医療と介護の費用負担をカバーする
高額介護合算療養費制度
在宅で療養生活を続けていると、医療費も介護費も共にかさみ、家計にその負担が重くのしかかるという事態に陥りがちです。このようなときに利用すると家計への負担を軽減できる制度の1つに「高額介護合算療養費制度」があります。
高額介護合算療養費制度とは、世帯単位で、1年間に支払った医療保険と介護保険の自己負担額の合計が、決められた「自己負担限度額」を超えた場合に、超えた金額を払い戻してくれる制度です。ただしこの制度は、後期高齢者医療制度の被保険者がいる世帯で、要介護(支援を含む)認定を受けて介護保険サービスを利用している方がいる場合にのみ適用されます。
ちなみに後期高齢者医療保険制度とは、退職して国民健康保険の被保険者となった75歳以上と、65歳以上75歳未満で寝たきり状態など一定の障害のあることが認められた人を対象に、2008(平成20)年からスタートした医療保険制度です。
医療と介護の合算療養費給付は
世帯単位の年間自己負担額が対象
高額介護合算療養費制度の特徴は、「個人ではなく世帯単位」で「1年間に支払った自己負担の合計額」が、あらかじめ設定されている「自己負担限度額」を超えた場合に適用される点にあります。ちなみに、世帯単位の「世帯」とは、一般に住居および生計を共にしている者の集まりとされています。
これでは解釈次第で世帯の幅を広げてしまうことにもなりかねません。そこで制度上は、「住民基本台帳上の世帯員を指す」と定義されています。また、この制度で言うところの「1年間」は、毎年8月1日から翌年の7月31日までの1年間と決められています。
なぜこんな中途半端な期間設定なのかと、疑問に思うのはおそらく私だけではないでしょう。そこで調べてみたところ、「自己負担限度額を算定する際に基準となる国民健康保険や後期高齢者医療制度における所得区分の変更が、毎年8月1日から適用されることから、それに合わせている」のが主だった理由のようです。
さらに、「1年間に支払った自己負担分の合計額」を算出する際には、高額療養費制度と高額介護サービス費制度による給付を受けている場合は、その合計額を自己負担の合計額から除く必要があります。
合算療養費制度の対象になる
世帯区分別年間自己負担限度額
そこで気になるのが1年間の「自己負担限度額」です。この限度額は、被保険者の負担能力に応じて、きめ細かく設定されています。
この場合の負担能力は、所得状況を反映した市区町村民税の課税状況などによる6段階の世帯区分と、世帯構成者の年齢区分、利用している医療・介護サービスなどを判断材料にして決められています。
例えば、2018年度分(2018年8月から2019年7月)以降の、後期高齢者医療制度と介護保険制度を利用している世帯の所得状況別1年間の自己負担限度額は以下のようになります。
- 現役並み所得者Ⅲ
住民税の課税所得が690万円以上 ⇒212万円 - 現役並み所得者Ⅱ
住民税の課税所得が380万円以上 ⇒141万円 - 現役並み所得者Ⅰ
住民税課税所得が145万円以上 ⇒67万円 - 一般
現役並み所得者にも低所得者にも当てはまらない世帯 ⇒56万円 - 低所得者Ⅱ
住民税非課税世帯 ⇒31万円 - 低所得者Ⅰ
住民税非課税世帯で年金収入80万円以下 ⇒19万円
70~74歳の方がいる世帯、または70歳未満の方がいる世帯は、年間の自己負担限度額がそれぞれ違ってきます。また、その時々の国の経済状況などを反映して負担限度額は年度ごとに見直しが行われ、その結果により随時変更されますから、上記の額はあくまでも目安です。
実際のあなたの世帯の限度上限額を知りたいときは、医療保険、後期高齢者医療保険ともに、お持ちの被保険者証(保険証)に記載されている保険者か後期高齢者医療広域連合窓口、あるいはお住まいの市区町村の後期高齢者医療の担当窓口に問い合わせてください。
高額介護合算療養費の
申請方法と申請期限
高額介護合算療養費制度の対象となる世帯には、毎年2月ごろに、加入している医療保険の運営主体である保険者、国民健康保険および後期高齢者医療制度の場合は市区町村の保険課から、給付を受けられる旨の通知書と申請書が届きます。
この合算療養費は、受給資格があっても申請しないかぎり受けられません。しかも、高額介護サービス費の申請が初回の1度だけでいいのに対し、この合算療養費は年度ごと、つまり毎年の申請が必要です。加えてこの制度には、2年間という時効があります。
基準日である7月31日の翌日から2年間を過ぎると無効になってしまいますから、申請書が届いたら必要事項を漏れなく記載し、通知書に明記されている必要書類を準備したうえで、速やかに提出することをお忘れなく。
申請からおおむね2か月で、指定した口座に入金されるはずです。ただ、世帯対象者のいずれかが死亡している場合は、死亡した日が基準日となり、その基準日の翌日から2年以内に申請手続きをとるようにしてください。