胃の切除術後は鉄分とカルシウム補給を

チーズ

本ページはプロモーションが含まれています。

胃の切除術後に多い
鉄欠乏性貧血

一昔前に比べると減少しているとはいえ、胃がんは日本人に多いがんの一つ。私のパートナーも、胃がんで胃の三分の二を切除して、すでに8年余りになります。

術後から今日までの食事では、鉄欠乏性貧血の予防を課題の1つにしてきました。

主治医の説明によれば、胃を切除すると、胃酸の分泌が減少して鉄分の吸収が悪くなるため、胃の切除手術を受けた人のおよそ35%、胃を全部摘出した人ではほぼ70%が、鉄分の不足による鉄欠乏性貧血を合併するそうです。

鉄分は体内で、赤血球のヘモグロビンと呼ばれるたんぱく質の成分として、全身の細胞に酸素を送り届けるという非常に重要な働きを担っています。

ご承知のように「鉄」は、必須ミネラルの1つ。「必須」ということは、体内で合成することができないために、常時コンスタントに食事などから補給する必要があるということです。

この補給が追い付かずに体内で鉄が不足すると、全身の細胞が酸素不足に陥り、結果として、「わけもなく疲れやすい」「身体がだるい」「頭が重く気分がすっきりしない」などの症状を自覚するようになります。

家族や知人などから、顔色の悪さを指摘されたりすることもあるでしょう。

たんぱく源に多いヘム鉄と
緑黄色野菜のビタミンCを

吸収率の低下から不足しがちになっている鉄分については、我が家では以下の4点に留意して、薬やサプリメントではなく毎日の食事で補給することを心がけてきました。

  1. 鉄分には、肉類や魚類、大豆製品といったたんぱく源に含まれている「ヘム鉄」と、ホウレン草や春菊といった緑黄色野菜やヒジキに代表される海藻類に多く含まれている「非ヘム鉄」とがある。このうち吸収のいいヘム鉄(鶏レバーや赤身の牛肉・豚肉、魚類)を多めに摂るようにする。
  2. ビタミンCには鉄分の吸収を助ける働きがある。
    鉄分は単独ではなく、赤身の豚肉と春菊、カツオの刺身サラダといった具合に、ビタミンCが豊富な緑黄色野菜や果物類と一緒に摂るようにする。
  3. 胃が小さくなっている分だけ食べられる量はどうしても少なくなる。また食が進まないこともあり、食事からの補給だけでは鉄分補給が十分ではないと思われるときは、新玄 サプリ米 ビタミン・鉄分 や「1日不足分の鉄分 のむヨーグルト 」のような鉄分強化食品を積極的に活用する。
  4. 加熱料理をする際は鉄製の鍋やフライパンを使うようにして、料理をしながら鍋やフライパンから溶け出す鉄分を素材に追加できるようにする。
    ちなみに私は、IH対応/南部鉄器 小笠原陸兆×栗原はるみ 蓋付きミニパンを愛用しています。鍋としても、フライパンとしても使えて便利です。

なお、毎日の食事から鉄分を効率よく摂る方法については、こちらでより具体的に書いています。是非一度チェックしてみてください。

高齢になると消化吸収機能が低下するのに伴い食事の量も少なくなり、鉄分が不足しがち。その結果、からだのだるさや疲れやすさなどの貧血様症状を自覚するようになる。その予防や症状改善につながる、毎日の食事から鉄分を効率よく摂取する方法をまとめた。

骨や歯の健康に必須の
カルシウムもしっかり補う

胃の切除手術後は、鉄同様にカルシウムも吸収されにくくなります。

カルシウムも鉄と同じ必須ミネラルですから、毎日の食事でいかに過不足なく補給するかも、課題の1つとして取組んできました。

カルシウムが骨や歯の健康維持に欠かせないことはよく知られています。

高齢者では寝たきりに直結しやすい大腿骨頸部骨折など、骨折予防には十分なカルシウムを摂るようすすめられています。

女性で言えば、特に閉経後の女性を悩ます骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防に、カルシウムはマグネシウムなどと共に、欠かせない栄養素です。

