たんぱく質の摂取量は足りていますか

たんぱく質

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65歳を過ぎたら
「やせ」に注意を

日本の代表的な大都市の一つ、神戸市の市民約1,800人を対象にした調査で明らかになった、やや驚きの結果が報告されています。65歳以上の方の約3%に「サルコペニア」の疑いがあり、やせや運動不足が原因となってフレイル(加齢により心身が老い衰え、要介護の一歩手前の状態)に傾いていることがわかったというのです。

「サルコペニア」とはあまり聞きなれない言葉でしょうが、加齢や病気などにより全身の筋肉量が減少して、筋力が低下してくる状態をいいます。具体的には、筋力の低下が次のような変化として現れ、やがては自力で歩くことが困難となってしまいます。

  • 握力が低下して物をよく落とすようになる
  • 歩く速度が遅くなる
  • 歩行に杖や手すりなどの支えが必要になる

この調査を実施した神戸大学の研究グループは、「65歳を過ぎたら肥満や中性脂肪の増加だけでなくやせにも注意して、バランスのよい食事や適切な運動を心がけることが大切」とアドバイスしています

筋肉の材料となる
たんぱく質中心の食事を

ご承知のように、筋肉はたんぱく質でできています。筋力が低下して、自分の足で立ったり歩いたりすることが困難になるサルコペニアを予防するには、運動に加え、筋肉の材料となるたんぱく質を、他の栄養素、特にビタミンやミネラル類と一緒にバランスよく、十分な量をとって筋肉量を増やすことが大切です。

そこで思い出すのが、105歳という健康長寿を全うされて2017(平成29)年7月18日に亡くなられた日野原重明(ひのはらしげあき)医師*のこと。

100歳を超えてもなお健脚で、とにかくよく歩いておられました。その理由をお尋ねすると、「週に2、3回は夕食に100g前後の牛のステーキを食べていますからね」と話してくれたことは先にこちらで紹介しました。

生前の日野原医師のようにいつまでも自立した生活を続けていくためには、やはり「たんぱく質」に一目置く必要がありそうです。

*日野原重明医師とは、日本で最も名の知られた内科医(聖路加国際病院名誉院長)。「生活習慣病」という言葉の生みの親。また、ベストセラーの絵本「葉っぱのフレディ」のミュージカルの脚本を執筆したことでも広く知られている。

サルコペニア予防には
毎日もっとたんぱく質を

このたんぱく質については、最近、大変気がかりな分析結果が、国立健康・栄養研究所の研究チームから報告されています。日本人のたんぱく質摂取量が現状のままでは、働き世代である30~64歳の20%以上の人に、筋肉維持の観点から不安があるというのです。

各栄養素のとるべき摂取量については厚生労働省が、各栄養素が不足しないための量や、生活習慣病の発症を予防するための目標量を、「食事摂取基準」として示しています。

たんぱく質のこの目標量は、30代から75歳以上までの全世代において、95%以上の人が満たしていることが統計により確認されています。ですから、生活習慣病などを予防して健康を維持していくために最低限必要とされているたんぱく質については、毎日の食事から摂取できていることになります。

ところが、「筋肉量を維持してサルコペニアを予防する」観点からみると、必要量を満たしていない人が65歳以上では15%前後、30~65歳では20%以上いるというのです。

サルコペニア予防について、日本サルコペニア・フレイル学会は、男女ともに体重1㎏あたり1.0g以上のたんぱく質の摂取をすすめています。

理想的なたんぱく源は
アミノ酸スコア100の卵

国立健康・栄養研究所のこの報告では、1日当たりのたんぱく質摂取量だけでなく、1回の食事で摂取しているたんぱく質の摂取量についても調査結果が示されています。

それによると、性・年齢に関係なく必要とされる1食あたりのたんぱく質摂取量を20gとした場合、夕食では多くの人がこの量を満たしているのですが、朝食と昼食、特に朝食で足りていない人が多くなっているのです。

最近の栄養学の領域では、時間栄養の観点から、「何を、どのくらい食べるか」に加え、「いつ食べるのがより高い栄養効果が期待できるか」といったことが重視されています。詳しくはこちらを。
フレイル予防にたんぱく質を多くとることを心がけている方は多い。このたんぱく質のとり方については、最近注目の「いつ食べるか」を重視する「時間栄養」の考え方から、朝食に多くとりよりも夕食に多くとったほうがより効果的であることがわかってきた。

朝食に卵料理を

では、最も足りていない朝食において必要とされる量のたんぱく質をとるには、何を食べたらいいのでしょうか。この答えとしてとっさに思い浮かぶのは、最も手に入れやすく、しかも必須アミノ酸の含有量が多く、いわゆるアミノ酸スコアが「100」の卵、つまり鶏卵です。

