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血圧が正常でも
食塩は1日6g未満に
日本高血圧学会は2019年4月、5年ぶりに改定した「高血圧治療ガイドライン 2019」を公表していますが、そこでは高血圧が重症化して心筋梗塞や脳卒中等の深刻な循環器疾患へ進行するのを防ぐには、1日当たりの食塩摂取量を6g未満に制限することをすすめています。
ところが、2018年に実施された「国民健康・栄養調査」の結果を見ると、日本人の成人における1日当たり食塩摂取量の平均値は10.1gで、当面必要とされる量をはるかに超える食塩を摂取していることが明らかになっています。
こうした事態を懸念した日本高血圧学会は、血圧が正常であっても、成人では男女ともに、食塩摂取量を1日6g未満まで減らすことを、広く国民に奨励しています。
「減塩食品は美味しくない」のイメージが
こうした流れを受け、今や市中には、「減塩」とか「低塩」、あるいは「塩分控えめ」をうたった食品や調味料の類が数多く出回るようになっています。
しかしそうした食品のなかには、食品中に含まれている食塩相当量*がパッケージに正しく明記されていないものもあります。また、もともと減塩食品には「美味しくないもの」とのイメージが付きまといますから、減塩の必要性は実感しつつも、つい避けている現実もあるのではないでしょうか。
そこで今回は、日本高血圧学会が高血圧対策の一環として取組みをすすめている「減塩食品リスト」について書いてみたいと思います。
日本高血圧学会減塩委員会が
厳選した「減塩食品リスト」公開
日本高血圧学会における減塩関連の取組みは、学会内に組織された「日本高血圧学会減塩・栄養委員会」が中心となって進められています。
当学会減塩・栄養委員会は、全国に推定4300万人はいるとされる高血圧および高血圧性疾患で実効性ある減塩をめざす患者等に、栄養バランスがよく、しかも美味しい減塩食品を届けようと、2013年6月から、「JSH*減塩食品リスト」を学会のホームページで公開しています。
減塩食品は、ただ食塩の含有量が少なければそれでいいというものではありません。栄養バランスがよく、しかも美味しく食べられることに加え、確かな減塩効果を期待できることが必須条件となります。
これらの条件を満たす減塩食品を選ぶ際の重要なポイントとして、当学会減塩・栄養委員会は以下の8点をあげ、広く一般に注意を喚起しています。
減塩食品を選ぶうえで知っておきたいこと
- 栄養成分表に表示されている「食塩相当量」と「ナトリウム(Na)量」はイコールではないことを理解しておく「ナトリウム量(㎎)×2.54÷1000=食塩相当量(g)」
- 加工食品のパッケージに表示された数値には誤差があることを覚えておく(表示には±20%の誤差が許されている)
- 食塩相当量(ナトリウム量)が低いという表示の意味を理解しておく
「無塩」など「含まない」旨の表示のある食品100gあたりの食塩相当量は0.127g未満「低塩」など「低い」旨の表示がある食品100gあたりの食塩相当量は0.3g以下
「減塩」など「低減された」旨の表示は食塩の低減量が100gあたり0.3g以上
しょうゆの「うすしお」「うすあじ」の表現は食塩の含有量が低いことを意味しているわけではない。しょうゆについて減塩表示を行う場合は、「減塩」の条件を満たしたうえで、標準的なしょうゆに比べ食塩の低減割合が20%以上であることが定められている - 減塩率はあくまでも目安に過ぎないことを理解する
- 食品を減塩にすると保存性は低下し(日持ちが悪くなる)、味にも影響するため、特にチルド食品等は賞味期限に十分注意する必要がある
- 食品のパッケージにあるアレルギー表示も忘れずにしっかりチェックする
- 減塩食品の品質は年々向上しており、まずいものばかりではなく、美味しい減塩食品も数多くあることを知っておく
- 従来の食品を全面的に減塩化することにより、減塩の対照(減塩してない標準の食品)がなくなってしまったり、日本食品規準成分表にその分類がないために、減塩表示することができない減塩食品があることを理解しておく
減塩食品は高血圧に対して万能ではない
日本高血圧学会減塩・栄養委員会は、上記の点に配慮したうえで、幅広い領域の食品から、標準的な食品との比較で減塩率が20%以上の優良食品、108製品(2024年4月末日現在)を選択し、「JSH減塩食品リスト」に掲載してホームページで紹介しています*¹。
そこでは、減塩食品は高血圧に対して必ずしも万能ではないことを念頭に、特定の食品に偏ることなく、常に栄養バランスを考えて選択するよう促しています。
なお、日本高血圧学会減塩・栄養委員会による『減塩のすべて: 理論から実践まで』の巻末に「JSH減塩食品リスト」が添付されています。
リストの中には「イチビキ レトルト食品 毎日減塩おかず 4種20食 お惣菜 」のような毎日の食事に使えるおふくろの味もあります。「きんぴらごぼう」「ひじき煮」「切り干し大根」など、いずれも減塩に加えて腸活効果も期待できる総菜です。是非一度試してみてください。
減塩に貢献している食品に
「JSH減塩食品アワード」を授与
繰り返しになりますが、減塩食品は、必要な栄養素を過不足なく摂ることができ、しかも味の面でも飽きられることなく長続きするものでないと意味がありません。そのため減塩食品には、概ね以下の2点が最低条件として求められます。
- 製品のパッケージに食品の栄養成分表が明記されている
- 長く食べ続けるために味を工夫してあり、美味しさがあること
日本高血圧学会減塩・栄養委員会が公表している「JSH減塩食品リスト」には、上記の条件を満たす減塩食品がリストアップされているわけですが、そのなかには、企業努力により市場に多く出回り、多数の消費者から支持されている食品が数多くあります。
そこで、この減塩食品リストが100品目に達した2015年5月からは、これらの人気が高く良質な減塩食品のなかから、減塩を必要としている人々の減塩化にとりわけ大きく貢献している製品を選りすぐり、日本高血圧学会減塩・栄養委員会が「JSH減塩食品アワード」を授与する制度をスタートさせています。
2015年5月の「第1回JSH減塩食品アワード」では、【減塩】塩分50%カット 味の素 KK やさしお やヤマキ 減塩だしつゆ 、ヤマモリ 減塩でおいしいとり釜めしの素 など18製品が、翌年の「第2回JSH減塩食品アワード」ではおなじみの「味の素 お塩控えめの ほんだし 」をはじめとする11製品等、これまでに54製品が受賞しています。
その後の受賞食品はすべて日本高血圧学会のホームページ*²でみることができます。是非一度チェックしてみてください。
なお、加工食品に含まれている「隠れ塩分」についてはこちらを一度読んでみてください。
参考資料*¹:日本高血圧学会「JSH減塩食品リスト」(2024年4月現在)
参考資料*²:日本高血圧学会「さあ、減塩」