人生の終わりを意識したら「いのちの終活」を

書き残す

志村けんさんの突然の死に
自らの人生の終わりを意識

新型コロナウイルスの影響で、高齢者のみならず現役世代にも、自らの人生の終わりを意識し、何がしかの準備に取りかかる人が増えていると聞きます。

こうしたことの背景には、コメディアンであり、数多くのテレビ番組の司会者としても全国的に人気を博していた志村けんさんの死が大きく影響しているように思います。

志村さんの場合は、亡くなられたときは70歳でしたから、高齢者と言えるのでしょう。

しかし、ついさっきまでテレビで人を笑わせていたのに、新型コロナウイルスに感染すると、あれよあれよという間に入院先の病院で亡くなってしまった――。

感染予防のため、大切な人との面会も適わず、親近者に看取られることもなく、焼かれて骨になってからやっとお兄様のもとに戻ってくることができた――。

そんな彼の逝き方がメディアで報じられるのを見聞きし、世代を超えた多くの人々が、新型コロナウイルスの脅威を改めて感じたことと思います。

同時に、自らの感染、さらにはその先にあるかもしれない自分の死に思いを致し、早速「終活(しゅうかつ)」に取りかかったという方もおられるのではないでしょうか。

人生の終わりに向けた「終活」は
高齢者だけのものではない

「終活」、つまり自分の人生の終わりに向けて、自分なりに納得して締めくくることができるようにと、備えとして行う活動にはいろいろあります。

遺言書の作成も、その1つでしょう。

この遺言書に関して、少し前になりますが、2016年(平成28年)12月に日本財団がインターネットによる調査を実施しています*¹。

その調査結果のなかに、「遺言書を作成している」と回答した人の約半数(44.5%)は50代以下の現役世代だった、とあるのを見たときは、なるほどと思ったものです。

すでにその頃から、終活は高齢者だけのものではなくなっていたようです。

相続対策のための遺言書では
大事なことが伝わらない

ただ、先の調査結果には、残念に思う部分もありました。

遺言書作成の理由を尋ねられた当の作成者が、
「相続争いを避けるため」「特定の財産をあげたい相続人がいるから」「平等に相続させたいため」等々、いずれも「相続対策のため」であると回答していたのです。

そもそも「遺言書」には法的担保がありますから、遺産相続のような生前の身辺整理の話に限られてしまうのは致し方ないのかもしれません。

しかし、自らの人生の締めくくり方、つまり「いのちの終活」として、自分はどうしたいのか、どんな医療やケアを受けたいのか、受けたくないのか、といった大事なことも、正式な遺言書でなくても、何らかのメッセージとして残してほしい――。

と言うのは、最期を迎えたときに自分の意思を自ら伝えることが難しい状態に陥っていることが、往々にして起こり得るからです。

これからの治療・ケアを
自ら考え、家族らと話し合う

そのメッセージを残す手立てとして、
たとえば『「私の四つのお願い」の書き方―医療のための事前指示書』のような市販の事前指示書を活用するのもいいでしょうが、ここでは、厚生労働省のWebサイトにある1つの冊子を紹介したいと思います。

これは、「これからの治療・ケアに関する話し合い―アドバンス・ケア・プランニング」と題する冊子で、厚生労働省の委託を受けた神戸大学医学部の木澤義之教授を中心とする研究チームが作成したものです*²。

アドバンス・ケア・プランニングとは、
「万が一のときに備え、あなたの大切にしていることや望み、どのような医療やケアを望んでいるかについて、自分自身で考えたり、あなたの信頼する人たちと話し合ったりすること」、いわゆる「人生会議」のことです。

A4版・15ページからなるこの冊子には、あなた自身の考えの進め方、あるいは家族や医療関係者らとの「人生会議」の進め方が、次の5つのステップで示されています。

  • ステップ1:考えてみましょう
  • ステップ2:信頼できる人がだれかを考えてみましょう
  • ステップ3:主治医に質問してみましょう
  • ステップ4:話し合いましょう
  • ステップ5:伝えましょう

チェックするだけの事前指示書は
物足りないと感じている方に

たとえば「ステップ1:考えてみましょう」では、
「もし生きることができる時間が限られているとしたら、あなたにとって大切なことはどんなことですか? 以下の中から選んでみて下さい(複数回答可)」
に続き、事前指示書に該当するチェックシートと説明書が収められています。

チェック欄には、それぞれの項目について自分が選択する理由や、選択する際に迷ったこと、あるいは疑問に思ったこと、医師に確認したいことなどを書き留めておくスペース、つまり自由記載欄がたっぷりと用意されています。

一般に「事前指示書」とか「エンディングノート」と呼ばれるものには、市販のもの、自治体が用意しているものを含め、チェックするだけのものが多いようです。

しかし、羅列してある項目から選択してチェックを入れるだけでは、「物足りない」「自分が希望することを自分の言葉で書き留めておきたい」といった声もよく耳にします。

このような方には、この冊子が向いていると思うのですが、いかがでしょうか。

あれこれ説明するよりも、まずは自分の目で確かめていただいた方がいいと思います。
是非アクセスしてみてください*²。

参考資料*¹:日本財団「遺言書に関する調査」
参考資料*²:「これからの治療・ケアに関する話し合い―アドバンス・ケア・プランニング」