「せん妄」は必ずしも「認知症」ではありません

わからない

高齢者に多い「せん妄」は
「強い寝ぼけ」の状態

「せん妄(せんもう)」という言葉をご存知でしょうか。

高齢の方にしばしばみられる症状ですが、年齢や病気の有無に関係なく、おそらく誰もが一度はよく似た症状を経験しているはずです。

たとえばあなたは、風邪などによる高熱でダウンして終日寝込み、ふと目覚めたときに今は朝なのか昼なのか、自分はどこにいるのかわからず、不安になって頭が混乱したという経験はないでしょうか。

わかりやすく言えば、体は一応起きているのに、頭は半分眠っているという、いわゆる「寝ぼけ」の強い状態です。

特に高齢の方では、痛みなどの苦痛があったり、不慣れな環境に身を置いたりすることが、せん妄状態に陥る原因となります。

不安や恐怖から訳のわからないことを言ったり、周囲の状況が飲み込めずにボーッとしていて話しかけても答えてくれない様子から、家族などは「もしかして認知症?」と考えがちです。

しかし、せん妄と認知症は必ずしも同じではないという話を書いておきたいと思います。

せん妄と認知症は
症状の現れ方が違う

せん妄とは、何らかの原因により脳の機能が一時的に低下することにより、一種の意識障害をきたしている状態と説明されています。

意識レベルが低下するため、場所や時間の感覚が鈍くなったり、話のつじつまが合わなかったり、落ち着きがなくなったりします。

このような症状は、日中は比較的穏やかに過ごしているのに、夜になると興奮して大声を出したり、不可解な行動をとったりするといったように、症状の現れ方に日内変動がみられます。

つまり1日のなかで症状に強弱があるのがせん妄の特徴です。

認知症症状には日内変動がない

一方で認知症は、もともと正常に発達し、問題なく機能していた脳の知的機能、すなわち物事を記憶したり、自分の置かれている状況を理解するといった「認知する能力」が持続的に低下し、意識障害がないにもにもかかわらず日常生活に支障をきたす状態です。

認知症による症状は、せん妄のように、症状が急に現れることはありません。

徐々に症状が進行するのが認知症の特徴で、せん妄のように、1日のうちで症状が良くなったり悪くなったりすることもありません。

なお、認知症が気になる方は、「認知症簡易チェックサイト」にアクセスしてご自分でチェックしてみてはいかがでしょうか。

→ 認知症が心配ならチェックサイトで確認を

せん妄が起こる原因に
体調の変化や薬剤も

せん妄の原因としては、引っ越しや入院、高齢者施設への入所といった環境の変化によるストレスが高リスク要因となります。

また、感染症や心不全、腎不全といった全身性の病気や脳梗塞などの脳血管障害、さらにはそれらに伴う痛みなどの苦痛、脱水、あるいはそれらの治療に使用される薬剤などが誘因となってせん妄を引き起こすことも珍しくないようです。

せん妄を招きやすい薬剤の主なものとしては、抗コリン薬、抗パーキンソン病薬、抗不安薬、抗うつ薬、睡眠薬など広範囲に及ぶことが指摘されています。

意外なところでは、度が合っていないメガネを使用していたり、難聴があるのに補聴器を使用していないことが原因でせん妄が起こることもあるようです。

せん妄状態にあるときは
納得が得られるように話す

せん妄により「自分は今どこにいるのか」「なぜここにいるのか」「何をされているのか」などがわからず混乱している方を目の前にすると、とかく私たちは、居場所やそこにいる理由などを説明してわかってもらおうとしがちです。

しかし、せん妄状態にある方は、言われていることに興味が持てないのです。

そのうえ、意識を集中して相手の話を聞くことができませんから、聞き流してしまうか、かえって不安が高まり、興奮状態になることもあります。

起きぬけで、まだ頭がすっきり目覚めていないのにいきなり話しかけられて戸惑った経験を思い起こしてみればおわかりになるでしょう。

このような状態にある方には、少しでも安心感を与えられるよう、そばにいて相手の言うことを否定して説得するのではなく、納得が得られるようにゆっくり語りかけるようにすると落ち着いてくることがあります。

一度専門医の診察を受けておく

そもそもせん妄には、個々それぞれに原因があります。

体調に異変があるというサインのこともあれば、新しく処方された薬が原因だったり、生活リズムの変化が誘因になっていることも考えられます。

いずれにしても本人にとって負担になっていることが起きていると考え、かかりつけ医に相談のうえ、精神科医など専門医の診察を受けてみることをおすすめします。

その際は、せん妄の予防法やせん妄状態になったときの家族としての接し方についても、詳しく聞いておくことをお忘れなく。

なお、せん妄が認知症の症状として現れることもあります。

このところ「うっかり」や「物忘れ」が多くなり認知症が気になっているという方は、一度こちらを読んでみてください。

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