「うつぶせ寝で熟睡」を続けていた日野原医師

眠っている犬

「うつぶせ寝」で睡眠の質が高まり、
4時間の睡眠ですっきり目覚める

このところ敬老の日がやってくると毎年のように、健康で長生きをしている方々が頻繁にメディアで取り上げられます。
そこでは必ず、メディア側の質問に答えるかたちで健康長寿の秘訣が語られているのですが、多くの方が食事に関する話に重ねて「よく寝る」ことを挙げています。

そう言えば、昨年(2017年)7月に、健康長寿を全うし105歳で亡くなられた日野原重明医師も、取材のたびに睡眠の大切さをよく話しておられました。

「睡眠については、みなさん何時間眠るかということを大変気にされますが、毎日の睡眠で大事なことは、時間ではなく眠りの質です。私はずっと1日4時間ほどの睡眠ですが、眠りが深く、ぐっすり熟睡できていますから、朝はすっきり目覚められます。日中も、診療中に眠くなるようなことはありません」

このように熟睡できている理由として日野原医師が話してくださったのが、「うつぶせ寝」です。かれこれ30年近く続けておられるとのお話でした。

「うつぶせ寝」による腹式呼吸で、
リラックスできて眠りが深くなる

在りし日の日野原医師は、医師の教育はもちろんですが、医療現場では医師と協働関係にある看護職の教育にもことのほか力を入れておられました。

亡くなられるちょうど1年前には、『看護に生かす腹臥位療法―うつぶせ寝で「身体と心」を取り戻す』(医学書院)と題する本を監修しておられるのですが、そのなかに、ご自身が体験された「うつぶせ寝によって得られる生理的効果」が惜しみなく披露されています。

この本のタイトルにある「腹臥位(ふくがい)」とは、お腹を床につけて寝ている姿勢、いわゆる「うつぶせ寝」のことです。
顔を伏せた状態になることから「伏臥位」と表記されることもあるようです。

うつぶせの姿勢で眠ると、横隔膜を動かす腹式呼吸が繰り返されることになります。
この深くゆっくりした腹式呼吸により自律神経の副交感神経が優位になりますから、「リラックスできて寝つきがよくなり、眠りが深くなるのが何よりの効果」だと、日野原医師。

加えて、腹式呼吸のリズミカルな繰り返しにより「インナーマッスル」と呼ばれる身体の深いところにある筋肉の動きも活発化します。

その結果として、「からみがちだった痰が出やすくなる」「胃や腸の働きが活発になる」「排尿・排便がスムーズになる」「重かった腰が軽くなる」などの生理的効果が期待できるのだそうです。

こうした効果が、介護予防や寝たきり防止にもつながることから、医療や介護の現場においても患者に実践してみることを、看護師に提案しておられます。

人間が進化する前からの、
自然な寝姿だった「うつぶせ寝」

「うつぶせ寝」と聞くと、赤ちゃんのうつぶせ寝のことを思い浮かべる方が少なくないと思います。一時期、赤ちゃんをうつぶせ寝にしていて窒息事故を起こしたり、乳幼児突然死症候群(SIDS:シッズ)と呼ばれる病気で死亡する事件が相次いで報じられました。

幼い子どもを持つ母親たちが心配して、ちょっとした騒ぎになったものです。
これを受けて厚生労働省は、1歳未満で寝返りが打てない間は、乳児のうつぶせ寝を避けるように指導しています。

こうした経緯もあり、今もってうつぶせ寝にマイナスイメージを持つ方もいるようです。
しかし、首がしっかり座っていて自分で寝返りを打つことができる大人にこの話は当てはまりませんから、誤解のないように。

ただ、大人といえども、泥酔した状態でのうつぶせ寝は、吐いたものを誤嚥するリスクがありますから、その辺は注意していただきたいと思います。

また、少々太り気味で完全なうつぶせ寝ではお腹の辺りがつらく、かえって睡眠を妨げるという方もいるでしょう。そんな方は、顔を少し横向きにするとか、自分なりに柔軟にアレンジしてみるといいようです。

よくよく考えてみると、ペットとして身の回りにいる犬や猫たち、また動物園にいる4本足で移動する脊椎動物たちも、眠るときはうつぶせの姿勢をとっています。

私たち人間も、進化する前は4本足だったわけですから、うつぶせ寝は言ってみれば自然体に戻って眠るということです。
それゆえリラックスして眠ることができるということなのでしょう。

幸い最近は、うつぶせ寝用に開発された枕も開発されています。
「このところなかなか寝つけない」「夜中に何度も目が覚めてしまう」「目覚めたときに熟睡感がない」など、睡眠トラブルを抱えている方は、かかりつけ医と相談のうえ、うつぶせ寝を試してみてはどうでしょうか。

うつぶせ寝用に医師が開発した枕