適宜マスクをはずして
熱中症リスクを下げる
今年もまた、熱中症対策が欠かせないシーズンを迎えました。
しかも3度目のマスクを着用しながらの熱中症対策となります。
国は、この6月、マスク着用に関する新たな考え方を示しました。
屋内か屋外か、2mの距離は確保されているか、会話はあるかないかで判断し、状況や場面によってはマスク着用の必要はないとしています。
とはいっても、感染拡大の第7波に入り、過去最高の感染者が各地で相次いでいる状況に、油断はできません。
感染対策上マスクははずせない場面が多いのですが、ここ数日続いている高温多湿の環境下でマスクを着用して活動していると、マスクなしの時に比べ、呼吸数も、心拍数ともに増え、息苦しさがいっそう強まることが確認されています。
私たちが肌で感じる温度、いわゆる「体感温度」も上昇しますから、熱中症のリスクは高まると考えるべきでしょう。
熱中症予防にマスクをはずすタイミングは?
昨年の夏、厚生労働省と環境省は、熱中症を予防する行動の一つとして、「適宜マスクをはずしましょう」と呼びかけました*¹。
ここで言う「適宜」の目安として、以下の注意点をあげています。
- (熱中症リスクが高まる)気温・湿度の高いなかでのマスク着用は要注意
- 屋外で人と十分な距離(2m以上)を確保できる場合はマスクをはずす
- マスクを着用しているときは、負担のかかる作業や運動を避け、周囲の人との距離を十分とったうえで、適宜マスクをはずして休憩する
自分が今いる環境が「1」の「熱中症リスクが高まる気温・湿度の高いなか」に該当するかどうかの判断には、 黒球式熱中症指数計 熱中アラーム などを活用して「暑さ指数」をチェックするといいでしょう。
その方法についてはこちらの記事で具体的に紹介していますので、是非お役立てください。
一時的にはずしたマスクの取り扱いは慎重に
また、マスクを一時的にはずす際は、マスクの表面に新型コロナウイルスが付着している可能性を考え、はずしたマスクの取り扱いには特に注意が必要です。
さらに、たまたまマスクをはずしているときに咳やくしゃみが出ることもあるでしょう。
そんなときは、飛沫が周囲に飛び散らないよう、鼻や口を手やハンカチなどで覆うという、いわゆる「咳エチケット」を厳守すべきことは言うまでもありません。
熱中症予防の水分補給は
時間を決めて定期的に
熱中症のリスクには、こまめに水分補給をしているかどうかが大きく影響します。
この水分補給について、厚生労働省は「熱中症対策リーフレット」*²のなかで、
「定期的に水分を摂る」目安として、以下をあげています。
- 「のどが乾いたら」ではなく食前、食後、入浴前後、就寝前など時間を決めて
- 1日当たり、1.2ℓ(リットル)の水分補給を
- 1時間ごとにコップ1杯の水分補給を
- 水分補給にはスポーツドリンクがおすすめ
このうち「4」の「スポーツドリンク」は、外出先などでも最寄りの自動販売機やコンビニで、手ごろな値段で手に入りますから、熱中症対策に愛用している方は多いと思います。
確かにスポーツドリンクなら、大量の発汗で失われる水分とミネラル(電解質)を補給できるようにつくられていますから、熱中症予防の水分補給には適しているでしょう。
スポーツドリンクには「むし歯」と「肥満」のリスク
ただしスポーツドリンクには、飲み過ぎると以下のリスクがあります。
- 酸性度(PH値)が高いため虫歯になりやすい
- 糖分が多く含まれているため体脂肪がつきやすく肥満につながりやすい
そこで熱中対策としての水分補給には、スポーツドリンクは極力減らして「なたまめ茶」はどうだろうか、という話をこちらで書いています。
なたまめ茶には、発汗で失われがちなカルシウムやマグネシウム、鉄といったミネラル類が豊富に含まれています。
こちらの記事を参考に、検討してみてはいかがでしょうか。
高血圧の方の熱中症対策は
いつもどおりの塩分制限を
毎年熱中症のシーズンになると、テレビもラジオも天気予報の一環として、「熱中症に注意して、水分と塩分をこまめに摂るようにしましょう」などと、繰り返しアピールしています。
この「塩分」については、高血圧などで日頃から減塩を心がけている方に、「水分を増やしているぶんだけ、塩分も少し増やした方がいいのだろうか」といった疑問を抱かせます。
この疑問に、日本高血圧学会の減塩委員会は次のように答え、基本として塩分制限はいつもどおり続ける必要があるとしています。
食塩(ナトリウム)は高血圧の人は夏でも制限することが望まれます
夏は発汗により塩分(ここではナトリウムのことを「塩分」と記載します)やカリウムなどのミネラルがいくらか失われますが、日本人の食塩摂取量は平均1日10グラム程度と多く、必要量をはるかに超えています。
高血圧の人は、原則として夏でも適切な減塩が必要で、1日6グラム未満が望まれます。(引用元:日本高血圧学会Webサイト*³)
大量に発汗したときの塩分はかかりつけ医に相談を
ただし、これからの高温多湿のシーズンでは、仕事で、あるいはスポーツで体を動かして大量に汗をかくこともあるでしょう。
そのようなときは汗と一緒に多量の塩分も失われることに配慮して、水分とともに経口補水液やスポーツドリンクなどで塩分・ミネラルを補給するよう促しています。
この補給については、特に日頃から減塩を心がけていたり高血圧利を服用している方は、適切な水分と塩分の補給についてかかりつけ医に相談することをすすめています。
このほか、高血圧の方に気をつけていただきたい熱中症対策については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
体がだるいときは
熱中症対策の見直しを
このところの急な暑さと湿気続きではどうしても体がだるくなり、頭もすっきりしないばかりか、「何をするのもおっくう」といった状態になりがちです。
こんなときは、熱中症を警戒するあまりつい水分を摂りすぎてしまい、肝心の食事が疎かになっていることが影響しているケースが多いと聞きます。
特に、熱中症対策に便利なスポーツドリンクのなかには、ペットボトルの裏側に貼られている成分表を見るとおわかりのように、かなりの量の糖質(「糖分」とか「炭水化物」と表記しているものもあります)が含まれています。
この大量の糖質が体に入ると当然血糖値が上がりますから、食事をしたような気分になってしまい、食事が疎かになってしまうというわけです。
たんぱく質を中心に食事をしっかり摂る
体がだるかったり、集中力が落ちていると感じるようなときは、食事をきちんと取っているかどうか振り返り、たんぱく質を意識して摂るようにしたいものです。
特に、だるさからの回復にいいとされる「ヒスチジン」と呼ばれるアミノ酸が豊富な「鶏の胸肉」や「かつお(鰹)」「まぐろ(鮪)」などがおすすめです。
この辺の話はこちらで詳しく紹介していますので参考にしてください。
参考資料*¹:「新しい生活様式」における熱中症予防の注意点
参考資料*²:「熱中症対策リーフレット」
参考資料*³:日本高血圧学会Webサイト「さあ、減塩!」