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卵のたんぱく質吸収率は
調理方法で違ってくる
手軽なたんぱく源として、日本人の食卓に欠かせないものの1つに卵(鶏卵)があります。統計によれば、国民1人当たりの卵消費量は、年間337個とのこと。世界ランキングで言えば、メキシコの409個に次いで2位になるそうです*¹。
生のままの卵をちょっとかき混ぜて炊きたてのご飯にかけたり、目玉焼きにしてパンにはさんだり、ちょっと時間があるときは卵焼きやオムレツにするなど、それぞれ好みの食べ方で、毎日欠かさず口にされていることと思います。
数あるたんぱく源のなかでも卵は、必須アミノ酸のバランスが最もよい食材です。たんぱく質の栄養価を示す指標である「アミノ酸スコア」で言えば、牛肉や豚肉、鶏肉、牛乳、あるいは大豆などと並ぶスコア「100」の良質なたんぱく食材です。
卵の大きさにより、あるいは鶏の育て方、特に与えるエサによっても微妙な違いはあるものの、卵1個から摂れるたんぱく質量におおむね違いはありません。
ただ、調理方法が違えば体内における吸収率が異なり、当然、得られる栄養効果も違ってきます。と言うことで、今日は、その辺の話を書いてみたいと思います。
半熟卵にすれば
栄養素をまんべんなくとれる
結論から言えば、栄養面からみて「卵は半熟の状態で食べるのが一番いい」ということです。その理由は、卵に限ったことではないのですが、たんぱく質には「熱変性」と言って、加熱によりたんぱく質の性質が変わる特性があるからです。
わかりやすい例で言えば、生の状態では透明の少しトロっとした白身の部分が、少し熱を加えると白く固まった状態に変わります。これは、加熱により白身の部分に含まれているたんぱく質に変性が起こるためです。
生のままの卵には、たんぱく質の消化吸収を阻害する成分(アビジン)が含まれています。ところが熱を加えると、加熱変性によってその阻害成分が破壊され、結果としてたんぱく質が効率的に消化吸収されるようになるのです。
だから言ってただ加熱すればいいということではありません。過熱しすぎると、かえって消化吸収に時間がかかるようになります。
最もからだに負担をかけずに、卵に含まれている栄養素をまんべんなく消化吸収できるのは、温泉卵のような半熟程度の状態で、その体内吸収率は97%にもなると言われています。
半熟卵の卵黄成分「ビオチン」に
発毛・育毛効果が
「半熟卵がからだにいい」と言われる理由はもう1点あります。
卵の黄身部分、つまり卵黄には「ビオチン」と呼ばれるビタミンB群に属する水溶性のビタミンが含まれています。このビオチンは、「ビタミンB7」とも「ビタミンH」とも呼ばれ、私たちの皮膚や粘膜、さらには爪や髪の健康に深くかかわっています。
特に最近は、ビオチンに髪の毛を作る成分が多く含まれていて、発毛や育毛効果が高いことが一定の年齢層にアピールしているようです。「ビオチン配合」と明記した育毛剤が市販されていることもあり、「ビオチン」という名前をご存じの方が少なくないかもしれません。
ただ、生のままの卵の白身の部分には、「アビシン」と呼ばれる成分が含まれているのですが、このアビシンには卵黄に含まれるビオチンと結合して、ビオチンの体内における消化吸収を妨げてしまう性質があるのです。
ただ、幸いなことに、このビオチンの消化吸収を邪魔する成分は、熱を加えることによって破壊され、結果ビオチンを含むたんぱく質を効率的に消化吸収できるようになります。生のままの卵より半熟卵をおすすめする根拠は、この点にもあります。
半熟卵が簡単につくれる
便利グッズの活用も
卵黄成分であるビオチンには、発毛や育毛効果に加え、皮膚の炎症を防ぐ働きもあります。「最近ちょっと抜け毛が多くて気になる」とか「アトピーなどの皮膚の炎症がなかなか治らない……」という方は、ビオチン不足が影響している可能性も捨てきれません。
ビオチンは水溶性ビタミンですから、過剰に摂取しても尿としてからだの外に排出されやすく、とりすぎる心配はありません。ただ、腎臓が正常に機能していれば*、ですが……。
卵を生のまま食べている方は半熟卵に替えて、少し多めにとるようにしてみてはいかがでしょうか。あるいはビオチンは、卵黄以外にも、ししゃもやアサリなどの魚介類、しいたけやまいたけなどのきのこ類、ピーナッツなどのナッツ類にも多く含まれていますから、これらの食品を積極的にとるのもいいでしょう。
卵のコレステロールが気になりますか
卵についてはコレステロールを気にする方もいるでしょう。
しかし、すでに医師から高コレステロール血症を指摘されている方は別として、健康であれば1日に卵を2、3個食べても血中コレステロール値への影響はほとんどないことが研究で確認されていますから、安心して半熟卵をとるようにしてください。
でもやはり卵のコレステロールは気になるという方は、こちらを読んでみてください。
卵を半熟状態にする調理のコツ
なお、半熟卵の調理のコツとしては、冷蔵庫から出してすぐに加熱するのではなく、早めに冷蔵庫から出して水を張った鍋に入れておき、10分間ほどそのままにして卵を常温程度に戻してら約6、7分ゆでると、ころ合いのいい半熟卵が出来上がります。
目玉焼きなら、黄身の色具合を見ることとプルンと揺れる程度の状態から判断します。
最近は、象印 温泉たまご器 のような、卵をセットするだけで間違いなく半熟卵を作ってくれる手軽で便利なグッズもありますから、活用されるのもいいと思います。