電子レンジは正しく使えば健康被害の心配はない

料理

「電子レンジは体に悪いから」と
思い込んでいる姑を安心させたい

ウイズ(with)コロナ、つまり誰もが新型コロナウイルスとの共存を余儀なくされている今、感染対策の徹底と食生活の充実を両立させていく手段の1つとして、冷凍食品を積極的に活用してはどうだろうか、といった記事を先に書きました。

この記事を読んでくれたという長年の友人から、SOSとも愚痴ともとれるトーンの、少し長めのメールが届きました。

同居を始めて間もない70代のお姑さんが、極度の電子レンジ嫌いで、解凍に電子レンジを使うことになるから冷凍食品は絶対やめてほしい、と言われるのだと――。

「電子レンジの電磁波は体に悪い、と思い込んで嫌っているようなのです。電磁波は電波であって放射性物質ではないことや、電源を入れないと電磁波は出ないし、使用中も電子レンジから電磁波が漏れ出ることもないから健康被害の心配はないことを繰り返し説明するのですが、なかなか納得してもらえません」

とはいえ、コロナ禍のうえに夫婦共働きの身とあっては、冷凍食品に頼らざるをえない部分が多いため、なんとか電子レンジを使うことに了解を得たいのだが、姑にも安心してもらえる方法はないだろうか、というのがメールの主旨でした。

電子レンジで使う電磁波は
スマホ等の通信用電波の仲間

友人のお姑さんのように「電子レンジは体に悪い」と信じ込み、「わが家では絶対使わない」とおっしゃる方が結構おられるようです。
時たまSNSなどでそんな記事に出合うこともあります。

そんな方々に誤解を解いてもらうには、誤解の一つひとつにエビデンス、つまり科学的な根拠をお伝えしつつ、納得してもらうのがいちばんだろうと思います。

そこでまず、「電子レンジから電磁波が漏れ出て、その電磁波が体に悪い影響を与える」といった誤解からクリアしたいと思います。

この種の誤解は、電子レンジで使用する電磁波を、たとえば病院などで放射線治療に使っている放射性物質(いわゆる「放射能」)から放出される放射線と混同していることに起因している場合が多いようです。

確かに電子レンジは、加熱のための熱を発生させるために、電波の一種である「マイクロ波」と呼ばれる電磁波を使用しています。

このマイクロ波は、周波数こそ違いますが、私たちの生活に身近なスマートフォンなどの携帯電話やGPS、無線LAN、地デジや衛星等のテレビ放送といった通信にも使われています。

メーカーの取り扱い説明書に従って適正に使用してさえいれば、健康にマイナスの影響を与える心配がないからこそ、現代生活の必需品として定着しているのです。

インターロック安全装置により
電磁波が外に漏れない設計に

マイクロ波のような電磁波は、部屋の電灯と同じで、電源を切ると消えてしまいます。
電子レンジで言えば、電源をOFFにしている間はマイクロ波は発生しません。
また、電子レンジの庫内や加熱し終えた食品にマイクロ波が残ることもありません。

電子レンジのスイッチをONにした稼働中は、レンジ庫内にマイクロ波が出ています。
しかし、電子レンジのガラス製の扉には、マイクロ波が外に漏れ出ないように網状のものを取り付けるなど、厳格な規制のもとに設計されていますから、電源を入れて稼働している間も扉がきちんと閉まってさえいれば安心です。

というよりは、インターロック安全装置といって、扉が少しでも開いていればマイクロ波が発生しないように設計されています。

そのため、メンテナンスをしっかりして使っている限り、電子レンジから漏れ出たマイクロ波を浴びる心配はないと考えていいでしょう。

扉の密閉シール材と外面に傷や破損がないことを確認

メンテナンスの方法としては、以下の2点を確認しておけば安心です。
⑴ 電子レンジの扉の密閉シール材に汚れや傷がないこと
⑵ 電子レンジ扉の外面に目につく傷や破損がないこと

電子レンジの扉や密閉部分に傷や破損等が見つかったり、扉の開閉や電源の入り方などになんらかの問題があるときは、直ちに使用を中止します。

そのうえで、取り扱い説明書に明記してあるサービスステーションや購入した電気店等に連絡し、適正な資格を有するサービスエンジニアに修理を依頼。
完全に修理しを終えるまでは、電子レンジの使用を控える必要があります。

このメンテナンスさえきちんと励行していれば、稼働中の電子レンジ周辺で健康被害を受けるような高レベルのマイクロ波は検出されないことが、実験で確認されています。

電子レンジで調理した食品の
健康リスクは否定されている

電子レンジの使用にまつわる誤解や疑問としてよく耳にするのが、電子レンジで加熱調理した食品の安全性、つまり健康リスクがあるのではないかといった懸念です。

この点については、WHO(世界保健機関)の国際電磁界プロジェクトチームが、「電磁界とと公衆衛生―電子レンジ」情報シート*¹のなかで、次のように明言しています。

「電子レンジで加熱調理された食品は、従来型オーブンで加熱調理された食品同様に安全であり、栄養価も同じです」

栄養価の面で言えば、電子レンジで使用するマイクロ波のエネルギーのほうが食品全体に熱が伝わる時間が短縮され、調理時間を短くすることができます。

結果として、熱に特に弱い水溶性ビタミン、具体的にはビタミンB群(B₁、B₂、B₆、B₁₂、ナイアシン、葉酸)やビタミンCの加熱による損失を少なく抑えることができますから、鍋やフライパンでゆでる、煮る、炒める、揚げるなどして加熱する時間と比較しても、電子レンジの方が時間短縮される分だけ栄養分の損失を防ぐことができます。

なお、これはマイクロ波による健康被害ではありませんが、電子レンジに記載されている出力(500W、600Wなど)に応じた加熱時間を守らないと、食品を包んでいるラップが溶けるなどの問題が発生することがあります。
くれぐれも電子レンジと食品の双方に明記されている注意事項を厳守することをお忘れなく。

参考資料*¹:WHO国際電磁界プロジェクト・情報シート「電子レンジ」