事前指示書に「希望する医療」を明示しておく




選択

リビング・ウイルの申し出を
医師が拒むこともある

回復への期待が持てないまま人生の最終段階を迎えたときに、「今どうしてほしいか」を自分で説明できなくなることは、往々にしてあり得ることです。

そのときの備えの一つとして、日本尊厳死協会の「尊厳死の宣言書」、いわゆる「リビング・ウイル」に自分の意思を表明しておくという方法があります。

このリビング・ウイルについては、前回概要をみておきましたが、そのなかで、リビング・ウイルには、現時点で法的効力がないということが、ちょっと気になった点です。
「リビングウイル」で準備は万全だろうか

そのため、ごくまれにですが、医師によっては、リビング・ウイルによる本人の意思を受け入れてくれないことがあります。

リビングウイルと医師の悩み

なぜ本人の申し出を拒むのでしょうか。
取材に応えてくれた医師は、その理由として、延命措置として考えられている治療が一つではないことを挙げていました。

同時に、一つの治療が、ある人にとっては「延命治療」であっても、別の状態にある人には「救命治療になることも十分あり得る」とも、説明してくれました。

「だから積極的に治療してほしい場合と、してほしくない場合を具体的に示しておいてもらわないと、医療者サイドとしては判断に困り、必要以上に悩むことになるのです」と――。

事前指示書に明記する
希望する医療措置・希望しない医療措置

それならば、と考えついたのが、「事前指示書」です。

事前指示書は、自分のいのちが終わろうとしているときの医療やケアの中身、たとえば心臓マッサージや人工呼吸器装着といった具体的な医療措置の一つひとつについて、希望するかどうかを書き記しておくものです。

同時に指示書には、自分が判断できなくなったときに、自分の「意思の代行」を誰に託すかをあらかじめ決めて指名しておくことも含まれます。

「事前指示書」のひな型と書き方を解説する文書は、個々の病院や老人保健施設などで独自に作成されたものがあります(ただしこれは、一般向けに配布や市販をしているわけではありませんから、入手は困難です)。

一方、最近では、市区町村レベルで小冊子にまとめたものもありますから、こちらは最寄りの役所などで手に入れることができます。
インターネットを通じて無料で入手できるひな型もあります。
「事前指示書」は無料でも入手できます

もちろん、書籍としてまとめられ、刊行されているものもいくつかあります。そのなかで、私の周辺でとりわけ人気が高いのは、生命倫理の研究家として知られる箕岡真子(みのおかまさこ)医師による『「私の四つのお願い」の書き方』です。

事前指示書の記載内容に
家族の合意をとりつける

箕岡医師による『私の四つのお願い』は、アメリカの40の州で法的効力を持ち、800万人以上が使用しているといわれる事前指示書、『Five Wishes(5つの願い)』を参考に、わが国の実情に合わせて作られたものです。

本書はノート形式で、「事前指示書(本編)」と「書き方」の2部構成になっています。
人気の理由は、書き方がていねいに説明されているところです。
また、事前指示をノートに直接、自分で書き込むことができる点も好評です。

本編において、書き記す「私のお願い」として挙げられているのは、以下の4点です。

  1. あなたに代わって、あなたの医療やケアに関する判断・決定をしてほしい人
  2. あなたが望む医療処置・望まない医療処置について
  3. あなたの残された人生を有意義に過ごし、充実したものにするためにどのようにしてほしいのか
  4. あなたの大切な人に伝えたいこと

この事前指示書にあなたの意思が書き記されていれば、仮に自分で意思表示できない状態で終末期を迎えることになったとしても、「こんな最期を迎えたい」というあなたの意思は、代理意思決定者によって実現されることになります。

ただし、「リビング・ウイル」同様、事前指示書にも法律的な意味はなく、したがって強制力もないのが現状です。

そのため、事前指示書を作成する段階で家族とよく話し合い、記載内容に合意をとりつけるというステップを踏んでおかないと、いざというときに、家族の希望などによって「望まない」と書き記したはずの医療処置が実際に行われてしまうこともあり得ます。

そこで、こうした事態をできるだけ避けようと、最近医療現場を中心に始まっているのが、事前指示書やリビングウイルを一歩進めた「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」という取り組みです。

この医療を受ける側の取り組みの一つを、回を改めて書いていますので参考にしていただけたら嬉しいです。
「もしバナゲーム」で最期に何が必要か話し合う