コロナを疑ったら「かかりつけ医に相談を」
でも、かかりつけ医がいない
新型コロナウイルスの「感染第7波」の急拡大で、連日過去最高の新規感染者数が各地で報告されていて、「もしや自分も……」と心配になります。
しかし、発熱やのどの痛みなどの風邪症状が見られるこの感染症を、本人はもちろんのこと、臨床医にとっても鑑別するのは簡単なことではないようです。
こうした事態を見据え、厚生労働省は、発熱(いつになく熱っぽく感じ、体温を測定してみたら平熱より高い)や咳などの風邪症状があり、新型コロナウイルス感染症を疑ったときは、
「まずはかかりつけ医等に電話で相談する」ことを呼びかけています。
かかりつけ医もかかりつけの医療機関もない……
電話で相談を受けたかかりつけ医、あるいは医療機関が、新型コロナウイルス感染の可能性が疑われると判断した場合は、検査ができる診療所など、各自治体が電話相談先として指定している「発熱外来のある医療機関」を紹介し、PCR検査などを受けることになります。
その場合、かかりつけ医が自分の診療所などで検査できる体制を用意していれば、日時を指定して直接受診するようにすすめることも可能です。
しかし一方では、こんな不安の声もあがっています。
「私はかかりつけ医がいないし、かかりつけの医療機関もないけど、発熱や風邪症状があって新型コロナの感染を疑ったときはどうしたらいいのかしら」――。
そこで今日は、この疑問に対する答えを探してみたいと思います。
一般人の約半数は
かかりつけ医を決めていない
ところで、「ホームドクター」のイメージが強い「かかりつけ医」については、たとえば日本医師会と四病院団体協議会(民間病院中心の病院団体)が次のように定義しています。
かかりつけ医とは、なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師。
(引用元:日本医師会公式Webサイト*¹)
かかりつけ医の定義は、ほかにもいくつかありますが、政府の制度論議等ではこの定義を使用することが多いように思います。
「なんでも相談できる」「必要とあれば専門医や専門医療機関を紹介してもらえる」、しかも「身近にいる」、そのうえ大病院を受診する際に求められる追加料金が、かかりつけ医からの紹介状があれば支払う必要がなくなるというように、かかりつけ医を持つメリットは決して少なくないようです。
実際のところ、厚生労働省が2014年に実施した調査によれば、病院に外来通院している患者の73.3%、診療所の通院患者では85.0%が「かかりつけ医がいる」と回答しているとのこと。
思った以上に高率なので、ちょっと驚きです。
ただし、この数値はあくまでも何らかの健康問題で通院している人を対象にしたものです。
医療機関に通院する習慣の有る無しに関係なく、広く一般人を対象とした調査では、かかりつけ医がいるのは約半数にとどまるとする調査報告もあります。
かかりつけ医・病院がない場合に
とるべきコロナ対応は
そこで、発熱や咳などの風邪症状があり、「もしかしたら、新型コロナに感染したのかも……」と心配になったものの、かかりつけ医もかかりつけの医療機関もない場合はどうしたらいいのか、という話に戻ります。
この場合の患者側のとるべき対応について、たとえば東京都の「新型コロナウイルス感染症対策サイト」にアクセスしてみると、対応は以下の3パターンに分けられています。
- 発熱や咳などなどの比較的軽い風邪の症状がある場合
妊娠中、あるいは基礎疾患がある、透析を受けている、免疫抑制剤や抗がん剤を使用中などで重症化リスクの高い人は「すぐに」、それ以外の人は「症状が4日以上続いた場合は必ず」、各保健所の「新型コロナ相談窓口(24時間対応)」に電話で相談する - 息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状がある場合
症状には個人差があるため、特に症状が重く、解熱剤を飲み続けなければならないほどの高熱が続く場合は、すぐに各保健所の「新型コロナ相談窓口(24時間対応)」に電話で相談する - 上記の症状に当てはまらないものの感染したかもしれないと不安に思うとき
新型コロナコールセンター(午前9時から午後10時)に電話で相談する
おそらく多少の地域差はあるでしょうが、全国的に見てもおおむねこのような対応になると考えていいだろうと思います。
なお、自宅に抗原検査キットがあれば、チェックしてみるのも一法です。
「帰国者・接触者相談センター」が
「受診・相談センター」に切り替わる
新型コロナウイルス感染症に関する相談は、これまでは保健所等に設置された「帰国者・接触者相談センター」が中心となって対応してきました。
しかし、この感染症の特徴から、発熱などの症状を訴えて直接医療機関を受診する患者が増加することが予想されます。
発熱の原因がはっきりしないまま医療機関に患者が殺到し、そのなかに新型コロナウイルス感染者が1人でも混じっていたら、感染がいっきに拡大し、いわゆるクラスター(感染者集団)が発生してしまうことは容易に想像できます。
そこで、厚生労働省は、そんな事態を避けるため、発熱などの風邪症状があり新型コロナウイルスに感染したと疑われる人が受診する際の相談先を、「かかりつけ医」など、身近な医療機関が担うという新たな医療体制に切り替えることにしたわけです。
いきなり医療機関を受診しない
かかりつけ医がいない人は、身近な医療機関に電話で相談するか、相談する医療機関に迷った場合は、これまでの「帰国者・接触者相談センター」に替わる「受診・相談センター」(地域によって呼称が変わることもある)などに電話で相談することになります。
受診・相談センターの連絡先は、厚生労働省のホームページ*²に記載してあります。
大事なことは、いきなり医療機関を受診しないことです。
必ず事前に電話で相談し、受診予約をしてから決められた日時に、決められた方法(通常の外来受付ではなく発熱外来を訪ねるなど)で受診すること。
また、電話で相談する際には、発熱などの風邪症状があったら、毎日の体温測定の結果はもちろん、発熱などの自覚症状についてもきちんと記録し、伝えるべきことを漏れなく伝えられるように準備しておくことが大切です。
参考資料*¹:日本医師会Webサイト「かかりつけ医とは」
参考資料*²:厚生労働省「各都道府県における、新型コロナウイルスに関する相談・医療に関する情報や受診・相談センターの連絡先」