平均的なサイズの卵1個(50~60g)には、たんぱく質が約6.2g含まれています。サルコペニア予防に必要とされるたんぱく質摂取量のほぼ10%に相当します。

たんぱく質以外にも脂質、ビタミン、ミネラルといった栄養素が含まれていて栄養価値が高いうえに、料理方法も実に豊富で、安価で手に入り保存も効きますから、卵はたんぱく源として最適なのです。

卵を1日2、3個食べても
コレステロール値は上がらない

この卵については「コレステロールが気になる」という方が依然として多いようです。確かに、平均的なサイズの卵1個には約210ミリグラムのコレステロールが含まれていますから、含有率の高さは否定できません。

しかし、すでに高コレステロール血症を指摘されている方は例外として、健康であれば1日に卵を2、3個食べても血中コレステロール値への影響はほとんどないことが、研究で確認されています。

実際、コレステロールの摂取基準が撤廃されたことで注目を集めた「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の検討委員会は、コレステロール摂取量を制限するとたんぱく質不足に陥り、特に高齢者は低栄養から筋力低下に陥るリスクがあると、注意を喚起しています。

そのうえで卵のコレステロールについては、各種研究論文により「卵の摂取量と(心筋梗塞などの)冠動脈疾患や脳卒中の死亡率、糖尿病有病率との関連は見いだせない。1日に卵2個以上摂取した群とほとんど摂取しない群との死亡率を比べても有意の差は認められない」として、卵の適度な摂取をすすめています。

ですから安心して、朝食や昼食に卵料理を一皿加え、たんぱく質を過不足なく補ってみてはいかがでしょうか。その際、卵は半熟の状態で食べるのが栄養的にはいいという話をこちらで書いていますので、読んでみてください。

手軽なたんぱく源として、毎日のように卵を食している方は多いはず。ただ、調理方法によってたんぱく質など栄養素のからだへの吸収率が違ってくることはあまり意識していないのではないだろうか。からだに一番いいのは「半熟卵」。これなら育毛効果も……。

たんぱく質源に大人向け粉ミルクも

手軽なたんぱく質の補給源としては牛乳もおすすめですが、「牛乳は苦手」という方には、大人のための粉ミルク ミルク生活プラス などの大人向けに製造された粉ミルクをコーヒーや紅茶、スープ類に加えてたんぱく質を補給するのも、手軽な方法としてお勧めです。詳しくはこちらを参照してください。

在宅で要介護者を介護している家族を対象に行った調査で、48%の要介護者が低栄養の傾向にあるとの結果が報告されている。低栄養状態はフレイルに陥りやすく、栄養状態の改善は必須だ。手軽な栄養源として、良質なたんぱく源である「大人用粉ミルク」を紹介する。

あるいは、食事を用意するのはハードルが高いというときは、味の素がたんぱく質を手軽に摂取できるようにと提供しているクノール たんぱく質がしっかり摂れるスープ ポタージュ などをとるのもお勧めです。

たんぱく質を手軽にとれる食事術を紹介する本を参考に

「料理が苦手」「食が細くてたくさん食べられない」「ひとり暮らしで作る気になれない」などの理由からたんぱく質だけでなく食事量が不足がちな方は少なくないでしょう。

そんな方は、管理栄養士が高齢者向けにたんぱく質を手軽にとれる食事術を紹介している『100年長生き食: 料理が苦手でも、ひとり暮らしでもできる!』(Gakken)を参考にされてはいかがでしょうか。

なお、運動については、「運動カウンター」と呼ばれる健康づくりアプリが開発され、自宅で手軽にできる運動が紹介されています。

新型コロナウイルスの感染対策として続いた自粛生活による運動量低下により、フレイルの準備状態にある人も少なくないだろう。要介護者を増やさないためにも、何とか運動と食生活両面の充実をと、研究チームが開発したフレイル予防のためのスマホアプリを紹介する。

食が進まないときは主治医に相談してエンシュア・Hを

サルコペニア予防のためにカロリーとたんぱく質を多くとりたいのだが、なかなか食事の量を増やせないときもあるでしょう。そんなときは主治医に相談して医療用医薬品の栄養ドリンクのなかでもとりわけ濃縮タイプの「エンシュア・H」を処方してもらうのもお勧めです。

エンシュア・Hは1缶250mlが375kcalとカロリーが非常に高く、たんぱく質も13.2gを補うことができます。詳しくはこちらを。

エンシュア・リキッドを食事として栄養を確保しているがん患者や高齢者が増えている。必要な栄養素がバランスよく配合されていて、味もバニラ味、コーヒー味など何種類か用意されているのだが、もともとの栄養価を下げずにおいしく飲むには少しの工夫も必要だ。

参考資料*¹:特定健診では異常なしとされるフレイルの進行を下腿周囲径や圧力で診断

参考資料*²:国立健康・栄養研究所機関紙『健康・栄養ニュース』平成30年7月発行 第17巻1号p.6