミノ酸は、摂取して体内に入っても異物として感知されてアレルギー反応を起こすリスクがないのも魅力です。

加えて「エレンタール」は「成分栄養剤*」ですから、すべての栄養成分が消化をほとんど必要としない状態になっています。そのため、摂取するとそのまま小腸から吸収されますから、吸収効率が高く、消化吸収機能が低下している方も摂取できる栄養剤です。

*成分栄養剤と半消化態栄養剤
「エレンタール」のように、栄養成分のすべてが消化管による消化を必要とせず、そのまま小腸から吸収されるのが「成分栄養剤」で、成分栄養剤はすべてが医療用医薬品である。一方「エンシュア・リキッド」や「エネーボ」などの「半消化態栄養剤」は、いわゆる流動食で、これには医薬品と食品とがある。天然食品素材に最も近く、吸収するためには消化管による消化の過程を経る必要があり、消化吸収機能が低下していると利用できない。

「エレンタール」も
医療保険の適用になる

エレンタールには、アルミ袋入りの製剤と、簡単に溶かすことができ、携帯にも便利なプラスチックボトル入り製剤の2タイプがあり、どちらにも白色粉末80gが入っています。

1回にその1包または1ボトルのエレンタール粉末80gを約250mlの水またはぬるま湯(30~40℃)に、よく混ぜて溶かします。

この方法で溶解すると、1mlが1kcalになるように調整されたエレンタール液が300mlできますから、1包(1ボトル)で300kcalとなります。

これを何回かに分けて飲む場合は、その都度必要量を別のカップなどに取り分けて摂取することになります。

エレンタールは医薬品ですから、薬剤独特の味や香りがあります。人によっては飲みにくいこともあり、その場合は飲みやすくするための風味づけに10種類のフレーバー(食品用香料)や、ゼリーやムース状に固める素材も用意されています。詳しくはこちらを。

入手にはかかりつけ医の処方箋が必要

エレンタールはエンシュアなどと同様に医療用医薬品ですから、入手するには医師の処方箋が必要で、処方箋があれば公的医療保険、つまり健康保険が適用になります。試してみたい方は、かかりつけ医にその旨相談されるといいでしょう。

参考までに、エレンタールの薬価は58.6円/10gです。80g入り1包(1ボトル)は468.8円ですが、医師による処方箋があれば、あなたの健康保険の自己負担分である1割、あるいは2割、3割だけ支払えば手に入れることができます。

牛乳アレルギーでも安心して飲める「オーツミルク」も

なお、健康保険の適用からは外れますが、最近「第三のミルク」として人気の植物性ミルク、「オーツミルク 」なら牛乳アレルギーの方も安心して飲んでいただけます。オーツミルクについて詳しいことはこちらをご覧ください。