睡眠時無呼吸症候群の検査が自宅でできる

眠っている

睡眠中の無呼吸に気づいたら
自宅で簡易検査を

睡眠中にいびきをかいていることは、いびきを検出してくれる睡眠アプリでも活用しないと、自分ではなかなか気がつけないものです。

一方、隣で寝ているパートナーのいびきで夜中に目が覚めてしまう、といったことを経験している方は少なくないと思います。

そんなときは相手の体をちょっとゆすって目覚めさせ、いびきを止めようとしがちですが、少し冷静になり、いびきの状態を観察してみてはどうでしょう。

いびきのリズムが乱れ、呼吸が浅くなったり、数秒間呼吸が止まる、いわゆる「無呼吸」が繰り返されるようなら「睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)」という病気が疑われます。

そんなときは、自宅で簡単にできる睡眠時無呼吸症候群かどうかを判断するためのスクリーニング(ふるい分け)検査をやってみてはどうか、といった話を書いておきたいと思います。

睡眠時無呼吸症候群の
スクリーニング検査

睡眠中に、仮に数秒間だけでも呼吸が止まるということは、その止まっている間は体に新たな酸素が送り込まれないということです。

いったん無呼吸になって直ぐに呼吸が戻っても、無呼吸の状態が繰り返し続けば、血液中の酸素濃度は低下しますから、いっときとはいえ、体が酸欠状態に陥るということです。

睡眠中にこの状態が繰り返されると、本人は無意識のうちに、心臓や肺、そして脳にも過度の負担をかけることになりますから、不整脈や高血圧、脳卒中、さらには心不全*につながることにもなりかねません。

大事(おおごと)になる前に睡眠中の呼吸状態を調べる検査を受け、結果によっては迷わず治療を始める必要があります。

ところがこれまでは、この検査のために一晩入院しなくてはなりませんでした。

それが最近では、在宅療養中で外出するのはなかなか難しいといった方でも、自宅で手軽に簡易検査を受けられるようになっているのです。

*心不全とは、心臓の一番大事な機能であるポンプ機能が低下して、必要なだけの血液(栄養分や酸素)を全身に送り届けることができなくなる状態をいう。組織の栄養不足や酸素不足から、動悸や息切れ、息苦しさなどを自覚するようになる。詳しくはこちらをご覧ください。
心不全については、あらゆる心臓病の終末像として説明されることが少なくない。しかし、心不全が仮に慢性化するようなことがあっても、専門学会作成の「心不全手帳」を活用してセルフケアを徹底すれば、悪化にブレーキをかけることはできる。この手帳の概要を紹介する。

睡眠時無呼吸症候群に
なりやすいのはこんな方

ところで、睡眠時無呼吸症候群は、空気の通り道である上気道(のどの上の部分)が狭く、ふさがりやすくなることが原因で、睡眠中に無呼吸、あるいは呼吸が止まりかけるような浅い呼吸を繰り返す病気です。

睡眠時無呼吸症候群は肥満と深く関係しています。

肥満している方には首の太い方が多いのですが、首回りの皮下脂肪が厚いと、そのぶん上気道が狭くなりますから、無呼吸になりがちなのです。

肥満していなくても、「顎が小さい」「下顎が後退している(内側にひっこんでいる)」「扁桃腺が肥大している」「舌が大きい」「鼻炎や鼻中隔湾曲など鼻の病気がある」方などは、上気道がふさがりやすく、睡眠時無呼吸症候群のリスクがあると考えられます。

また、閉経後の女性は閉経前に比べ睡眠時無呼吸症候群のリスクが高くなるのですが、いびきを伴わないことが多いため、見過ごされやすいと言われています。

日中の眠気や集中力の低下は睡眠時無呼吸のサインかも

いずれの原因にしても、睡眠中に無呼吸を繰り返していると、どうしても眠りが浅くなって熟睡できないため、「日中に強い眠気に襲われ」集中力も低下してきます。

睡眠時間はしっかりとれているはずなのに、一日中わけもなく体がだるく、やる気が出ない、起床時に頭痛がするといった症状が現れることもあります。

このような症状を自覚している方は、睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査を受けてみることをおすすめします。

睡眠中の無呼吸による
血中酸素飽和度の低下を測定

そこで紹介しておきたいのが、自宅でできる睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査です。

その検査方法は何種類かあるのですが、最もポピュラーで簡単なのは、新型コロナウイルス感染症に関連して一般の方にもすっかりおなじみとなった「パルスオキシメーター」と呼ばれる検査キットによる方法です。

パルスオキシメータ―は、洗濯ばさみのようなモニターセンサーを指先につけて、血液中の酸素の状態(動脈血酸素飽和度)や脈拍数などを測定(モニタリング)して、睡眠中の無呼吸や低呼吸を予測する医療機器です。

血液中の酸素飽和度は通常98~100%です。

ところが、睡眠中に無呼吸や低呼吸があると酸素が十分取り込まれないため、酸素飽和度が70%あるいはそれ以下に下がってしまい、逆に脈拍数は上昇するのです。

このパルスオキシメータ―と鼻先に装着したカニューラ(鼻センサー)を介して、鼻から出る気流やいびき音から呼吸状態をモニタリングする検査キットがセットになった簡易検査用装置もあります。

イビキや睡眠の専門外来から
検査装置を借りられる

睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査に必要な装置は、「いびき外来」とか「無呼吸外来」など、いびきや睡眠時無呼吸症候群の専門外来などで貸し出してくれますから、かかりつけ医に相談してみるといいでしょう。

かかりつけ医のいない方は、最寄りの専門外来をこちら*¹で検索することができます。

いずれの検査装置も、装着して眠りにつき、翌朝、起床時に外して借りた外来に返却すると、データを解析し、睡眠時無呼吸症候群の可能性があるかどうかを診断してくれます。

測定データを解析した結果によっては、さらに精密な検査が必要になることもあります。

その場合は、一晩入院し、脳、眼瞼、胸部、腹部などにセンサーをつけて睡眠中の眠りの質や換気状態を評価する検査を受けることになります。

気になる費用は

なお、いずれの検査も健康保険が使えますから、検査費用はあなたの自己負担分の3割、あるいは2割か1割ですみます。

睡眠時無呼吸症候群の治療は、重症度に応じて行われ、軽症であればマウスピースを睡眠中に装着する方法がとられます。

「睡眠時無呼吸症候群を自分で治す方法」がネット上でさまざま紹介されていますが、悪化させないためにも、やはり一度はきちんと専門医の診察を受けることをおススメします。

検査の結果無呼吸がかなり重症だと判断されると、すぐに持続陽圧呼吸療法(CPAP)*と呼ばれる治療へと進むことになります。

*持続陽圧呼吸療法(CPAP;シーパップ)とは、睡眠時に装置につながったマスクを鼻に取り付け、装置により加圧された空気を気道に持続的に流すことで気道を広げて無呼吸を防止する治療法。保険診療として認められていて、装置の貸し出しを受けて自宅で治療することもできる。すぐにイビキや無呼吸がなくなるわけではないが、日中の眠気や集中力の低下などの改善に役立つ。

参考資料*¹:無呼吸なおそう.com「全国の医療機関一覧」