新しい生活様式とフレイル予防の両立にアプリを

エクササイズ

1カ月半続いた自粛生活で
フレイルの準備状態に?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はいったんは収束に向かったものの、感染の第2波、第3波に見舞われる可能性は今も残っています。

再流行に備えようと、政府の専門家会議が提唱している「新しい生活様式」では、外出を控えることや人との接触を減らすことが奨励されています。

外出自粛がもたらす身体活動の制限や、社会的交流の減少を余儀なくされる生活様式は、とりわけ高齢者にとっては、心身両面の機能低下につながることが懸念されます。

懸念どころか、感染拡大を防ごうと、すでに2か月近く続けてきた自粛生活により、日々の活動量、運動量は大幅に減少しています。

フレイル(心身の虚弱状態)や転倒、骨折を招きやすく、要介護状態、つまり介護が必要な状態につながりかねない状態にあるのではないでしょうか。

そこで今日は、運動不足を解消してフレイル準備状態から脱するために、高齢者向けに開発された在宅でできる「健康づくり用アプリ」の活用を提案したいと思います。

なお、自分の今の状態がフレイルかどうかを自己チェックする方法については、こちらの記事を参考にしてみてください。
→ 健康長寿は「フレイル」の自己チェックから

直接の交流はないものの
同じ動画で健康づくり

ここで言う健康づくり用アプリとは、東京都健康長寿医療センター研究所の研究チームと慶応義塾大学理工学部の研究チームが共同で開発した、無料のスマートフォン用アプリ「運動カウンター」と「食べポン」です*¹。

新型コロナウイルスの感染が拡大する前までは、フレイルや認知症の予防策として、たとえば地域の「通いの場」に定期的に出掛けて行くなどして、仲間と体操や趣味活動といったさまざまな健康づくり活動に参加し、活気ある生活を楽しんでいたことと思います。

しかし、新型コロナウイルスが完全には収束していない現状にあっては、感染拡大防止のための「新しい生活様式」として、集って行う健康づくり活動や仲間との交流なども、すべてに厳しい制限が設けられています。

そこで研究チームが考えついたのが、近年では高齢者にも身近な情報伝達手段となっているスマートフォンややインターネットを活用することでした。

つまり、仲間と直接の交流を伴わないものの、同じ動画を見ながらそれぞれが健康づくりをすることにより、それが共通の話題にもなるようなアプリの開発だったのです。

「運動カウンター」アプリで
フレイル予防に有用な運動を

開発されたアプリの1つ「運動カウンター」では、スマートフォンにインストールしたLINEアプリのトークルームを利用して、自宅でできる8種類の簡単な運動動画を見ることができます。
8種類の運動としては、以下のメニューが用意されています。

  1. フレイル予防に重要な下肢の筋力アップ運動5種類
    (つまさきあげ、かかとあげ、ももあげ、ひざのばし、スクワット)
  2. 腰痛予防体操
    (便秘解消の効果も期待できる「腰ひねり」)
  3. 口腔体操
    (別名「嚥下体操」とも呼ばれる、唇や舌、口周りの筋肉を意識して動かすことで、食事や会話がスムーズにできるようにする「あーんー体操」)
  4. ウォーキング
    (自粛生活続きで運動不足を自覚している人には最適の全身運動、つまり散歩。下半身の大きな筋肉を使うため血行促進、脂肪燃焼効果も期待できる)

また、メニューの実践回数を記録し、回数によって加算されるポイントを家族や友人らと共有したり、競争したりすることもできるように工夫されています。

「食べポン」アプリで
食品群10種の摂取状況を確認

もう一つのアプリ「食べポン」は、食習慣をチェックして、不足している食品を意識して補うことによりバランスのよい食事摂取の手助けをしてくれるアプリです。

「食べポン」では、1日に摂取した食事内容を「10の食品群」に分けて記録していくことにより、今日はどの食品群が足りているか、不足しているのはどの食品群かが一目でわかるように工夫されています。

この記録から、足りていない食品群を把握し、その食品を摂取するようにしていけば、バランスのとれた栄養摂取が可能となるというわけです。

健康長寿の疫学研究から編み出された「10の食品群」

ところで「10の食品群」とは、東京都健康長寿医療センターが、長年にわたり積み重ねてきた疫学研究の成果から編み出された、長寿社会を健やかに過ごすためのバランスのよい栄養摂取につながるとされる「10の食品群」に基づいています。

具体的には、「肉類」「魚介類」「卵」「大豆製品」「牛乳、乳製品」「海藻類」「緑黄色野菜」「果物類」「いも類」「油脂類」の10の食品群のうち、1日で7食品群以上を摂取することが健康長寿につながるとされています。

この記録から、足りていない食品を補うと同時に、10ある食品群のうち何品目を食べたかを1食品群で1点として得点化し、その得点を家族や友人らと共有・競争することにより、楽しみながらバランスのよい食事摂取につなげる工夫もなされています。

自粛生活続きで
活動時間が3割減少している

新型コロナウイルスの感染拡大で強いられることとなった自粛生活が高齢者の身体活動に与える影響について、興味深い調査結果を紹介しておきたいと思います。

国立長寿医療研究センターと筑波大学の合同研究グループが、緊急事態宣言下の4月23日から27日にかけ、東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、兵庫、福岡の1都1府6県在住の65歳から84歳の男女1600人を対象に実施したインターネット調査の結果*²です。

調査では、新型コロナウイルスの感染が拡大する前の1月と感染拡大による緊急事態宣言中の4月の、それぞれにおける日々の活動状況(身体活動時間)、および感染拡大後については、活動が制限されるなかでの運動の実施状況について尋ねました。

結果は、感染拡大防止のための自粛生活により、高齢者の活動時間がおよそ3割も減少しているというものだったのです。

感染予防と活動維持の両立に「運動カウンターアプリ」を

具体的には、運動や家事など活動している時間は、緊急事態宣言が出る前は1週間当たり平均4時間5分でしたが、宣言中は約3時間と、およそ65分(約3割)も減少していました。

また、緊急事態宣言により活動が制限されているなかで、意識的に「何らかの運動をしている」と答えた高齢者は50%でした。

その運動の種類として多いのは(複数回答可)、「自宅内での運動(35%)」と「ウォーキング(34%)」で、「屋外での運動」は3%にとどまり、いずれも1人で運動しており、「集団での体操をしている」と答えた人はいませんでした。

こうした結果から研究グループは、高齢者は、感染予防と身体活動の維持という一見相容れないかのように見える両者のバランスを保ちつつ極力体を動かすように努めていく必要があるとしており、まずは紹介した「運動カウンターアプリ」に挑戦してみてはいかがでしょうか。

アプリの利用には、スマートフォンとLINEが必要です。
アプリ自体は無料ですが、通信料・接続料は本人負担となります。

公開・ダウンロード先は、AIP加速PRISM研究「健康貯金のための運動誘発AI基盤構築」特設ページ「健康Appsシリーズ」(コチラ)です。

なお、フレイル予防には関心があるが、スマートフォンの操作は得手ではないという方は、こちらの記事を参照してみてください。
→ 「フレイル」予防に岡山県のリーフレット活用を

参考資料*¹:在宅での高齢者の健康づくりに活用可能なスマートフォン用LINEアプリを公開

参考資料*²:高齢者の感染予防と身体活動の重要性