帯状疱疹を予防するワクチンがあります

ワクチン接種

80歳までに3人に1人が
帯状疱疹を発症

新型コロナウイルスのワクチンですっかりお馴染みのアメリカ製薬大手ファイザー社が、新しいタイプの「帯状疱疹(たいじょうほうしん)ワクチン」の開発に着手したとのニュースが報じられています。

帯状疱疹を予防するワクチンとしては、すでに「生ワクチン(弱毒化されたウイルスを含む)」と「不活化ワクチン(ウイルスの毒性を失わせたもの)」の2種類があります。

ここに新たに、コロナのワクチンに使用している遺伝子を用いた「メッセンジャーRNA」と呼ばれる技術を活用してワクチン開発に乗り出したということのようです。

そんなニュースを耳にした折も折、懇意にしていただいている皮膚科医から、「このところ帯状疱疹の患者さんが増えている」とお聞きしました。

コロナ禍にあって、自粛生活によるストレスや不安、不活発な生活などによる免疫力の低下が背景にあるようです。

帯状疱疹は若い世代でも発症するのですが、40歳以上になると発症率がとみに高くなり、患者の7割は50代以上で、80歳までに3人に1人がかかるといったデータもあるとのこと。

帯状疱疹の原因や症状、予防法や治療法などをうかがいましたのでポイントを紹介しておきたいと思います。

帯状疱疹は体に残っている
水疱瘡のウイルスが原因

帯状疱疹と聞いて「ああ、ヘルペスのことね」と思う方もいるでしょうが、ヘルペスの日本語は「疱疹」、つまり「小さな水ぶくれの集まり」という意味です。

疱疹ができる病気はいくつかありますが、代表的なものの一つが帯状疱疹なのです。

帯状疱疹の原因は、子どもの頃にかかった「水疱瘡(みずぼうそう)」のウイルスです。

水疱瘡にかかると、いったんは治るのですが、ウイルス自体は背骨の中を通っている脊髄(せきずい)と呼ばれる神経組織の中にじっと潜伏しています。

その、いわば冬眠状態にあったウイルスが何らかのきっかけで目を覚まし、活動を再開して発症するのが帯状疱疹です。

そのきっかけとなりやすいのが、ストレスや心身の疲労、あるいは加齢などによる体の抵抗力、つまり免疫力の低下によるものと考えられているようです。

「新型コロナウイルスの感染拡大が長く続いて生活環境が変化し、働き方が変わったり経済状況が大きく変わってストレスや疲れがたまりがちな昨今の状況は、まさにそのきっかけになりやすい」と皮膚科医は警告します。

体の片側に発疹が出たら
すぐ受診して抗ウイルス薬を

帯状疱疹は、体の左側か右側のどちらか一方にチクチク、ピリピリした痛みと水疱、つまり水ぶくれを伴う赤い発疹が帯状に現れるのが特徴です。

帯状疱疹の痛みについては、かなり強くズキズキと痛くなると思っている方が多いようですが、これには個人差があり、なかには全く痛みが出ない人もいるそうです。

また、水疱の現れ方にも個人差があって、たくさん出る人もいれば、痛みを伴う赤い発疹だけという人もいるようです。

帯状疱疹でやっかいなのは、「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれる神経痛が、あとあとまで非常に長く残って患者を苦しめることになることだそうです。

特に、首から上にできる帯状疱疹は、目や耳を支配している三叉神経(さんさしんけい)をおかして角膜炎を引き起こし、そのために視力低下を招いたり、難聴や耳鳴り、めまいといった症状を引き起こすことも珍しくありません。

「幸い帯状疱疹には比較的よく効く抗ウイルス薬があります。体の片側に痛みを伴う発疹が帯状に出たときは、速やかに皮膚科を受診して抗ウイルス薬による治療を受けておけば、疱疹後神経痛などの深刻な事態は防ぐことができます」

帯状疱疹ワクチンは
50歳以上が対象で任意接種

冒頭で紹介したように、帯状疱疹には予防するワクチンがあります。

幼少時に水疱瘡を経験している人なら、すでに帯状疱疹ウイルスに対する免疫を獲得していますが、それも年齢とともに弱まってしまいます。

そこで、改めてワクチンを接種して免疫を強化し、帯状疱疹の発症や、仮に発症した場合でも重症化して帯状疱疹後神経痛へ移行するのを防ごうというわけです。

50歳以上なら、任意接種、つまり自費になりますが、ワクチンで免疫を強化して帯状疱疹の発症を防ぐことができます。

ただし、持病などにより「化学療法やステロイド剤等、免疫を抑える治療をしている」、あるいは「ガンマグロブリン製剤を使用している」方は、このワクチン接種は禁忌となっていますから、主治医に相談してみてください。

自治体によっては費用の一部助成も

生ワクチン(正確には「乾燥弱毒生水痘ワクチン」)なら接種回数は1回(皮下注射)、費用は医療機関によって異なりますが、4,000円から6,000円(税込)で済みます。

不活化ワクチン(正確には「乾燥組み換え帯状疱疹ワクチン」)の場合は、接種方法は筋肉注射で回数は2回(1回目の接種から2か月以上間隔をあけて2回目を接種。1回目接種から6カ月後までに2回目を接種する)で、1回18,000円から25,000円(税込)になります。

帯状疱疹のワクチン接種について相談できる最寄りの医療機関は、「○○市・帯状疱疹ワクチン・病院・医院・クリニック」で検索するか、こちらの病院検索サイト*¹でチェックしてみてください。

なお、一部の地域・自治体(名古屋市/東京都・文京区/愛知県・刈谷市など)には、帯状疱疹ワクチン接種費の一部を助成する制度があります。

現在お住まいの自治体に問い合わせてみるといいでしょう。

製薬会社の「グラクソ・スミスクライン株式会社」は、2022年2月28日、帯状疱疹という病名の認知度は高い一方で、「誰もが発症するリスクがあること」や「予防にワクチンがあること」に対する認知度が低いことから、国際高齢者団体連盟と連携し、世界初の「帯状疱疹啓発週間(2月28日から3月6日)」を立ち上げ、啓発活動に力を入れる方針を打ち出している。

免疫機能の低下を防ぐ

ワクチン以外に帯状疱疹を防ぐ方法としては、絶対的なものは残念ながらありません。

帯状疱疹は、心身のストレスや疲れにより免疫力が低下しているときに発症しやすい病気ですから、免疫力の低下を防ぐことが大切となります。

質のよい睡眠や食事をしっかり摂って、規則正しい生活をすることです。

特に食事について言えば、「まごたち食」として再三紹介しているような栄養バランスのよい食事は重要です。

「ピンピンコロリ」を望んでいても、歳を重ねるにつれて食が細くなり低栄養に陥りがち。低栄養が続けば活動は鈍くなり、「閉じこもり」や「寝たきり」になりがちです。その予防策として、おかずの食べ方の指針となる「まごたち食」を紹介します。

帯状疱疹ではないが強いかゆみが続くときは

なお、乾燥したシーズンに高齢者、とりわけお風呂好きの方を悩ます湿疹などのない皮膚のかゆみについては、こちらを参照してみてください。

お風呂好きで、入浴のたびに長風呂をしたり、体をゴシゴシ洗う習慣のある高齢者は「湿疹などのないかゆみ」に悩まされることが多い。加齢とともに減少している皮脂をさらに減らし、乾燥肌にさせていることが原因だ。入浴方法の見直しや保湿剤の使用に加え、下着は木綿ものを。

参考資料*¹:帯状疱疹のワクチン接種について相談できる医療機関