加湿器使用で気をつけたいレジオネラ感染

水滴

冬場の乾燥対策で必須
加湿器肺炎を防ぐレジオネラ対策

空気が乾燥するこれからのシーズンの、家庭など屋内における感染症対策で鍵となるのは、「加湿と換気」です。

日本が誇るスーパーコンピュータ「富岳(ふがく)」を使った実験により、「加湿器を使い室内の湿度を40%以上、できれば60~70%に維持し、かつ定期的に換気を行う」ことが、より効果的な感染対策であることが実証されています。

幸いなことに新型コロナは落ち着いていますが、インフルエンザ対策としても、冬場の室内における乾燥対策には、加湿器が欠かせません。

そこで、注意したいのが家庭用加湿器による細菌感染が原因で起こる「加湿器肺炎*」とりわけ「レジオネラ感染」です。

*加湿器肺炎とは、加湿器から放出されたカビなどを吸い込み、肺や気管支がアレルギー反応を起こして発症する肺炎のこと。通常は軽症だが、レジオネラ菌が原因の場合は深刻なこともある。

レジオネラ感染症による死亡例も

脅かすつもりはありませんが、加湿器が原因の「レジオネラ症」と呼ばれる感染症により、高齢者が死亡する事故が毎年のように何例か発生しています。

病院や施設内で使用していた加湿器のタンク内でレジオネラ属菌が繁殖し、空気中に拡散したことが感染の原因だったとメディアで大々的に取り上げられていますから、記憶しておられる方も少なくないと思います。

ただ、加湿器にはいろいろなタイプがありますから、すべての加湿器にレジオネラの感染リスクがあるわけではありません。

では、どのタイプの加湿器にそのリスクがあるのかも含め、加湿器が原因で起こる「加湿器肺炎」のひとつで、より深刻なレジオネラ症対策をまとめておきたいと思います。

加湿器のタンク内で
レジオネラ属菌が増殖

レジオネラ症とは、「レジオネラ属菌」によって引き起こされる細菌感染症です。発熱などが見られるものの、症状は一時的で、自然に治癒するタイプもあります。ただ、さほど多くはないのですが、なかには重症の肺炎を引き起こして、最悪、死に至るケースもありますから注意が必要です。

わが国では、感染症法上の四類感染症に分類されていて、レジオネラ症を診断した医師には、直ちに保健所に届け出ることが義務づけられています。統計としては、全国で毎年1000~1500人の患者が報告されています。ただ、レジオネラ属菌に曝露された人が必ずレジオネラ症にかかるわけではありません。

新型コロナウイルス感染症同様に、高齢者や呼吸器疾患等の持病があるなど、免疫力が低下している方は感染リスクが高いとされています。

レジオネラ属菌は、土壌中や池、沼、水たまりなどヌメリのある場所を中心に、自然界のあらゆるところで生息している常在菌(じょうざいきん)の1つです。一般に20~50℃で増殖しますが、人肌程度とされる36℃前後が最も増殖しやすいとのこと。家庭内で言えば、循環水を利用する追い炊き機能付きの浴槽を使用している浴室や常温水を用いる加湿器のタンク内では好んで増殖します。

乾燥しがちな時期の室内におけるコロナ対策に不可欠な加湿器にはレジオネラ感染のリスクがある。同様に、家庭の追い炊き機能付き浴槽も清掃を怠っているとレジオネラ菌繁殖の温床となりやすい、その予防に必要な清掃・消毒について書いてみた。

非加熱式加湿器から
噴霧されるエアロゾルで感染

この場合の加湿器とは、タンクに水道水を入れて、加熱することなく常温のままの水を超音波振動で空気中に霧状の水滴、いわゆるエアロゾルを噴霧させる「超音波式加湿器」です。

レジオネラ属菌は、60℃では約5分間で殺菌され、死滅します。そのため、水をいったん加熱して蒸気を発生させるスチーム式の加湿器では、レジオネラ症の感染源となる可能性は低いとされています。

しかし、加熱しない常温の水を使うタイプの加湿器では、タンク内でレジオネラ属菌が増殖するリスクがあります。その増殖したレジオネラ属菌に汚染されているエアロゾルを吸い込むことにより、レジオネラ症を発症するリスクが高くなるのです。

レジオネラ症は、ヒトからヒトへ感染することはありません。ただ、同じ室内でレジオネラ属菌に汚染された空気を一緒に吸っていると、家族そろって感染する可能性があります。それだけに注意が必要です。

超音波式加湿器以外に、フィルターに水を透過させ、ファンの風を当てて気化させる「気化式加湿器」でも、フィルターの洗浄を怠っているとレジオネラ属菌が繁殖するリスクがあり、定期的な手入れが必要。

非加熱式タイプの加湿器は
水を毎日換えてタンク内を清潔に

非加熱式タイプの超音波式加湿器を使用している家庭でレジオネラ感染を防ぐには、以下を励行することをおすすめします。

  1. タンクの水には水道水をそのまま利用する
  2. タンクの水は毎日完全に交換する
  3. 水を交換する際はタンク内をよく洗浄し、汚れやヌメリが生じないようにする
  4. 長時間使用しないときはタンク内の水を完全に抜き、汚れを取り除いて乾燥させておく

水道水に含まれる塩素の消毒効果を有効活用する

レジオネラの感染リスクを心配して、加湿器のタンク内に除菌剤などを入れることを考える方もいれば、浄水器や整水器の水を使う方も少なからずいるようです。

しかし、わが国の「水道水」には、安全性を確保するために塩素が含まれていて、塩素消毒が行われています。ですから、水道水にさらに除菌剤などを加える必要はありません。

レジオネラ対策に加湿器タンクの水は毎日取り換える

ただし水道水の塩素による除菌効果は、たった1日でなくなってしまいます。したがってタンクの水は、毎日の換える必要があります

水を変えるときにタンク内の汚れやヌメリが気になるときは、掃除用クエン酸水で洗浄するといいようです。ということで、ここで掃除用クエン酸水の作り方を紹介しておきましょう。

  • 市販のスプレーボトルに水1カップ(200ml)に対して小さじ1杯(5g)の割合で市販のクエン酸を入れてから、よく混ぜる
  • このとき少しぬるめのお湯を使うとクエン酸が溶けやすい
  • 作ったクエン酸水は日持ちが悪い(そのまま置くと水アカが発生してアルカリ性になってしまう)ため、1週間以内に使い切る

家庭内の掃除には重曹もよく使われますが、重曹はアルカリ性です。ヌメリのような水アカはアルカリ性ですから、その掃除には酸性のクエン酸がおすすめです。

また、浄水器や整水器は、活性炭などの濾過(ろか)作用や電気分解により、水道水にもともと含まれている塩素をブロックしてしまいますから、この水を加湿器のタンク水として使うのは、レジオネラ感染対策上むしろ逆効果です。

水道水をそのまま使い、水を毎日忘れずに取り替えることと、適宜タンク内の清掃を行うのが、タンク内におけるレジオネラ属菌増殖によるレジオネラ感染を防ぐには最もリーズナブルな方法です。

参考資料:厚生労働省Webサイト「レジオネラ症」