健康食品による健康被害を未然に防ぐために

栄養補助食品

健康食品の84%に
不適正な表示、広告が見つかる

健康食品については、とかく私たちは、「医薬品とは違う食品なのだから安心」と考えて利用しているふしがあります。安心があってこその健康食品なのですが、その信頼がこのところ大きく揺らいでいるようなのです。

信頼を揺るがす話としてとっさに頭に浮かぶのは、日本製サプリメントで初めて死者が出た「紅麹(べにこうじ)」を配合した機能性表示食品の一件でしょう。ところが、ことはそれだけではないようなのです。

たとえば東京都は、いわゆる「健康食品」による健康被害を未然に防ごうと、平成28(2016)年度以降、毎年1回、市場に流通している法令違反が疑われる健康食品を実際に購入し、その表示や成分等を調べる「試買調査」を実施し、結果を公表しています。

その令和5(2023)年度の調査では、店頭やインターネット通販で購入した健康食品125製品について調べているのですが、その84%に当たる105製品で不適正な表示や広告が見つかったことを報告しているのです

健康食品なのに
医薬品成分が含まれる製品も

今回の調査で見つかった健康食品の不適正表示のなかには、医薬品として承認を得た製品ではないにもかかわらず、「高血圧予防」「高脂血症予防」「更年期障害にも効果的」「肝機能を回復」「血流改善」「新陳代謝促進」「発毛」など、医薬品まがいの効能効果をうたう事例が多数あったそうです。

また、製品を紹介するパンフレットには使用者の体験談を掲載しているものがよくあるのですが、そのなかに、たとえば「消化力が弱く、肌トラブルも多かったが、3日ほどで便通が良くなり、腸内がピッカピカになった感じがしました」というように、消費者に健康保持増進効果を誤認させるような表現をしているものがあったとのことです。

さらに深刻な問題としては、調査した健康食品のうち3製品には、食品には使用が禁止されている医薬品成分が含まれていて、健康被害が懸念されるとして注意を喚起しています。

健康食品のパッケージに
添加物や栄養成分、賞味期限の表示がない

ところで、いわゆる「健康食品」には法律上の定義はなく、厚生労働省は「医薬品以外で経口的に摂取される、健康の維持・増進に特別に役立つことをうたって販売されたり、そのような効果を期待して摂られている食品全般を指している」と説明しています。

あくまでも「食品」ですから、健康食品として販売されている製品の容器包装、いわゆるパッケージには、製品に含まれている添加物や栄養成分、賞味期限などを表示することが、「食品表示法」で義務付けられています。

ところが今回の東京都の調査では、以下に示すように、必要な表示がない、あるいは不適正な表示の製品が少なからずあったことが報告されています。

  • 添加物として表示が必要な物質を、原材料に混在して表示していた
  • 添加物として「着色料」と記載されているものの、その物質名が併記されていなかった
  • 製品のパッケージに必要な表記がいっさいなかった
  • 賞味期限の年月日、または年月が表記されていなかった
  • 栄養成分表示が正しく表示されていなかった

『健康食品ウソ? ホント?』パンフレットの活用を

これらの結果から東京都は、いわゆる「健康食品」を利用する際には、個々の製品のパッケージにある表示や広告をよく確認するよう促しています。

また、健康食品を安全に利用して健康被害を未然に防ぐために必要な基礎知識を『健康食品ウソ? ホント?』というパンフレットにまとめて紹介し、その活用を呼び掛けています。このパンフレットは、東京都健康安全研究センターのホームページからダウンロードできますから、是非チェックしてみてください。

健康食品の利用に際して
確認すべき7ポイント

消費者庁は、健康食品による健康被害を未然に防ぐために、利用する際に確認すべきポイントとして、以下の7点をあげています。

  1. 錠剤・カプセル状の健康食品は過剰摂取になりがち。味・香り・容積が備わった通常の食品形状の製品のほうが過剰摂取になりにくい。
  2. 広告のキャッチコピーや利用者の体験談のみを信用するのではなく、製品に含まれている成分の安全性と有効性に関する情報を自分で調べてみる
  3. 友人や知人から得た情報は、その情報源をたどり、販売業者の宣伝に過ぎない内容ではないか、正確な情報なのかを確かめる
  4. 製品の品質等を確認するための、製品に個別に含まれる成分量や製造者、問い合わせ先が明記してあることを確認する
  5. 思わぬ健康被害を受けることがあるため、錠剤やカプセル状の製品を複数利用したり、医薬品的な効果を期待して利用しないようにする
  6. 自己判断で医薬品と併用することは避け、不調を感じたら医師や薬剤師などの専門家に必ず相談する
  7. 高価な製品ほど効果があるとは限らない。同様の製品と比べたうえで利用するかどうかを判断する

安全性や有効性を確認できるサイト

上記「2」や「3」に関連して消費者庁は、健康食品の安全性や有効性に関する信頼できる情報源として、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所のウエブサイトにある「健康食品」の安全性・有効性情報」のデーターベースを紹介しています。

なお、いわゆる健康食品のなかの「特定保健用食品(通称「トクホ」)」「栄養機能食品」「機能性表示食品」についてはこちらをご覧ください。

「紅麹(べにこうじ)」を配合したサプリメントによる健康被害の報告が相次いでいます。日本製のサプリメントで初めて…

参考資料*¹:東京都「令和5年度健康食品試買調査結果」

参考資料*²:東京都健康安全研究センター パンフレット『健康食品ウソ? ホント?』