湿疹はないのに体のかゆみが強いときの対処法

皮膚のケア

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何もできていないのに
体のあちこちがかゆいとき

「このところ、湿疹のようなものは何もできていないのに体のあちこちがかゆくてしかたないと外来を訪れる患者さんが増えているんですよ」

そう話してくれたのは、懇意にしていただいている皮膚科医です。なかには「全身いたるところがかゆくなり、夜中に目が覚めて眠れなくなることもある」と訴える方もいて、それは圧倒的に高齢の患者さんに多いとも――。

原因は、皮脂(ひし)、つまり皮膚から分泌される脂分(あぶらぶん)の減少に室内の湿度の低下(理想の湿度は40〜60%)が重なって起こる皮膚の乾燥とのこと。医学的には「皮脂欠乏性皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)」と呼ばれるれっきとした病気で、「老人性乾皮症(かんぴしょう)」とも呼ばれるそうです。

皮膚のうるおい成分である皮脂や汗の分泌は、年齢を重ねるにつれて減少してきます。皮脂や水分が減って乾燥した皮膚(ドライスキン)は、外からの刺激にいつも以上に敏感になり、その刺激をかゆみとして感じるのだそうです。

「皮膚をいたわってあげればかゆみは比較的簡単に和らぐ」そうで、その方法をお聞きしましたので紹介しておきたいと思います。

なお、コロナ禍のストレスなどの影響が長引き、湿疹を伴う皮膚のトラブルの代表とも言える帯状疱疹(たいじょうほうしん)に悩まされている方が増えているとも聞きます。気になる方はこちらを読んでみてください。

新型コロナウイルスのワクチンでお馴染みの米製薬大手ファイザー社が新しいタイプの帯状疱疹ワクチンの開発に着手との報が流れた。折しも、高齢者を中心に帯状疱疹で受診する患者が増えているとのこと。どんな病気で予防のためのワクチンは?

お風呂好きの高齢者に多い
皮脂の欠乏による体のかゆみ

湿疹はできていないのに体がかゆくなる皮脂欠乏性皮膚掻痒症は、特にお風呂好きな方で、あかすりのナイロン製タオルなどで体をよくこする方に起こりやすいそうです。

皮膚を覆っている皮脂は加齢とともに少なくなっていきますから、ある程度歳をとったら、皮脂をあまり洗い落さないほうがいいわけです。それなのに、入浴する度に体をゴシゴシこすって皮脂を洗い流していると、皮膚の乾燥が進み、背中やお腹、太ももなど、肌着で擦れるところを中心に、広範囲のかゆみに悩まされることになるのだそうです。

タオルなどで体をゴシゴシこするのはNG

お風呂好きで、毎日熱いお湯に長い時間つかっているとか、乾布摩擦を習慣にしている、あるいはタオルなどでゴシゴシ洗わないと気が済まないという方は、それをやめて、少なくなっている皮脂を大切にしたほうがいいとのこと。

私たちの体は、普通に生活しているぶんにはそんなに汚れるものではありません。皮膚を保護してくれる皮脂を守るには、毎日入浴する必要はないという説もあるようですから、毎日の入浴が欠かせない方は、洗わずにお湯につかるだけでもいいのです。

「汗のにおいがするとか汚れが気になるようなときは、少量の石けんを泡立てた手で洗うだけで十分清潔は保てるものです」と皮膚科医は話します。

ナイロン製タオルは、やわらかい綿や絹といった自然素材のタオルに替え、石けんをよく泡立ててからこすらないように洗うのがコツだそうです。

少なくなっている皮脂を
保湿剤で補い、かゆみを抑える

加齢とともに皮脂が少なくなり皮膚の乾燥が気になってくると、不足している皮脂を補おうと保湿剤を使いたくなります。この「保湿剤」には、街の薬局などで購入できるものと皮膚科医による処方薬とがあります。

皮膚科を受診して医師に処方してもらえば、薬代は医療保険の自己負担分(1~3割)だけですみます。市販薬の保湿剤は数多く市販されていて、価格もいろいろで迷うところですが、高価なものほど香料など皮膚を刺激するものが入っています。

皮脂を補うには純粋な油だけでできている保湿剤がよく、処方薬、市販薬ともに、白色ワセリン、馬油(ばーゆ)、スクアレン(スクワレン)オイルがいいそうです。

このうちスクアレンオイルのスクアレン*は、もともと私たちの皮膚を覆っている皮脂の主成分の一つですから、皮膚への刺激が少ないうえにベタベタ感がなく、サラッとした感触で使い心地もよく、お勧めとのこと。たとえばスクワランオイル 無添加などはいかがでしょう。

*スクアレンは、サメ類(特に深海ザメ)の肝臓から抽出・精製したオイル(不飽和脂肪酸)の一種。

保湿剤は入浴後に
擦り込まず薄く広げる

保湿剤を使う場合は、入浴後の寝る前に塗るとより効果的です。その際は、皮膚を濡れたままにしていると水分の蒸発量が増して乾燥が進むため、浴室から出たら素早く水分を拭き取ってから保湿剤を塗るといいでしょう。

その塗り方ですが、保湿剤を手にとり、かゆみの出やすいところを中心に体の数カ所に保湿剤を置き、擦り込まずに手のひらでていねいに薄く広げるのがポイントです。くれぐれも保湿剤は塗りすぎないこと。塗ったあとにティッシュペーパーが皮膚に軽くくっつく程度、もしくは皮膚がこころなしかテカる程度が適量の目安です。

なお、一人暮らしの方などで「背中に保湿剤を塗れずに困っている」という方もいるでしょう。そんな方は、 軟膏ぬりちゃん を試してみてはいかがでしょうか。

肌着類は木綿ものを選び
皮膚への刺激を避ける

皮脂が少なくなった皮膚を守るには、刺激を避けることも大切です。まずは肌に直接触れる肌着(下着)類ですが、ウールや化学繊維ものはチクチクと皮膚に刺激を与えてかゆみの原因となりますから、自然素材の木綿や絹ものがおすすめです。

かゆみがあると無意識にかいてしまいます。特に睡眠中はそのリスクが高いことを考え、爪は常に短くカットし、やすりをかけてなめらかにしておくことです。

また、背中など、自分の手が届かないところをかくのに「孫の手」を愛用されている方は、孫の手の先端部分にガーゼを巻くなどして、やさしくかくようにするといいでしょう。

糖尿病など全身性疾患のある方のかゆみ

なお、糖尿病とか慢性の腎疾患や肝硬変のような肝疾患など、全身性の慢性疾患があると、皮膚自体に異変はなくてもかゆみが出てくることがあります。そんなときのかゆみの対処法は、病気との関連もみる必要がありますから、かかりつけ医に相談するようにしてください。