コロナ禍で増えたアルコール依存症と休肝日

ワイン

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厚生労働省は2024年2月19日、飲酒に伴う健康へのリスクを示した初のガイドライン(指針)を発表。そのなかで、たとえば大腸がんの発症リスクを高める純アルコール量の目安は、1日当たりビールロング缶1本に相当する約20g(週150g)以上、などと例示。また、高齢者は体内の水分量の減少などで酔いやすく、一定量を超えると認知症が発症する可能性が高まるともしています。詳しくはこちら

コロナ禍による孤独感で
飲酒量の増加と依存の問題が

新型コロナウイルス感染症は今のところなんとか沈静化しています。ただ、思えば「3密の回避」に象徴される感染対策の長期化は、私たちの健康面、とりわけメンタル面にさまざまなかたちでマイナスの影響をもたらしました。

ストレスやうつ病の増加がその代表例でしょうが、孤独感を紛らわすために、ゲームに没頭したり、飲酒量が増加するなど、好ましくない習慣が「依存」という問題に発展しやすいことも指摘されています。

依存症に陥りやすい習慣はいくつか指摘されていますが、今回は、そのなかで最も身近なアルコールについて、悪しき習慣が「アルコール依存症」に発展しないためにはどうしたらいいか、留意すべき点を改めてまとめておきたいと思います。

2021年3月、政府は適正飲酒啓発のため、従来のアルコール度数「〇%」の表記に加えて、純アルコール量についても、ビール缶などに「〇グラム」と表示することをアルコールメーカーに求めています。
要請を受けた各社は、まずはホームページにて表示し、順次各商品に表示していく方針であることを公表。実際、主力メーカーのサントリーはホームページにて、缶製品の純アルコール量から開示しており、たとえば「ザ・プレミアム・モルツ」の350ml缶には、「アルコール度数5.5%」「純アルコール数(350mlあたり)15.4g」と明示してあります。

飲酒量の増加に伴う
アルコール依存症を懸念

わが国で新型コロナウイルスの感染第2波の予兆が出始めた2020年6月初旬、依存などの問題に取り組む「日本アルコール関連問題学会」が、「コロナウイルスの感染拡大に伴う依存症のリスクに関する注意事項」と題する学会声明を、公式ホームページで公表していました*¹。

そこでは、アルコールについて、テレワークを活用した在宅勤務の導入などによる在宅時間の延長やオンライン飲み会の普及等に加え、「不況による経済不安やステイホームによる孤独感を紛らわすための手段として、飲酒量が増加し、それに伴う飲酒問題が生じることが懸念される」と指摘。そのうえで、飲酒する際は、以下の点に留意するよう促しています。

  1. 節度ある適度な飲酒を心がける
  2. 飲み過ぎの人は減酒を検討する
  3. 今まで飲酒する習慣のなかった人が、新型コロナウイルス感染拡大に伴う不安の解消や退屈しのぎに飲酒を始めるようなことはしない
  4. 飲酒に感染の予防効果はなく、むしろ酩酊して手洗いなどの感染予防策が疎かになり感染リスクを高めることを念頭に、飲酒する際には、いつも以上に感染予防を意識する
  5. 妊婦や未成年者、運転手は飲酒しない
  6. 日中の飲酒は、飲酒量の増加につながりやすく、酩酊に伴う転倒などのリスクも高くなる。また、在宅勤務者は仕事の効率低下やミスにもつながりやすいため、避ける
  7. アルコールの分解速度には個人差がある。飲酒した翌日に運転する際は、アルコール呼気チェッカー*なども利用して飲酒運転にならないように注意する

*アルコール呼気チェッカーとしては、タニタ アルコールチェッカー などがある。

節度ある適度な飲酒で
アルコール依存症を予防する

上記留意点の「1」にある「節度ある適度な飲酒」と「2」の「飲み過ぎ」については、アルコール健康医学協会が推奨している「適正飲酒の10か条」*²が参考になります。

10か条のうち第2条では、「食べながら適量範囲でゆっくりと」と促しています。この「適量範囲」については、アルコールの代謝能力には個人差があり、同じ量を飲んでも酔い具合が違うことを断ったうえで、次のように説明しています。

一般的にいえば、2単位ぐらいのお酒を限度とすることです。このくらいの酒量だと個人差はあるものの、ほどよくお酒を楽しむことができるといわれています。これを超えると、悪酔いやさまざまな障害が起こりやすくなるといわれています。

(引用元:アルコール健康医学協会「適正飲酒の10か条」*²)

なお、お酒の1単位とは、純アルコールにして20gのこと。ビールなら中ビン(500㎖)1本、日本酒なら1合(180㎖)、アルコール度数25度の焼酎なら0.6合(約110㎖)、アルコール度数14度のワインなら約1/4本(約180㎖)、アルコール度数43度のウイスキーならダブル1杯(60㎖)が、それぞれ1単位に相当します。

また、「ゆっくりと」については、「飲む速度が速いと血液中のアルコール濃度が急に高くなり、早く酔ってしまう」ことや、「アルコールによる肝臓など体の障害が生じやすくなる」とのこと。

したがって、アルコールの代謝をサポートするたんぱく質やビタミン類を豊富に含んだ栄養バランスのとれた、豆腐類や卵焼き、野菜スティックなどをつまみながら飲むという習慣が、健康を確保するために大切だ、としています。

週に2日の休肝日で
アルコール依存症を予防

アルコール健康医学協会は「適正飲酒の10か条」のなかで、第4条として、「つくろうよ週に2日は休肝日」を掲げています。

適量範囲とされている2単位のお酒を飲むと、通常は飲んだアルコールの90%以上が肝臓などで分解、解毒処理されるのですが、この処理には、多少の個人差はあるものの、平均して6~7時間前後はかかるといわれています。

ということは、私たちが就寝中も肝臓は黙々と働き続けていることになります。そのため、連日お酒を飲み続けていると、肝臓は休む暇なく働き続けることになり、酷使された肝臓がギブアップして障害が出てくることになりかねません。そこで週に2日は「休肝日」として肝臓を休ませてあげよう、というわけです。

休肝日は2、3日飲んで1日休むサイクルで

この場合の「週に2日」で気をつけたいのは、2、3日飲んで1日休むというサイクルで、結果として週に2日肝臓を休ませてあげるというのがいいようです。

このように、自ら休肝日を設け、それを継続して実行していくことは、お酒を飲まずにはいられなくなる、いわゆる「アルコール依存」、さらにはその先にあるアルコール依存症の予防にもつながることから、是非習慣化したいものです。

なお、「自分はアルコール依存症では?」と気になったら、「新久里浜式アルコール症スクリーニングテスト」でセルフチェックしてみてはいかがでしょうか。詳しくはこちらを参照してみてください。

ツイッターで個人を名指しし「アルコール依存症」であると決めつけた云々で騒ぎに……。メディアがこの件を取り上げるのを聞き、自分のアルコールとの付き合い方が気になっている方には、まずはアルコールス症クリーニングテストによるセルフチェックをすすめたい。

参考資料*¹:「コロナウイルスの感染拡大に伴う依存症のリスクに関する注意事項」

引用・参考資料*²:アルコール健康医学協会「適正飲酒の10か条