高血圧なら「重曹」の隠れ塩分にご用心!!

重曹

加工食品のパッケージに
「重曹使用」を明記する理由は?

パソコンやスマートフォン(スマホ)の使い過ぎによるスマホ老眼や眼精疲労の予防や症状の緩和にブルーベリーがいいことはよく知られています。この効能のもとになっているのは、ブルーベリーの皮の部分に多く含まれる「アントシアニン」と呼ばれるポリフェノールですが、このアントシアニンは、黒豆や黒ゴマのような「黒い食品」にも大量に含まれています。

そこで、1日の大半の時間をパソコンやスマホ画面に向き合っている私としては、目を守ろうと、加工食品の黒豆パックをまとめ買いし、意識して食べるようになりました。その結果、黒豆のパッケージの裏側に、こんな一文が記されていることに気づきました。

「この商品に使用している重曹は、豆をやわらかくするために使用しています」――と。このように、「重曹」を使っていることをあえてアピールしているからには、「重曹」にそれなりの意味があるからだろうと、考えてしまいました。

重曹はナトリウムの炭酸塩
重曹添加食品は隠れ塩分食品

「重曹」は、豆類などをふっくらと煮あげたり、山菜などのあく抜きのため、あるいは肉を軟らかくするためにもよく使われています。レモンやりんごなどを皮ごと使いたいのに、表面の油っぽいベトベトが気になるときは、重曹を振りかけてから洗うとベトベトがとれます。その一方で重曹は、油汚れにいいからと掃除用の洗剤としても人気があります。

この重曹の正式名称は「炭酸水素ナトリウム」です。化学式にすると「NaHCO₃」、つまりナトリウムの炭酸水素塩です。ここまで書けば「あっ!!」と気づかれる方も多いと思います。

そうです。調理段階で添加物として重曹を使っている加工食品をとることは、ごく微量とは言え、食塩(ナトリウム)を摂取したことと同じになってしまうのです。高血圧などで減塩している方がことのほか気にしている、いわゆる「隠れ塩分」を含む食品だということです。

高血圧で減塩中なら
重曹にも気を配って

今、私の手元にある黒豆のパッケージには、この加工食品100g当りどのくらいの重曹を使っているのかはいっさい書いてありません。そのため実際どの程度のリスクになるのか判断しかねるのですが……。

微量とはいえ、体内に食塩が増えてナトリウム濃度が高くなれば口が渇きますから、水分をとります。水分をとればそのぶん血液量が増え、結果として血管にかかる圧が高まりますから、血圧が高くなります。

高血圧で治療中の方やかかりつけ医などから血圧が高めであることを指摘され、日々減塩を心がけている方、あるいは浮腫(むくみ)で悩んでいる方も、症状を悪化させないためにこんなところにも注意する必要があるのではないでしょうか。

この隠れ塩分については、加工食品のパッケージに明記することが義務づけられている栄養成分表示の「食塩相当量(グラム)」を忘れずにチェックすることをお忘れなく。

市販の健胃消化剤のなかには
重曹が配合された製品も

重曹、つまり炭酸水素ナトリウムは、食品のみならず市販の医薬品にも含まれています。食べ過ぎや飲み過ぎ、胃もたれ、胸やけ、胃痛などの症状があるときに服用する健胃消化剤のなかには、「制酸(せいさん)」といって胃液を中和して症状を和らげる目的で、炭酸水素ナトリウムが配合されている製品があります。

この炭酸水素ナトリウムは、これ単独でも胃・十二指腸潰瘍や急性胃炎などの患者に「制酸剤」として、処方されることのある医薬品ですから、炭酸水素ナトリウム自体に健康上の問題があるわけではありません。

しかし、この炭酸水素ナトリウムの添付文書(使用上の注意点などの製品に関する情報を薬機法に基づき作成された文書)を見ると、【禁忌】として「ナトリウム摂取制限を必要とする患者には投与しないこと」と記してあります*¹。

一口に健胃消化剤と言っても、製品により配合されている炭酸水素ナトリウムの量は異なりますが、成人1日量の服用により約0.6~1.3gの食塩に相当する量になります。我が国の高血圧治療ガイドラインでは、高血圧の患者には1日の塩分量を6g未満に抑えることを奨励していることを考えると、0.6gと言えども無視できない量です。

重曹を飲んでからだをアルカリ性に?

なお、重曹に関しては、「肉類や脂っぽいものを好んで食べている人はからだが酸性に傾いているから、弱アルカリ性の重曹水を飲んでアルカリ性にするといい」といった類の話をSNSで見ることがあります。

その真偽については、こちらに書いてありますので是非読んでいただきたいのですが、いずれにしても塩分制限をしている方にとって「重曹水を飲む」など、もってのほかです。

「アルカリ性体質」と「酸性体質」、あるいは「アルカリ性食品」と「酸性食品」を健康と関連づけて説明する記事がネット上にあふれている。そこには「重曹を飲んでアルカリ性体質に」などといった話も出てくるのだが……。その真偽の程を探ってみた。

注意したい「隠れ塩分」を含む食品

手軽でつい利用しがちな加工食品には重曹以外の「隠れ塩分」を含む食品が数多く出回っています。この点についてはこちらを読んでみてください。

高血圧か否かに関係なく日本人には減塩が必要だ。1日に摂取している塩分の7割弱は調味料から、3割強は食品の隠れ塩分からとの報告がある。それはどんな食品か、その見分け方、「無塩」「低塩」「減塩」の違い、隠れ塩分を摂ってしまったときの対策等をまとめた。

「かる塩」減塩食をご存知ですか

なお、高血圧などで減塩中の方のなかには、「減塩食は味気なくて、どうも長続きしない」と悩んでいる方も少なくないと思います。そんな方は、国立循環器病センターがすすめる「美味しく減塩」の「かるしお」減塩食を試してみてはいかがでしょうか。詳しくはこちらを。

コロナ禍は食生活に深刻な影響を与えている。国立循環器病研究センターの調査では、間食の回数が増えたり、外出自粛による調理済み食品の利用が増え、結果として塩分過多の傾向が伺える。無理なく美味しく食べられる減塩食に「かるしおレシピ」をすすめたい。