在宅酸素療法を完全にやめられた叔父の話

水滴

せめて昼間だけでも
酸素吸入をやめられたら

長年吸い続けてきたタバコによる慢性閉塞性肺疾患、いわゆるCOPD(シーオーピーデー)で自力での酸素補給がうまくいかずに息切れや息苦しさに悩まされ続け、ついに在宅酸素療法に頼らざるを得なくなった叔父の話を、先に紹介しました。
→ 在宅酸素療法が必要と医師から言われたが……

叔母によれば、酸素療法を続ける必要があるとかかりつけ医から説明を受けた時の叔父は、自宅に戻ってからも、すっかりしょげ返っていたとのこと。

その後しばらくは気落ちした状態から抜け出せずにいたようです。
ところが、実際に酸素吸入をしていると呼吸が格段に楽になるからでしょう。
しばらくすると、少しも嫌がるふうもなく酸素療法を続けるようになったようです。

孫たちが鼻カニューラを怖がり近寄ってくれない

ただ一つだけ問題がありました。

近所に住む孫たちがときどき訪ねてくるのですが、彼らは叔父の鼻に装着されているカニューラを恐る恐る遠目に眺め、なかなかそばに近寄ってくれない――。

そんな日がしばらく続くなか、
「せめて孫が遊びにやってくる昼間だけでも酸素なしでいられるといいのだが……」
と話すようになってきたのだそうです。

そこで、思い切ってかかりつけ医に相談したところ、
「そうですか。だったらお孫さんが訪ねてこられた時だけ酸素をやめてみてましょうか」
と、いとも簡単にOKを出してくれたとのこと。

その日からほぼ半年、酸素吸入を中止している時間を段階的に増やし、今では在宅酸素療法を完全にやめることができた、という話を紹介してみたいと思います。

酸素吸入が必要か否かを
動脈血酸素飽和度で判断

在宅酸素療法を受けている方の多くは、このままずっと酸素吸入を続けるしかないと思い込んでいるのではないでしょうか。

しかし、たとえば激しく咳き込むなどして息苦しくなった直後は、息切れなどの症状を和らげるために酸素吸入は必須です。

ただし酸素吸入によりいったん症状が治まれば、あえて酸素を供給し続けなくても、自力呼吸で必要な酸素を取り入れることができる場合もあります。

酸素吸入が必要な状態かどうかは、血液(動脈血)中の酸素濃度、正確には「動脈血酸素飽和度(SPO₂)」をモニタリングして判断します。

動脈血酸素飽和度はパルスオキシメータで測定

動脈血酸素飽和度は、パルスオキシメータと呼ばれる洗濯ばさみのような形をした医療機器の、赤い光の出るプローブと呼ばれる光のセンサー部分に指先を挟んで測定します。

センサーが動脈の血流を検知し、光を使ってその血流中の酸素濃度を計算し、測定値として表示されるようになっています。

パルスオキシメータは比較的安価で手に入るうえに、操作自体も、また測定方法も簡単ですから、家庭でも比較的気軽に動脈血酸素飽和度を測定することができます。

ただし、測定値は生命に直結する重要な情報ですから、パルスオキシメータを購入する際は、かかりつけ医に相談のうえ、価格に左右されず高品質のものを購入するようにしてください。

また、その人の病状により、またその時々の状態によって、測定値が持つ意味は微妙に異なるりますから、測定値の判断はかかりつけ医に託すべきです。

日本呼吸器学会の小冊子を参考に

なお、パルスオキシメータの適正な使用方法については、日本呼吸器学会が患者向けに、Q&Aスタイルでまとめた小冊子、「よくわかるパルスオキシメータ」を作成し、学会WEBサイトで公開しています*¹。

「酸素飽和度とは何ですか」「値が低い時にあわてずにチェックする項目は」など、パルスオキシメータの基本事項に加え、「体動時の測定は必要ですか」「酸素吸入しているのに値が下がることはありますか」など、在宅酸素療法に直結する情報が数多く盛り込まれていますので、是非目を通してみてください。

口すぼめ呼吸を続けながら
酸素吸入を徐々に減らしていく

叔父の話に戻りましょう。

昼間だけでも酸素吸入をやめる条件として、かかりつけ医からは、パルスオキシメータで動脈血酸素飽和度のモニタリングをしながら、酸素吸入の必要性を徐々に減らしていくために、
⑴ 呼吸訓練を毎日励行すること
⑵ 軽い運動をして体をよく動かすこと
の2点について指導があったそうです。

このうち呼吸訓練としてすすめられたのは腹式で行う「口すぼめ呼吸」です。
「口すぼめ呼吸」は次の要領で行います。

  1. 軽く口をすぼめる
  2. 目の前にあるロウソクの火を吹き消すイメージで、肺の中にある息をゆっくり吐き出す
  3. 口から息を全部吐ききったら、鼻から大きく息を吸い込む
  4. 息を吸うときは、おへその下の辺りに空気を送り込むイメージでお腹を膨らます
  5. 口から息を吐き出すのが2、鼻から吸い込むのが1のバランスでゆっくり繰り返す

かかりつけ医と相談しながらゆっくりと

口すぼめ呼吸には、口をすぼめることによって生じる口腔内の空気抵抗圧が、気道内の圧を高め、狭くなっている気管支を広げる効果があるようです。

これにより、肺の中に残りがちだった二酸化炭素をしっかり吐き出し、そのうえで酸素をたっぷり送り込んで、身体中に新鮮な酸素が十分行き渡ることを狙った呼吸法と聞きます。

意識してこの呼吸法をするようになってからは、
「息切れすることが少なくなり、心持ち活動範囲も広がってきたように思う」
と叔父は話してくれています。

くれぐれも独断で事をすすめないように。
あなたの肺の状態をいちばん理解しているかかりつけ医と相談しながら、急がずに、1日も早く酸素療法から自立できるよう、じっくりと挑戦してみてはいかがでしょうか。

参考資料*¹:日本呼吸器学会編「よくわかるパルスオキシメータ」