フリーズドライ食品を利用したいが栄養は?

スープ

主食も副食も多彩化が進む
フリーズドライ食品

新型コロナウイルスは、なかなか終息しそうにありません。

共存を余儀なくされる「ウイズ(with)コロナ」の生活では、食料品の買い出しにも自粛が求められる日々ですが、食生活の充実は、免疫力を低下させないためにも重要です。

そこで、日持ちがよく鮮度も栄養価も失われない冷凍食品を上手に活用してはどうか、といった話を先に書かせていただきました。

コロナ感染者が増加傾向にあり、第9波が懸念されるなか、免疫力アップのためにも食生活の充実を図る秘訣の1つとして、保存性が高く、栄養価も高い冷凍食品を上手に活用することを提案したい。素材のもつ栄養分を最大限活かす健康的な利用法をまとめた。

この記事を読んでくれた知人から、昨夕、こんなメールが届きました。

「冷凍食品もいいけど、フリーズドライの食品は栄養的にどうなのかしら。最近はみそ汁やスープ類だけでなく、そのまま主食にできるフリーズドライ食品もあるけど……」

これについては、実は私も気になっていたことです。

そこで、ちょっと調べてみましたので、わかったことを書いてみたいと思います。

凍結、乾燥させて
栄養を封じ込めている

知人のメールにあったように、最近のフリーズドライ食品には、カレーパスタもあれば、親子丼、中華丼といったご飯ものもあり、驚くほど多彩になってきています。

かつての非常食のイメージをはるかに超え、ウイズコロナの今こそ毎日の食事に活用したくなりますが、やはり気になるのは「栄養的にはどうなのか」です。

ところで、フリーズドライとは、食品を「フリーズ」、つまり凍結させたままの状態で「ドライ」、つまり乾燥させる製法です。

具体的には、前処理や調理した食品や食材をマイナス30度程度の超低温で冷凍します。

その凍らせたままの食品を真空凍結乾燥機と呼ばれる機械に24時間以上入れ、減圧して真空に近い状態にして、乾燥させた食品のことです。

乾燥させると言っても、食品に高い温度を加えるわけではありません。

そのため、急速凍結により栄養を封じ込めますから、素材が加熱による影響を受けないのが特徴で、食材の香りや風味もそのままに、また熱に弱いことで知られるビタミン類なども損なわれにくくなっています。

フリーズドライ製法により
常温で長期保存可能に

フリーズドライ食品には保存料が一切使われていないのも、安心材料です。

保存料を含まない食材を常温で保存していると、日が経つにつれて腐敗が始まります。

これは、食材に水分が含まれているためです。

水分が、物を腐敗させる細菌やカビなどの微生物が食材内で生存するのを手助けするばかりか、増殖を促進して微生物を増やしてしまうのです。

しかし、フリーズドライ食品は、乾燥させて水分を抜き取っています。

一般に、フリーズドライ食品の水分含有量は5%以下に抑えられいるようです。

そのため、水分不足の状態に置かれる食品中の微生物は、生存しにくく、また繁殖も抑えられますから、常温でそのまま保存していても腐敗する心配がないというわけです。

フリーズドライ食品と
乾物類や干物との違い

昔から長期保存が可能な食材としては、乾物(かんぶつ)があります。

切り干し大根、干しシイタケ、高野豆腐、乾燥ワカメ、煮干し、かつお節といったところがお馴染みでしょうが、これらの乾物類も、乾燥させて、カラカラになるまで水分を抜き取っていますから、常温で長期保存が可能なのです。

昔ながらの保存食である「乾物」の手軽な食べ方と、日本医師会も薦める太陽のチカラでパワーアップした栄養素について紹介。乾物は水かぬるま湯で戻して使う物。加熱して食べる食材――との思い込みを捨て、加熱不要の調理法で毎日の食卓に1品を。

最近では、若い女性の間でダイエットにいいからと、あるいは美肌効果も期待できると人気のドライフルーツ(乾燥果物)が各種市販されています。

天日干しのものもあればフリーズドライ製法で乾燥させたものもあるようですが、いずれも乾燥により保存性が高められ、栄養分も濃縮されていて、生のままの果物類より食べやすいのが人気を集めているようです。

ただし、天日干しして作るアジなど魚類の干物はちょっと違います。

身の部分の柔らかさと味を損なわないために、ある程度の水分を残していますから、常温保存では微生物が増殖して腐るリスクがあり、冷蔵保存が必要となります。

宇宙食にも採用されている
フリーズドライ食品

フリーズドライ食品は、お湯を注いで凍結乾燥前の状態に戻していただきますが、最近は、水で戻しても食べられるフリーズドライ食品もあるようです。

この、「お湯、あるいは水を注いで混ぜるだけ」といった手軽さに加え、以下の点が評価され、多くの宇宙食にフリーズドライ食品が採用されていることは、すでにご承知のことと思います。

  1. 常温で長期保存しても品質の変化が少ないこと
  2. 軽量であること
  3. 栄養価が優れていること
  4. 賞味期限が長いこと

賞味期限と保管方法は?

このうち「4」の賞味期限については、個々のパッケージに表示*されていますが、多くの場合、数か月から数年と長めに設定されているようです。

このように賞味期限が長いのは、フリーズドライ製法により、水分を抜き取っているため、食品が腐敗しにくいうえに、成分変化が起こりにくいからです。

そのためフリーズドライ食品に消費期限はありません。

ただし、保存方法によっては、食品の劣化が進むこともあり、「直射日光を避ける」「高温の場所を避ける」「パッケージが破損しないようにする」などの注意が必要です。

だからと言って、冷蔵庫に保存する必要はありませんが、パッケージが破損したり、一度開封したものについては、酸素に触れて酸化が進み、味が劣化するなどのリスクがありますから、早めに食べる必要があります。

*「食品表示法」で決められているパッケージに表示すべき項目
名称・原材料名・アレルギー(卵、乳成分、小麦、落花生、そば、えび、かに)・添加物・原料原産地名・内容量・期限表示(賞味期限・消費期限)・保存方法(摂取する上での注意事項を含む)・食品関連業者・製造所・栄養成分表(熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量の5項目は必須)

参考資料:農林水産省「フリーズドライ食品」