既製品ではない、自分だけの「事前指示書」を

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「事前指示書」には
自分の言葉で希望を書きたい

78歳の知人女性から無料で入手できる「事前指示書」(エンディングノート)の紹介を求められ、国立長寿医療研究センターの事前指示書をおすすめしてみたことは、先に書きましたが、読んでいただけましたでしょうか。

高齢になり、自らの終末期に備えて事前指示書の作成を考えた知人に、無料で入手できる国立長寿医療研究センターの事前指示書を紹介しました。シンプルですが、受けたい医療、拒否する医療を考えておくきっかけなるはずです。

とにかく「思い立ったが吉日」がモットの彼女らしく、すぐにダウンロードしたそうです。

そのうえで、今朝早々に「事前指示としてどのようなことを書き記しておけばいいのか、おおよその概要はわかりました」で始まるメールが届きました。

「でも、私としては、選択して「✔」を入れるだけでは物足りない気がしています。希望することを自分の言葉できちんと書き留めておきたいと思うのですが、それができる事前指示書で、おすすめのものがあれば教えてください」

このメールには、「ああ、やっぱり」と納得です。

というのは、本や雑誌の編集をずっと仕事にしてきた彼女だけに、自分の言葉できちんと表現するということを人一倍大事にしていることを、知っていたからです。

「だって、無料で手に入れたいなんて言うから……」と思いつつ、「よし、あれなら納得してもらえるだろう」と、即座に頭に浮かんだものがあります。

自由記述式の事前指示書
「私の生き方連絡ノート」

それは、『受けたい医療を家族に伝える 〜 医療のためのエンディングノート『私の生き方連絡ノート』』(EDITEX)です。

医師、看護師、心理療法士など医療関係者を中心に、主婦も参加する市民グループ「自分らしい『生き』『死に』を考える会」(代表:東京女子医科大学非常勤講師の渡辺敏恵医師)が考案した、終末期の医療を考えるためのエンディングノート(事前指示書)です。

断っておきますが、この『私の生き方連絡ノート』は書籍扱いですから、有料です(1冊460円+税で最寄りの書店、ネットでも購入可)。

『私の生き方連絡ノート』については、その概要を「自分らしい『生き』『死に』を考える会」(以下、「考える会」)のホームページ*¹で見ることができます。

この連絡ノートは6つのパートに分かれていて、すべて自由記述式になっています。この点が、前回紹介したチェック式の事前指示書との大きな違いです。

自分の希望を書き留める5項目

まずは以下の5項目について、自分で書きやすいと思う項目から、記載例を参考に、自ら考えながら連絡ノートに書き込んでいくことになります。

  1. 自分のことについて(名前、住所、かかっている医療機関など)
  2. 自分が望む医療について(今の自分が病気になったら、どんな医療を望むか、治療をしながら何を大切にした生活をしたいか)
  3. 自分で意思表示ができるとき(病気になったときに病気について知りたいか、知りたくないか、自分の病気について知っておいてほしい人)
  4. 急病や事故、認知症などにより自分で意思表示ができないとき(どのような治療や生活を望むのか)
  5. 自分の代わりに判断してほしい人(いる場合は名前を)

以上の5項目一つひとつに自分の希望を書き終えたら、巻末にあるカード式の「意思表示カード」に、項目ごとにポイントを記載します。

そのうえで、いざというときの治療に、表記してあるあなたの意思が最大限反映されるように、このカードを常時携帯することを奨励しています。

延命治療を拒む選択もあれば、
希望する選択もあっていい

ところで、この連絡ノートを考案した「考える会」は、以下3つの基本方針のもと、ホームページ上で情報提供を行うとともに、講演会も随時開催しています。

  • さまざまな終末期のかたちを認めよう
  • 終末期に関して患者さん本人が決めたことを大事にしよう
  • 患者さんが自分で決めるお手伝いをしよう

かなり前になりますが、東京女子医大で開催された「考える会」代表の渡辺敏恵医師による講演会を取材させていただいたことがあります。

そのときの取材メモをひも解いてみると、会場に集まった人たちに語り掛ける渡辺医師の、こんな言葉が書き留めてあります。

  • 終末期に「延命治療はいっさい受けたくない」という人もいれば、「あらゆる延命治療をしてほしい」という人もいるが、そのどちらも大事な選択である
  • その選択を、自分の意思として書き留めておくのが「事前指示書」
  • 元気なうちから、自分が書き留めた意思について、家族や友人などと話し合い、その意思を共有しておくことが大事

また、「考える会」が考案した連絡ノートには、自分が終末期を迎えたときは「どのような状態になろうと、〇〇だけはしてほしい」とか、「〇〇のような状態にだけにはしてほしくない」といったことを考えながら書き込んでいってほしい、とも話しておられました。

この辺の話も併記して、彼女にはこの連絡ノートをすすめるメールを送ったところです。多分、今度は満足してくれるだろうと思うのですが……。

厚生労働省のホームページには無料の記載式事前指示書も

もう一点、厚生労働省のホームページでは、神戸大学の研究チームに委託して作成された「これからの治療・ケアに関する話し合い―アドバンス・ケア・プランニング」という冊子をダウンロードできるようになっています*²。

アドバンス・ケア・プランニングとは「人生会議」のことですが、その第一歩として、まずは自分の意思を固めておくうえで活用すると便利な冊子です。

これなら、チェックするだけでなく自由記載欄もあり、しかも無料で入手できます。ぜひ一度確認してみてください。

新型コロナに感染し、そのまま逝ってしまった志村けんさん――。彼の死に新型コロナの脅威を感じると同時に、自らの感染、そしてその先の死を意識し、終活を始めた人が少なくないと聞く。しかもそれは高齢者に限らないらしい。その「いのちの終活」に1つの冊子を紹介する。

参考資料*¹:「自分らしい『生き』『死に』を考える会」

参考資料*²:厚生労働省「これからの治療・ケアに関する話し合い―アドバンス・ケア・プランニング」