加えてカルシウムは、出血を止めるための血液凝固(ぎょうこ)や心筋(心臓の筋肉)の働きにも深く関わっています。

また、脳神経系の刺激に対する感受性を鎮める働きもしています。

イライラしていると「カルシウム不足では?」と言われたりする所以はここにあります。

乳製品や野菜類のカルシウムを
魚介類のビタミンDと一緒に

カルシウムの吸収不足による健康面へのマイナスの影響を避けるため、我が家では、手術後1カ月が過ぎて普通に近い食事が摂れるようになった頃から、カルシウムを多く含む食品も意識して食卓に並べるようにしてきました。

その食品としては、ヨーグルトやチーズなどの乳製品、さらには柔らかく茹でた小松菜やブロッコリー、菜の花などに、サイレントミルサー を使って粉末にしたちりめんじゃこのような小魚やいりごまをたっぷりかけるようにしました。

同時に、カルシウムの吸収にはビタミンDが必要ですから、ビタミンDの含有量が多いサケやサバ、ギンダラ、ブリ、スズキ、ヒラメなどの魚介類も、その時々の旬のものを焼き魚やムニエル、マリネなどにして一品添えるようにしています。

また、ビタミンDは脂溶性、つまり油に溶けやすいビタミンです。油と摂取することにより吸収率が高まりますから、野菜類は炒め物にしたり、エキストラバージンオイルをかけていただくようにしています。

なお、ビタミンDはきのこ類にも多く含まれています。

しかし、きのこ類は食物繊維が多い分だけ消化が悪いため、できるだけ控え、利用するときは細かく刻むかカットするようにしています。

なお、ビタミンDの補給には日光浴が欠かせません。詳しくはこちらを。

「98%の日本人が骨の健康維持に必須のビタミンDが不足している」とのショッキングな調査結果が報告されている。その原因は、ビタミンDが体内で合成されるには日光が必須という特殊性にある。食事でビタミンDを補うと同時に十分な日光浴が必要だ。
「何を、どのくらい食べるか」に加え、「いつ食べるか」が大事とする時間栄養学では、カルシウムは夕方以降にとるのが吸収が最もよいとされていますから、カルシウム源は朝食や中食より夕食に、より多くとるといいようです。

乳糖不耐症なら牛乳代わりに大人の粉ミルクを

ところで、手軽に摂れるカルシウム源としてまず頭に浮かぶのは牛乳です。

しかし胃を切除した後は、乳糖が不足していることが多く、牛乳を飲むと乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)により、下痢などに悩まされることになりがちです。

実際、パートナーも手術前は平気で牛乳を飲んでいたのですが、手術後は牛乳で下痢をするようになり、すっかり牛乳嫌いになってしまっています。

そこで我が家では、いくつかある大人向け粉ミルクのなかで、唯一「おなかゴロゴロ」になる心配のない、救心製薬の「大人の粉ミルク 」を活用しています。

「きょうはちょっとカルシウムが足りないかな」と思うときは、紅茶などに入れるだけでなく、みそ汁やスープ類にも混ぜて利用すると、たんぱく質の補給にもなりおすすめです。

追記:先にこちらで書きましたが、主治医から「市販のエビオスを飲んでいると調子がいいと言う胃切後の患者さんが多い」と聞き、パートナーもずっと飲み続けて8年になりますが、確かに調子はいいようです。
→ 「エビオス錠」で低栄養によるフレイルを防ぐ

*乳糖不耐症とは、牛乳などに含まれている乳糖を消化する「ラクターゼ」と呼ばれる酵素の働きが十分でないために、乳糖を消化吸収できず、摂取するとお腹がゴロゴロしたり下痢などを呈する病態を言う。
高齢者にとって牛乳は、フレイルやサルコペニアの予防に貴重なたんぱく源だ。しかし、牛乳を飲むと「お腹ゴロゴロ」等の症状に見舞われるため牛乳は飲めない人が少なくない。その主な原因である乳糖不耐症でも飲み方を工夫すれば牛乳を飲めるようになるという話をまとめた。