在宅酸素療法が必要と医師から言われたが……

水滴

在宅酸素療法が必要と言われ
気が滅入るとのメール

「退院できると喜んだのもつかの間、主治医から退院後は在宅酸素療法が必要だと言われた。酸素タンクを引きずりながらの生活になると思うと、気が滅入ってしまう。この先もう酸素吸入なしでは生活していけないということなのだろうか」

78歳になって間もない叔父から、こんな悲痛なメールが届きました。

叔父は、「COPD(シーオーピーデー)」の通称で呼ばれることの多い「慢性閉塞性(へいそくせい)肺疾患」の診断でしばし入院していたのですが、数日前に叔母から、
「やっと退院のめどがついて、本人は自宅に戻れると喜んでいる」
といった電話が入ったばかりでした。

慢性閉塞性肺疾患とは、呼吸をするときに空気の通り道となる肺の中の細い気管支が、長期にわたり吸い続けてきた有害物質(叔父の場合はタバコ)の影響により、部分的に炎症を起こして狭くなり、肺におけるガス交換がスムーズにいかなくなっている病気です。

普通の空気のなかでは十分な酸素を取り込めない状態になっていますから、患者は四六時中、息切れや息苦しさに悩まされるようになります。

そこで、高濃度の酸素を薬代わりに送り込むことにより、酸素不足によって起きている諸々の症状を改善しようというのが酸素療法で、これを自宅で行うのが在宅酸素療法です。

在宅酸素療法中は
酸素吸入しながら外出も

在宅酸素療法、通称「HOT(Home Oxygen Therapy)」は、在宅用に開発された小型の冷蔵庫ほどのサイズの酸素供給装置(酸素濃縮器と液体酸素タンクの2種がある)から送り出される酸素を、通常は、鼻に装着したカニューラと呼ばれるチューブを通して肺に送り込む方法で行われます。

主治医やかかりつけ医から、自宅へ戻ってからも酸素を吸入し続ける必要があると説明されると、叔父がそうであったように、酸素タンクを引きずりながらの生活の不自由さを想像して、当事者は暗い気持ちになりがちです。

なかには、自宅に戻ってまで酸素吸入を続けるのはゴメンダなどと、在宅酸素療法を受けること自体を拒否する方も少なくないようです。

しかし、在宅酸素用の酸素供給装置には、設置するタイプのものとは別に、携帯できる軽量な酸素ボンベもあります。

これを使えば、酸素を吸入しながら自宅の室内を自由に移動することができますから、トイレへ行くことはもちろん入浴も十分可能です。

また、外出時に酸素ボンベを携帯するためのスタイリッシュで、かつ安全性に配慮した酸素ボンベ リュックサック など、専用のキャリーバッグやカートも用意されていますから、近所の散歩も、また街中への外出も人目を気にすることなく自由にできます。

これらの酸素供給のための医療機器については、その取扱い方や管理方法に至るまでの一切合切を業者の支援体制により、担当者がきめ細かにフォローしてくれるようになっていますから、安心して治療を続けることができます。

在宅酸素療法は
就寝中だけでOKの場合も

在宅酸素療法を続けている患者数は、すでに2014(平成26)年7月の時点で全国に16万人超いるとされていますが、その後も少しずつながら年を追って増え続けています。

そのなかの数人の療養生活を支援をしてきた経験を持つ訪問看護師によれば、彼らは在宅酸素療法により「息が切れて階段の昇り降りができない」「少し動いただけで咳き込むので活動が制限される」「呼吸が苦しくて食事を満足に摂れない」といった症状が緩和され、日常生活の幅や行動範囲が広がって、はた目にもそれとはっきりわかるほど明るくなっているそうです。

酸素を吸入する時間や吸入量は、息切れが改善されていることを一つの目安に、「パルスオキシメーター」と呼ばれるセンサー機器を指にはさんで、指先から出る光の色から動脈血の血中酸素飽和度を把握するなどして決められます。

その結果によっては、1日中酸素吸入を続ける必要があると判断されることもあれば、食事中は一時的に中止してもかまわないとされることもありえます。

また、夜間の就寝中はどうしても呼吸が浅くなり低酸素状態に陥りやすいことから、「日中は酸素吸入は中止して、就寝中だけにしてみよう」と判断されることもあります。

在宅酸素療法の費用負担には
公的助成制度の活用を

在宅酸素療法には、多少の条件がありますが、おおむね公的医療保険が適用されます。
しかし、酸素供給装置などの医療機器を維持していくのにかかる医療費の自己負担分はかなり高額なものになりますから、経済的負担は決して軽くはありません。

幸いわが国には、医療費の自己負担分が高額になった場合にその一部を公費で負担してもらう「高額療養費制度」があります。

また、介護保険サービスを同時に利用している場合には、「高額介護サービス費制度」や「高額医療・介護合算療養費制度」を利用して、家計にかかる負担を軽くすることができます。

いずれの制度も、その旨申請する必要がありますので、関心のある方は、以下の記事を参考にしてください。

医療機関で検査を受けたり薬局で処方薬を受け取って支払う医療費は、一部の自己負担分だけに抑えられるものの、高額になることも珍しくない。その負担が家計を苦しめないように、高額療養費制度が設けられている。この制度の利用方法についてポイントをまとめた。
医療費に高額療養費制度があるように、介護サービスにかかる費用にも高額介護サービス費制度という負担軽減の仕組みがある。申請すれば、決められた自己負担上限額を超える額を給付してもらえるのだが、所得に応じた上限額がなかなか複雑だ。ポイントをまとめた。
在宅療養を続けていると医療費、介護費共にかなりの高額で、家計への負担が重すぎることがある。そんなときに積極的に利用したいのが「高額医療・高額介護合算療養費制度」だ。世帯単位であること、毎年申請が必要なことなど、制度活用上の注意点をまとめた。

なお、呼吸機能障害の程度によっては、身体障害者福祉制度の助成や給付が受けられる場合もあります。入院中であれば担当看護師かメディカルソーシャルワーカーに、退院後であればケアマネジャーか各市区町村の身体障害者福祉課にたずねてみてください。