「フレイル」予防に岡山県のリーフレット活用を

蜂蜜

「食事はフレイル予防の第一歩」
高齢者こそ十分な栄養摂取を

加齢に伴い筋力をはじめとする心身の活力が低下し、やがては認知機能も低下して、要介護状態や寝たきり状態につながりやすい「フレイル」――。

このフレイルを、栄養状態を改善したり、筋力や体力をアップして未然に防ごうと、全国各地でさまざまな取り組みが進められています。

いずれも地方色豊かで独創的な工夫がされているのですが、特に注目を集めているのが、岡山県の「食の改善」を前面に打ち出した取り組みです。

同県では健康推進課が中心となり、「食事はフレイル予防の第一歩」を合言葉に、高齢者に十分な栄養摂取をよびかけるリーフレット「食育ナビ~フレイル編~」を作成し、県内の保健所や保健所支所で高齢者に配布しています。

フレイル予防は
筋力・運動能力の自己チェックから

A4版にして7ページというハンディなこのリーフレット*¹は、幸いなことに、岡山県のホームページからダウンロードすることができます。

カラーのイラスト付きでていねいに解説されていますので一度アクセスしてみてください。

いきなり食事の話ではなく、まずは自分の筋力・運動能力を知ることから――。

「指輪っかテスト」と呼ばれる簡単な方法で、自らの筋肉が衰えていないかどうか、骨量は減っていないか、運動機能が低下して転倒や骨折のリスクが高くなっていないか、自己チェックしてみることをすすめています。

かつては「もう歳だから」と諦めていた体力や気力が低下した「フレイル」と呼ばれる状態は、その兆候に早めに気づき生活習慣を改善すれば、要介護状態への進行を食い止めることができます。その第一歩となるフレイルチェックの方法を紹介します。

筋肉をコツコツ増やす運動を

そのうえで、転倒や骨折予防に役立つ「貯筋」、つまり筋肉をコツコツ増やしていく運動として、「台所仕事をする」「買い物に行く」「掃除機をかける」「階段を使う」「地域の行事に出かける」といった活動を、日々の生活の中で積極的に行うよう促しています。

さらに、誰もが手軽に運動量を増やすことのできるウォーキング、つまり散歩のポイントを紹介しています。

ウォーキングは有酸素運動ですが、有酸素運動とは、筋肉を収縮させる際のエネルギーに、酸素を使う運動のことです。

有酸素運動にダイエット効果があることはよく知られていますが、筋力の強化、さらには呼吸や循環器系の機能の向上、加えて脳の活性化にもつながるメリットがあります。

有酸素運動の代表格であるウォーキングやジョギングに意外な効果を期待できることが確認されている。着地したときにかかとにかかる衝撃が脳に伝わり、脳機能を高めるというのだ。衝撃を体の一部分に集中させないためには正しいフォームと衝撃に負けないシューズを。

自分の口で食べることが
フレイル予防には欠かせない

もう一点、このリーフレットの特徴ともいえるのが、三度三度の食事をいつまでも自分の口で食べ続けることができるようにと、嚥下力、つまり飲み込む力を維持する口の体操をイラスト入りで紹介していることです。

年齢とともに、食事中にむせたり、咳き込んだりすることが多くなりがちです。

そうなってくると、食べたものが誤って気管に入り込むことによる「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」を心配して、「口から食べるのをやめて胃ろうでも……」といった話になりがちですが、それを避けようというわけです。

また、かねてから私たちの国では、「8020(ハチ・マル・ニイ・マル)」をスローガンに、歯の健康の大切さをアピールする運動が厚生労働省と日本歯科医師会により推進されています。

