「転倒予防セルフチェック」を活用して健康長寿

歩く

転倒予防のセルフケアにより
「要介護」や「寝たきり」を防ぐ

2017(平成29)年の初夏、この国で最も名の知られた臨床医、日野原重明医師が105年の人生にピリオドを打たれました。

亡くなる直前まで診療を続けておられたことはあまりにも有名です。
まさに健康長寿を全うされたと言っていいでしょう。

在りし日の日野原医師は、その健康長寿、つまり健康で自立した生活を送りながら長生きを全うする秘訣ともいうべきいくつかの健康法を、日々忠実に続けておられました。

そのひとつが、先に紹介した「いつまでも自分の足で歩くために、毎日足腰を鍛えること」。

105歳で昨年逝去された日野原重明医師は、取材の都度、健康長寿を全うするための秘訣を話してくれました。そのひとつが足腰を鍛えて「自分の足で歩くこと」。そのためには、筋肉の健康に欠かせない良質のたんぱく質を十分撮ることだと……。

その理由を日野原医師は、こんなふうに話しておられます。

「高齢者は、ちょっとしたはずみにつまづいて転びやすいですよね。転んで、大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)といって、太もも部分にある骨の先端を骨折したことがきっかけとなり、要介護や寝たきりの状態になってしまったという方が多い。その予防には、とにかく歩いて足腰の筋肉を鍛えるのがいちばんです」

高齢者のために作成された
「転倒予防セルフチェック」

生前の日野原医師が指摘されていたことは、厚生労働省がまとめた2017年の「国民生活基礎調査」でも裏づけられています。

65歳以上の要介護者、つまり介護を受けながら日常生活を送っている高齢者を対象に、介護が必要となった原因を調べた調査です。

その結果、多い順に「脳血管障害(いわゆる脳卒中)」「認知症」「高齢による衰弱」に次いで「骨折・転倒」が挙げられ、その割合は全体の12.2%を占めていたというのです。

健康長寿のためのセルフケアとなると、がんや生活習慣病予防のための食事を中心とする生活の見直しや、認知症を防ぐための脳の活性化訓練に集中しがちです。

もちろんいずれも大切です。

ただ、介護予防や寝たきり予防の観点からみると、「転倒防止」のためのセルフケアもまた、国レベルで取り組むべき重要な課題であることを実証するデータといっていいでしょう。

折しも、国立長寿医療研究センターは2018(平成30)年1月、当センターの病院ホームページに、高齢者自らが転倒リスクを自己診断して、そのリスクに応じた具体的な予防策を学ぶことができる「高齢者のための転倒予防セルフチェック」*¹コーナーを開設しています。

高齢者に限らず、このコーナーを活用して、転倒予防に主体的に取り組みたいところですが、なかには、ウエブ操作に不慣れな方もいるでしょう。

そのような方向けに、このセルフチェックコーナーで紹介されている内容のすべてを収めた「転倒予防手帳」*²が用意され、ダウンロードできるようになっていますから、こちらも活用して、まずはセルフチェックをしてみてはいかがでしょうか。

転倒リスクを自己診断でき、
転倒予防のアドバイスも

セルフチェックコーナーにアクセスすると、まず冒頭に、
「寝たきりにならないためにご自身の転倒リスクをチェックしましょう」
とあります。

そこをクリックすると、最初の質問「過去1年で転んだことがある」に続き、以下のような起立や歩行に必要な身体機能に関するチェック項目が並んでいます。

  • つまづくことがある
  • 手すりにつかまらないと、階段の昇り降りが不可能
  • 歩く速度が遅くなってきた
  • 横断歩道を青のうちに渡りきることが不可能
  • 片足で5秒くらいたっていることが不可能
  • 膝が痛む
  • 目が見えにくい
  • 耳が聞こえにくい
  • もの忘れが気になる

さらに、生活環境における転倒危険因子の有無を見極めるチェック項目が続きます。

  • 廊下、居間、玄関によけて通る物が置いてある
  • 家の中に段差がある
  • 家で階段を使う
  • 生活上家の近くの急な坂道を歩く

トータルで22項目ある質問それぞれに「はい」「いいえ」でチェックを入れていくと、転倒リスクがスコア化されるようになっています。

全項目をチェックし終えて、「はい」をチェックした項目が多いほど転倒リスクが高いと判定され、「10点以上では転びやすい」と記されています。

筋力強化のための栄養面からのアドバイスも

さらに「はい」をチェックした項目それぞれに、「予防と解説」コーナーがあり、そこをクリックすると、転倒予防のための具体的なアドバイスが受けられるようになっています。

たとえば、「手すりにつかまらないと、階段の乗り降りが不可能」に「はい」とチェックを入れると、「足腰の筋力が低下している証拠です」とあります。

さらにその予防策として、「栄養は大丈夫ですか? 多種目の食品をバランスよく食べましょう(特にたんぱく質)」「1日30分以上散歩してください」とあります。

筋肉はたんぱく質でできていますから、筋肉の材料となる肉類、魚類、卵、乳製品、大豆製品を他の栄養素、特にビタミンやミネラルと一緒にバランスよく摂ることが大切です。

「栄養バランスのよい食事を心がけてください」と言われた経験はないだろうか。新型コロナウイルスから身を守るためには栄養バランのよい食事をして免疫力を高めるように言われたりもする。この「栄養バランスのよい食事」が「まごたち食」なら簡単、という話を。

紹介されているアドバイスは、いずれも取り組みやすい具体策になっていますから、是非一度セルフチェックしてみることをおすすめします。

チェック結果に見合う転倒予防セルフケアを

チェック結果から転びやすいことがわかれば、たとえば日本転倒予防学会が推奨しているカネカ ヒッププロテクターを活用するなどして「まさか」に備えてはいかがでしょうか。

なお、散歩にしてもウォーキングや軽いランニングにしても、ひとりで黙々と歩いたり走ったりしていると「今、自分はどのくらいのスペースで歩いているのか」「すでにどのくらい歩いたのか」といったことが気になるものです。

そんな方のために、ウォーキング中に歩行ペースや歩行した距離を自動的に教えてくれたり、リズムをとってくれるグッズがありますから、活用してみてはいかがでしょうか。

家の中の転倒リスクが高く、渋滞のリフォームを検討している方は、条件が合えば介護保険制度のサービスで費用を支援してもらえます。こちらを参照してください。

人生の最終段階を自宅で過ごすと決め、主に転倒予防の観点から住宅の改修を決断したら、利用できる介護保険サービスがある。要支援者、要介護者の認定を受けていれば、20万円の支給限度額の範囲内で給付を受けられるというものだ。その詳細を紹介する。

参考資料*¹:国立長寿医療研究センター「高齢者のための転倒予防セルフチェック

参考資料*²:転倒予防手帳