減塩中は減塩だけでなくカリウムの積極的摂取も

野菜と塩

減塩療法で最近注目の
「ナトカリ比」とは

高血圧の方はもちろん、健康診断のたびに血圧が高めだと指摘され、減塩、つまり食塩を摂りすぎないように心がけている方はかなりの数にのぼるものと思われます。

ところで、あなたご自身、このところ特に注目されている「ナトカリ比」という言葉をご存知でしょうか。

ナトカリ比というのは、改めて言うまでもなく「ナトリウムとカリウムの比率」の略です。

食塩(塩化ナトリウム)の主成分である「ナトリウム」と野菜や果物などに豊富に含まれる「カリウム」のバランスを表す新しい健康指標です。

高血圧で治療の一環として減塩療法を続けている方は、かかりつけ医から「ナトカリ比がまだ高いですね」とか、逆に「ナトカリ比が下がってきています。いい傾向ですからこのまま続けましょう」などと言われた経験があるのではないでしょうか。

ナトリウムとカリウムは、特にバランスが大切です。

減塩療法の効果をあげるには、毎日の食事で食塩(ナトリウム)を減らすと同時に、野菜や果物、豆類等からカリウムを多く摂って、ナトリウムの体外への排出をより積極的に促すようにしようというわけです。

今回はこの「ナトカリ比」について、書いておきたいと思います。

塩分を摂りすぎたら
カリウムでナトリウムを出す

高血圧を改善しようと日々減塩を心がけているものの、つい出来合いの弁当や総菜、あるいはインスタントやレトルト食品を多用して、心ならずも塩分過多になってしまったということが少なくないのではないでしょうか。

あるいは仕事上外せない宴席などで、先方に減塩していることを悟られたくないとの思いから、すすめられるままに出されたものをまんべんなく食べて塩分を摂りすぎてしまうといったこともあるでしょう。

このようなときに、摂りすぎた塩分を体から排泄するには、ナトリウムの吸収を防いで尿に出やすくする作用のあるカリウムを多く含む野菜や果物類をしっかり摂るといい、という話を先に紹介しました。

高血圧の改善に塩分制限は欠かせないが、外食や出来合いの弁当などを多用していると減塩は難しい。そこで、摂りすぎた塩分を追い出してくれるカリウムの多い食品を摂ることをすすめたい。カリウムを多く含む食材の筆頭として、野菜と果物の上手な摂り方を紹介する。

これは文字どおり、減塩とともにカリウムをしっかり摂ることを意識しようというナトカリ比の考え方に基づくものです。

カリウムの摂取は
腎機能をチェックしてから

ただ、カリウムを多く摂るにあたって注意していただきたいのは、腎臓が正常に機能していることが条件になるということです。

カリウムは、腎臓が正常に機能していれば、余った分は尿中に排泄されますから、体内で過剰になる心配はありません。

しかし、腎疾患があるなど腎機能の低下が指摘されている方の場合、カリウムを多く摂りすぎると血液中のカリウム濃度が高まり、極端な例では不整脈が出るような「高カリウム血症」につながりかねないというリスクがあります。

カリウムを積極的に摂取する際は、腎機能に異常がないかどうかあらかじめかかりつけ医に確認したうえで、カリウムの理想的な摂り方についてもアドバイスを受けることをお忘れなく。

ナトカリ比の測定は
「ナトカリ計」が便利

塩分と野菜や果物類の摂取バランスがわかるナトカリ比ですが、食事中の塩分が多すぎる、あるいはカリウムを多く含む野菜や果物類が不足しているときは、この値が高くなります。

反対に、この値が低いほど塩分摂取量が少なく、野菜や果物等からカリウムをたっぷり摂取できていることを意味します。

つまり、高血圧の改善や予防のためには、ナトカリ比を低くする必要があるということです。

食事で摂取した塩分(ナトリウム)やカリウムの大半は尿に排泄されますから、ナトカリ比は尿検査で知ることができます。

これまで、この検査では24時間畜尿といって丸1日排泄された尿をすべて溜め、その一部を検体として使うことが必要でした。

そのため、その場ですぐにナトカリ比を知ることには無理がありました。

幸い最近は、オムロンヘルスケア社が開発した測定器「オムロン ナトカリ計(Na⁺K⁺scan)」を使えば、100~150mlの尿さえあれば、その場で尿中のナトカリ比を測定できるようになっています。