「万80歳で健康な歯が20本残っている」ことを目標にしているわけですが、このリーフレットには、そのための虫歯予防の注意点も盛り込まれています。

フレイル予防には
炭水化物とたんぱく質が必要

そしていよいよ食事のポイントです。

高齢者の食事では、からだを動かすエネルギーのもととなる「炭水化物」と、筋肉や骨の材料となる「たんぱく質」がとりわけ重要です。

この二つが不足すると、日常の活動量の減少や食欲低下を招き、要介護の状態になる可能性が高まるとされているからです。

厚生労働省は国民健康・栄養調査を毎年実施しています(2020年、2021年は新型コロナウイルス感染症の影響により中止)。

その2019(平成31・令和元)年の結果を見ると、65歳以上の男性の16.8%、女性の20.7%が低栄養傾向にあることがわかります。

さらに80歳以上の低栄養傾向となると、男女ともに2割近くを占めています。

こうした結果を踏まえ、リーフレットは、からだを動かすエネルギーとなる食品、からだ(血や筋肉や骨)を作る食品の具体例を明記して積極的に摂取するよう促しています。

たんぱく質は動物性と植物性をバランスよく

さらにその参考にと、1日に摂りたいたんぱく質の目安量約50gを、具体的な食品と量とで、たとえば「切り身魚70g」「牛乳200g」「薄切り肉60g」「豆腐120g」「卵1個」「納豆1パック」といったかたちでイラストともに紹介しています。

1日の献立にこれらを上手に組み合わせてまんべんなく取り入れていけば、たんぱく質摂取量をアップできるようになっているのです。

現代の食生活では、たんぱく質は肉類に偏って摂りがちですが、たんぱく質の理想的な摂り方は、動物性・植物性が1対1です。

植物性のたんぱく源と言えば、豆腐や納豆でしょうか。

それ以外にも、たとえば野菜に大豆をおからまで丸ごと使ってブレンドしたカゴメ野菜生活Soy+(ソイプラス)、50代以上の中高年層に向け、おやつで手軽に植物たんぱく質をとってもらえるように商品化されたというビスケットギンビス アスパラガスプロテイン など、植物性たんぱく質がとれる食品が数多く市販されていますから、上手に活用するといいでしょう。

焼き魚のおろしにサラダ油で
エネルギーアップを!!

フレイル予防には、毎日十分なエネルギーとたんぱく質が豊富なバランスのよい食事が不可欠だとは頭でわかっていても、毎日のこととなると、ついコンビニの食事で間に合わせたくなったり、インスタント物に頼りがちにもなります。

そこで、リーフレットでは、「献立作りのポイント」として、手軽にエネルギーとたんぱく質をアップする方法を「ご飯派のあなたへ」「パン派のあなたへ」「めん派のあなたへ」と分け、それぞれに一品加える方法や「みそ汁に卵を落として植物油を小さじ一杯加える」といった具体的なヒントを提示しています。

缶詰を上手にアレンジしてエネルギーとたんぱく質をアップする方法には「なるほど」と納得させられます。

また、普通の焼き魚も、「大根おろしにサラダ油やマヨネーズを混ぜる」ことで、あるいは「鮭などは焼くよりムニエルに」してエネルギーアップをはかる、といった日々の食事に役立つヒントが満載です。是非活用を!!。

なお、「毎食自分で用意するのはどうも……」という方でたんぱく質が不足しがちな方は、森永乳業 大人のための粉ミルク ミルク生活プラス をのような大人向けに工夫された粉ミルクを常備しておくといいでしょう。

即席のみそ汁やコーヒー、紅茶、スープなどに適量加えるだけで良質なたんぱく質を補給でき、フレイル予防にはとりわけおすすめです。

最近では、高齢者向けに開発されたスマートフォン用「健康づくり用アプリ」もありますから、フレイル予防に活用してみてはいかがでしょうか。

また、経腸栄養剤や栄養補助食品をフレイル予防に活用する手もあります。

歳をとっても自立した生活を続けるためにはフレイルの予防が必須だ。持病のコントロールや運動も欠かせないが、低栄養に陥らないことがフレイル予防の要だろう。加齢に伴い食べられる量は減少するが、その不足分を経腸栄養剤や栄養補助食品で補うことを提案したい。

フレイル予防の基本としては低栄養を予防することが重要ですが、栄養状態の改善について東京都健康長寿医療センターの研究グループによるパンフレット「おいしく食べて低栄養予防」も、是非チェックしてみてください。

要介護状態の一歩手前とされる「フレイル」防止の要は低栄養を防ぐことだ。そのためには、高齢者が自分のこととして自らの栄養状態や口腔機能の状態を知ることから始める必要がある。そのために作成されたパンフレット「おいしく食べて低栄養予防!」を紹介する。

参考資料*¹:岡山県ホームページ「食育ナビ~フレイル編~」