物を噛むときは前歯も使って脳の活性化を

ポッキー

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変化の少ない生活で
脳の血流が滞りがちに

40代に入るころから、おそらく誰もが気になってくるのが「軽い物忘れ」――。それが頻繁になってくると、「認知症かしら?」と疑ったりするものです。先日も仕事仲間のNさん(40代後半)との電話で、そんな話になりました。

「コロナ禍で変化のない生活が続いたことがまだ響いているのかしら。最近物忘れが多くなった。夕べなんか、冷蔵庫を開けたものの、何を取り出すつもりだったのか思い出せなくて、焦っちゃった……」

そう聞いて、冷蔵庫の流れでしょうか、「物を食べるときに奥歯だけでなく前歯も使って食べると、脳の血流量が増えて、脳の活動が活発化する」ことを実証した研究があったことを思い出しました。4年余り前に発表された研究です。

コロナは一段落したものの、長く続いた刺激の少ない自粛生活で血流が滞りがちだった脳に、「いつもと違うこと」を考えるネタを提供できたらと思い、紹介させていただきます。

奥歯だけでなく前歯も使うと
脳の活性化が進む

脳の血流量を増やして脳の活動の活性化を促す方法はさまざま報告されています。そのなかで、「物を噛む」ことによる脳の活性化については、「ガムを噛むことは脳の血流アップにつながる」という話をよく耳にします。

確かに、仕事中に集中力が落ちてきたり、眠くなってきたときにガムを噛むと、頭がすっきりして、眠気も治まります。ただガムを噛むときに使っているのは、奥歯だけです。そこで研究チームにひらめいたのが、「前歯を使って噛んだらどうなのか」でした。

この発想から、奥歯だけで物を噛むときと、前歯も使って噛むときの、脳への血流量の違いを調べたそうです。その結果として、奥歯だけでなく前歯も使ったときの方が、明らかに脳の血流がアップすることを確認できたというのです。

長いままのポッキーと
カットしたポッキーで実証実験

この研究を行ったのは江崎グリコ健康科学研究所の研究チームです。ですから実験では、自社のチョコレート付きスティック菓子としてお馴染みのポッキーチョコレート を使い、もともとの長いままのポッキーを食べるグループと、3.5㎝ほどに短くカットしたポッキーを食べるグループとに分け、それぞれの脳血流量の変化を測定し、比較しています。

長いポッキーは、口に入れてすぐに前歯で噛み切り、次いで奥歯で細かく噛み砕いてから飲み込むことになります。一方のすでに短くカットしてあるポッキーは、噛み切る必要はありませんから、一口目から奥歯で噛むことになり、前歯はほとんど使いません。

違いは、物を食べるときに前歯を使うかどうかです。そして得られた結果から研究チームは、「前歯を使って噛み切る」比率が高い食品ほど、脳、とりわけ前頭前野*の血流がアップすることが実証された、と結論づけています。

*前頭前野とは、脳の前頭葉の大部分を占め、「考える」「記憶する」「感情をコントロールする」など、人間が人間らしくあるために最も必要な部分。脳の最高中枢と考えられている。この部分の働きが衰えると、物忘れや意欲の低下が顕著になったり、じっくり考えることができにくくなり、衝動的にキレやすくなる。

ぬれ焼き煎餅を
前歯で噛んで脳の活性化に

あるとき高齢者、それも75歳を過ぎた後期高齢者と呼ばれる方たちが数人集まる席で、この前歯を使う話をしたところ、ある方から、「我々の世代にチョコのポッキーは馴染まないですよ。前歯を使って食べる菓子と言ったら、ぬれ焼き煎餅かなぁ―」と言われました。

これを聞いて、脳の血流を気にする年代の方のなかには、高血圧で減塩生活をしている方も多いだろうが、そんな方にぬれ焼き煎餅はどうなんだろう、塩分のとりすぎになってしまうのではないだろうか、などと心配になり、家に戻ってから調べてみました。

すると、先に紹介した日本高血圧学会減塩委員会による「JSH減塩食品リスト」*のなかに、ぬれ焼き煎餅ではありませんが、30%減塩してある減塩亀田の柿の種 を見つけました。柿の種なら前歯を使います。それも、一度にたくさんの柿の種を口にほおばるような食べ方ではなく、ちょっとみみっちく思われるかもしれませんが、1つずつポリポリ噛む感じで食べると、より効果的です。

探せばあるもので、お菓子類だけでなく、にんじんやきゅうり、大根などの野菜スティックも、口に入れてまず前歯で噛み切ってから奥歯で噛み砕きます。

*日本高血圧学会減塩委員会による「JSH減塩食品リスト」についてはこちらを。
減塩に挑戦している人は、高血圧や高血圧関連疾患の患者だけで4300万人に及ぶと推定されている。減塩食には美味しくないイメージも強く、実際味気のなさから長続きしない。そこで日本高血圧学会は、減塩効果の期待できる食品のリストを作成し公開している。その紹介を。

意識して前歯を使えば脳が活性化

かかりつけの歯科医にこの話をしてみました。すると、小さなお子さんの歯並びをよくすると同時に、脳の前頭前野の血流アップ効果により集中力が高まるからと、「茹でたままのトウモロコシやリンゴのまるかじりをよく勧める」、と話してくれました。

大事なことは、意識して前歯を使うことです。ただ、歯が健康でないと、前歯で物を噛み切ることは難しくなります。

私たちの国では、「8020(ハチ・マル・ニイ・マル)運動」といって、満80歳になったときに自分の健康な歯が20本残っているように歯の健康に気をつけて、いくつになっても三度三度の食事を自分の歯で噛んで食べられるようにしようという運動が勧められています。オーラルフレイル対策としても、気づいたときから、歯の健康維持をお忘れなく。

認知症のセルフチェックを

なお、「認知症かしら?」と心配になったときは、自治体のホームページなどにある「認知症簡易チェックサイト」にアクセスしてセルフチェックしてみてはいかがでしょうか。

認知症は、残念ながら現時点でこれといった特効薬はない。しかし、早い時期にそのサインに気づき適切な対応をとれば、病気の進行を遅らせることができる場合もある。その早期発見のきっかけに、多くの自治体が導入している「認知症簡易チェックサイト」を紹介する。

血液検査で認知症の一歩手前でリスクチェックも

最近は、認知症の予備群である軽度認知障害のリスクチェックを簡単な血液検査でできるようになっています。詳しくはこちらを。

認知症は早い段階で発見して先手を打てば予防も期待できることがわかっている。幸い、簡単な血液検査で、アルツハイマー型認知症の前の段階である軽度認知障害のリスクを判定する検査法が開発され、実用化されている。その紹介と、認知症予防策を紹介する。

認知症予防には手の指を動かして

また、認知症予防には前歯を使うことも大事ですが、手の指を動かすこともお忘れなく。特に、ピアノなど楽器の演奏は感覚を働かせつつ手の指を細かく動かしますから、脳の活性化にはいいとされています。

哲学者のカントによれば「手は外部の脳」とのこと。手を動かすことは脳を使うことであり、脳内細胞の活性化、血流アップにつながるというわけだ。これを認知症予防に生かさない手はない。80歳でピアノを習い始めた知人の話、ぬり絵の話等々を紹介する。

参考資料*¹:スティック菓子を前歯で噛むことによる脳活動活性化効果