薬で困ったら「かかりつけ薬局」に相談を

多剤併用

「かかりつけ薬局」を
活用していますか

どんな薬にも、期待できる効果(主作用)があれば副作用もあります。

また、高齢になってくると、今日は内科、明日は眼科、明後日は……、といった具合に複数の診療科を次々と受診してその都度薬の処方を受け、結果として何種類もの薬を同時に服用するといったことにもなりがちです。

このように薬の種類が増えてくると、一部の薬を飲み忘れたり、見た目がよく似ている薬を取り違えてしまったり、あるいは薬が多すぎるからと自己判断で薬を間引いてしまうといったトラブルを招くことにもなりがちです。

なかでも深刻なのは、複数の薬を同時に服用した際に起こる相互作用です。

薬の効果が強く出すぎたり、逆に薬同士がお互いの効能を消し合って、薬本来の効果が期待できなくなってしまうといった、薬の飲み合わせリスクが発生する懸念もあります。

このような、処方された薬の内容やその飲み方について不安があるとき、あるいは薬に伴うトラブルが起きたときなどは、仮に夜間であってもいつでも「かかりつけ薬局」の薬剤師に相談できるしくみがあることをご存知でしょうか。

75歳以上の半数近くが
7種類以上の処方薬を常用

ちょっと気になるデータがあります。

厚生労働省が2021(令和3)年6月に公表した「令和3年社会医療診療行為別統計の概況」をによると、75歳以上に限ってみると、院外処方で24.2%、院内処方でも18.4%が7種類以上の薬剤の処方を受けているというのです。

75歳以上で何らかの処方薬を常用している方の半数近くが、同時に7種類以上の薬の処方を受けているとは、少々驚きの数字です。

多種類の薬の服用により、副作用とみられるふらつきや転倒、認知機能の低下といった深刻な症状がみられることも報告されています。

2016年から始まった「かかりつけ薬局」制度

こうした事態が起こるのを防ぎ、患者が服用、あるいは使用する薬剤のすべてについて、安全かつ効果的な薬物治療ができるようにしようと、2016(平成28)年4月から「かかりつけ薬局」制度がスタートしていています。

この制度のもとに進められている「かかりつけ薬局」の「かかりつけ薬剤師」の普及とその活躍には、とりわけ大きな期待が寄せられています。

かかりつけ薬局を
決めておくメリットは?

かかりつけ薬局を決めておき、自分が服用する薬の管理を託しておけば、複数の診療科を受診して、それぞれの診療科から薬の処方を受けた場合でも、間を置かず相互作用をチェックしてもらえますから、飲み合わせリスクを確実に防ぐことができます。

また、かかりつけ薬局はあなたの薬の服用・使用履歴を、「お薬手帳」や「電子お薬手帳」を活用してきちんと管理してくれます。

どのような薬にアレルギーがあるのか、過去に同じタイプの薬を服用しているが効き目はどうだったのか、といったことも履歴からきちんと把握したうえで、薬の効果や副作用について継続して確認し、必要なアドバイスをしてくれます。

在宅療養をしている場合は、かかりつけ医や歯科医の指示があれば、あなたや家族の同意を得たうえで、自宅に出向いて必要な服薬指導をしてもらうこともできます。

その際には、医師による処方薬を届けてもらうこともできます。

また、服薬状況のチェックや飲み残している薬を把握して、かかりつけ医にその情報を提供し、処方内容の確認・提案もしてくれますから、薬を減らせる可能性も出てきます。

かかりつけ薬局なら
24時間いつでも相談可能

かかりつけ薬局を決めていれば、薬に関する相談には、薬局の営業時間外はもちろん、夜間も含め24時間いつでも、直接あるいは電話などでも対応してもらえますから、安心して在宅療養を続けることができます。

慢性疾患で定期的に通院して処方薬を受け取っているという方は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて一気に普及が進むオンライン診療を利用するうえで、かかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師の存在はいっそう重要になってきています。

詳しくはこちらの記事を読んでみてください。

慢性疾患で定期的にかかりつけ医の診療を受け、定時処方を受けている人には、この時期、新型コロナウイルスの感染リスクの高い医療機関に出掛けて行くのは不安だろう。この際、出掛ける必要のないオンライン診療、オンライン服薬指導を活用してみてはどうか。その方法をまとめた。

かかりつけ薬局と同意書を交わしておく

かかりつけ薬局を決めておきたいというときは、かかりつけ薬局に出向いてその旨相談すれば、すぐにも担当のかかりつけ薬剤師を紹介してくれます。

紹介された薬剤師を、専任に担当してもらうかかりつけ薬剤師に指名することに決め、「お願いします」ということになれば、薬局から「同意書」にサインを求められます。

この同意書には、「かかりつけ薬局・薬剤師に希望すること」など、患者側の要望を自由に記載する欄もありますから、特に指導してほしいことなどを記載しておけばより安心です。

この同意書については、各薬局でそれぞれオリジナルなものを用意しています。

同意書に記載する内容を確認してから同意書を交わしたいという方は、その旨を気軽に申し出て見せてもらうようにしてください。

かかりつけ薬剤師指導料は1処方箋につき76円(1割負担の方)

かかりつけ薬剤師を指名することで発生する費用は、従来の「薬剤服用管理料」に代わるかたちで「かかりつけ薬剤師指導料」として、処方箋1回につき760円ですから、3割負担の方は228円、2割負担なら152円、1割なら76円の自己負担となります(2022年4月現在)。

なお、薬に関しては、食事や飲み物との食べ合わせが悪いと、薬効が低減したり、逆に効きすぎることがあります。この点について詳しく知りたい方は『薬と食事の食べ合わせにも注意が必要です』を参考にしてみてください。

とりわけ降圧薬を服用中の方は、こちらの記事に是非目を通しておいてください。

薬と食べ物や飲み物には相性の問題がある。特に高齢者の多くが服用している降圧薬のカルシウム拮抗薬には、グレープフルーツ(ジュース)と同時に摂ると、血圧が下がりすぎるタイプのものがある。処方を受ける際には、その点を確認しておくことをお忘れなく。

2022年4月から導入された「リフィル処方箋」

2022年4月からは、症状が安定している慢性疾患の方を主な対象に、繰り返し利用できる「リフィル処方箋」が導入されています。詳しくはこちらを!!

高血圧などで医師の処方薬を継続して服用していると、毎月のように薬の処方を受けるだけの通院を負担に感じることはないだろうか。この4月から導入された「リフィル処方箋」なら、その負担が軽減される。このリフィル処方箋を受けられる条件と使用法をまとめた。