尿ナトカリ比の値は
「2.0未満」を目標に減塩療法を

この測定器が手元にあれば、「塩分を摂りすぎたかな」とか「野菜が不足しているのでは」など、気になったときにはすぐにナトカリ比をチェックできるでしょう。

しかし、この取扱説明書*¹を見ると、なかなか繊細な器機のようで、「医師の指導にしたがってご使用ください」との警告が記されています。

なにより少々高価ですから、やはりナトカリ比の測定は医師に託すのがいいでしょう。

あるいは、自治体によっては、地域の保健事業の一環としての特定健康診査(特定健診)や健康づくり教室などで、この「ナトカリ計」を用いたナトカリ比の測定に基づく高血圧対策を行っているところもあるようです。

一度、お住まいの自治体に確認してみてはいかがでしょうか。

尿検査によるナトカリ比(尿ナトカリ比)に明確な基準値はありませんが、この値が低ければ低いほど高血圧の有病リスクが低いとされ、現時点では「2.0未満」を目標に減塩療法に取り組むのが理想とされています。

ナトカリ比を低くするための
カリウム摂取 4つの作戦

ナトカリ比については、厚生労働省が日本人の高血圧や循環器病予防対策を立てることを目的に日本高血圧学会に委託し、「ナトカリ比プロジェクト」をすすめています。

このプロジェクトに参加している鹿児島県中種子町では、高血圧の原因の一つとされる「ナトリウム接種の過剰・カリウムの摂取不足」に焦点をあてた高血圧予防事業を行っています(令和2~4年度)。

具体的には、集団健診時にナトカリ比などを測定し、その結果を受診者個々への食生活改善に向けた保健指導に反映させるという方法です。

この保健指導では、「おいしく減塩、たっぷりカリウム」食のヒントを記した資料のなかで、たとえば「カリウムをたくさん食べよう!」として、以下の作戦を紹介しています*²。

  1. 果物を毎日1~2つ食べよう
    果物1つ(100g)は、バナナ1本(カリウム360㎎)、りんご半分(カリウム120㎎)、みかん1個(カリウム150㎎)など
  2. 野菜料理を毎日5つ(350g)を目標に食べよう
    野菜1つ(70g)は、ホウレン草のお浸し(カリウム363㎎)、かぼちゃの煮物(カリウム367㎎)、具だくさん味噌汁(カリウム322㎎)、切り干し大根の煮物(カリウム180㎎)など
    野菜料理を摂れなかった日は野菜ジュース(無塩)200mlを野菜1つに換算する
  3. 牛乳・乳製品を毎日摂ろう
    チーズ類には塩分が多いので摂りすぎに注意を
  4. 外食や弁当・総菜も野菜が多いメニューを選ぼう
    麺類や丼物の単品よりも定食を選び、単品メニューには野菜料理の小鉢をつける

日々の食事に減塩食品を上手に使う

なお、減塩については減塩食品を上手に使うことをすすめています。

この減塩食品については、日本高血圧学会の減塩委員会が厳選した「減塩食品リスト」を活用するといいでしょう。詳しくはこちらの記事がお役に立てると思います。

減塩に挑戦している人は、高血圧や高血圧関連疾患の患者だけで4300万人に及ぶと推定されている。減塩食には美味しくないイメージも強く、実際味気のなさから長続きしない。そこで日本高血圧学会は、減塩効果の期待できる食品のリストを作成し公開している。その紹介を。

また、高血圧で減塩療法などの治療に取り組んでいる方が目標とすべき血圧の値、つまり降圧目標値については、こちらを参照してください。

5年ぶりに改訂された「高血圧治療ガイドライン2019」。基準値は据え置かれたものの、降圧目標値は10㎜Hg引き下げられ、より厳しくなっている。降圧治療の基本は減塩だ。この1日摂取目標量も来年度から0.5㌘減が予定されている。そのポイントは……。

参考資料*¹:オムロン ナトカリ計取扱説明書

参考資料*²:中種子町の減塩に関する取り組み「美味しく減塩・たくさんカリウム」