高血圧と新型コロナウイルスの関係は?

高血圧

新型コロナウイルスをめぐる
高血圧にまつわるデマ情報

新型コロナウイルスやその感染症、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)をめぐっては、メディアやSNSなどにおいてさまざまな情報が飛び交っています。

そのなかには、事実とまったく異なるデマ情報もあれば、懸念は伝えられているものの確かな根拠のない情報も少なからずあります。

日本高血圧学会によれば、高血圧に関しては、
⑴ 高血圧のある患者は新型コロナウイルスに感染しやすいのではないか
⑵ 高血圧の治療に一般的に使われている一部の降圧薬が、COVID-19患者の予後を悪化させるのではないか
といった根拠の乏しい懸念が出回っているようです。

いずれも、あくまでも懸念の域を出ない話なのですが、一部のメディアがこの懸念に過剰に反応して伝える情報が、高血圧で治療中の患者を困惑させているようです。

ちなみに、2点目の懸念で言うところの「一部の降圧薬」としては、
⑴ アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬:レニベース錠、ロンゲス錠など)
⑵ アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB:ニューロタン錠、ブロプレス錠など)
の名前があげられています。

しかし、これら2タイプの降圧薬服用に関する懸念については、すでにヨーロッパの心臓病学会や高血圧学会が、「現時点ではCOVID-19の予防と治療の観点からACE阻害薬やARBの使用を変更すべきという確証はない」と明言しています。
また、国際高血圧学会も、3月16日の声明でこの見解を支持する旨、言明しています*¹。

新型コロナウイルスについて
国際高血圧学会が声明を発表

この声明のなかで国際高血圧学会は、上記⑴と⑵の懸念を払拭し、安心して高血圧の治療を続けていくうえで重要なポイントとして、次の4点を強調しています。

  1. 現時点では、高血圧患者が正常血圧の者に比べて新型コロナウイルスに感染しやすい、つまり感染リスクが高いとは言えない。
    60歳以上の高齢者は新型コロナウイルスに感染しやすいが、高齢者には高血圧を持病に持つ患者が多い。そのため、高血圧患者が新型コロナウイルスに感染しやすいように見えるのであって、高血圧そのものが感染リスクを高めているわけではない。
  2. 新型コロナウイルスについては、ACE阻害薬またはARBが感染リスクを高めたり、逆にリスクを下げることを示す臨床データはない。また、新型コロナウイルスに感染した患者の病状に高血圧が影響を与えることを示す臨床データもない。
  3. 現状では、ACE阻害薬あるいはARBの使用について否定的もしくは肯定的と判断できるだけの十分なデータは示されていない。
    そのため国際高血圧学会は、高血圧患者の治療において、ACE阻害薬あるいはARBについては、通常通り適応に応じて使用を継続することを強く推奨する。
    新型コロナウイルス感染に関する懸念に影響されて処方を変更すべきではない。
  4. 将来的には、新型コロナウイルスへの感染に降圧治療が影響を与えることが明らかになり、治療指針を変更する必要が生じてくるかもしれない。
    しかし現時点では、そのような研究結果は発表されておらず、現状の高血圧診療ガイドラインを変更する必要はないと考える。

日本高血圧学会がアピールする
5つの日常生活における留意点

一方、日本高血圧学会は、上記の国際高血圧学会の声明を紹介するとともに、
「新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言下で特に高血圧患者の皆さまに知っておいていただきたいこと」
と題するメッセージを、学会のWEBサイトで公表しています*²。

そこではまず、こまめな手洗いや「3つの密を避ける」ことなど、一般的な新型コロナウイルス感染予防策として厚生労働省がアピールしていることの励行を求めています。

そのうえで、特に高血圧で治療中の患者が、外出の自粛などが求められる生活を送るうえで留意すべきこととして、以下の5点をあげています。

  1. 在宅勤務や外出自粛に伴う運動不足、生活習慣の乱れがないように気をつける
  2. 毎日の家庭血圧測定に併せて検温測定&記録も習慣化する
  3. 家庭血圧計を清潔に使用する
    (消毒方法は血圧計により異なるため、メーカーによる取扱説明書で確認する)
  4. 処方された薬は継続して服用する
  5. 血圧の高値持続や不安定などいつもと違う変化があれば、迷わずかかりつけ医に相談する

これまで通りの運動継続と
保存食の隠れ塩分に注意を

このうち「1」については、「適切な生活習慣を維持することは高血圧治療の基本」としたうえで、緊急事態宣言により外出の自粛が求められてはいるものの「屋外での運動、散歩」は制限されていないことから、これまで通りの運動習慣を継続するよう促しています。

ただし、公園などでウォーキングやジョギングを行う場合、人と人との距離を2m空けるというソーシャルディスタンシングを守っていても、前を歩いたり走ったりしている人の飛沫(唾液などのしぶき)を受けてしまうリスクがあるとする研究結果も報告されています。

前を行く人の飛沫を避けるためには、ウォーキングでは4~5m、ジョギングでは10m、自転車で走る場合は20mの距離をとる必要があるとのこと。

したがって、新型コロナウイルスが含まれているかもしれない飛沫を受けるリスクを最低限に抑えるには、人の真後ろを歩いたり走ったりすることは避け、2m離れた横、あるいは斜め後ろの位置を選ぶことをおすすめします。

加工食品や保存食は「食塩相当量」のチェックを忘れずに

また、食生活に関しては、たとえば東京都内では「食料品の買い出しは3日に1回」がすすめられていることもあり、どうしても日持ちのいい加工食品や保存食品をいつもより多めに利用することになりがちです。

しかし加工食品や保存食品は、保存のため、あるいは味をよくするためどうしても塩分を多めに使った調理になっています。

この「隠れ塩分」については、今年4月から全製品に栄養成分の表示が義務づけられていますから、その表示にある「食塩相当量(グラム)」を忘れずにチェックし、塩分の摂り過ぎにならないように注意することをお忘れなく。

あるいは調理済み食品や保存食品の購入に、減塩食品の通販「無塩ドットコム」塩分制限セット食品を利用してみるのもいいでしょう。

新型コロナが収束するまでは
オンライン診療の活用を

「4」の処方薬の服用については、自己判断で中止したり、減量したりすることは禁忌です。
定時処方を受けるために病院やクリニックを受診することに伴う感染リスクが心配な方は、オンライン診療による方法が可能かどうか、かかりつけ医に相談してみるといいでしょう。

また、「5」の外出の自粛や感染への不安などによるストレスから家庭血圧測定値が変動したり、いつもと違う症状を自覚した場合も、かかりつけ医に電話なり、スマートフォンなどによるテレビ電話なりを活用して、相談することをおすすめします。

なお、オンライン診療については、4月13日から、新型コロナウイルスの感染拡大が収束するまでの時限的特例措置として、いつもの病気や症状以外の健康上の問題を相談する、いわゆる「初診」についても、オンライン診療で受診できるようになっています。
詳しくはこちらの記事を読んでみてください。

慢性疾患で定期的にかかりつけ医の診療を受け、定時処方を受けている人には、この時期、新型コロナウイルスの感染リスクの高い医療機関に出掛けて行くのは不安だろう。この際、出掛ける必要のないオンライン診療、オンライン服薬指導を活用してみてはどうか。その方法をまとめた。

参考資料*¹:COVID-19に関する国際高血圧学会の声明について
参考資料*²:日本高血圧学会「新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言下で特に高血圧患者の皆様に知っておいていただきたいこと」
https://www.jpnsh.jp/data/202004corona.pdf