コロナ禍で医療機関の受診を控えていませんか

診察

過度な受診の控えは
健康上のリスクを高めます

新型コロナウイルス感染症の感染拡大をできるだけ防ごうと、厚生労働省は、先の緊急事態宣言の期間中は、病院やクリニック等、医療機関の受診は必要最小限にとどめるよう広く国民にアピールしてきました。

その対応策として、電話診療やビデオ通話によるオンライン診療の対象を拡大するなど、特例措置がとられてきたのはご承知のとおりです。

その後、5月25日には緊急事態宣言が全国的に解除されています。
以来、すでに4か月余りが経過しているのですが、今もって医療機関の受診を控えたり、先延ばしにするといった傾向が続いているようです。

過度な受診の控えは、病状の悪化を招いたり、新たな病気の発見を遅らせるなど、健康上のリスクを高めてしまう可能性があります。

この点を懸念した厚生労働省は、Webサイト上の「上手な医療のかかり方」において、
「新型コロナウイルス対策を踏まえた適切な医療機関の受診(上手な医療のかかり方)について」という特設サイト*¹を開設して、必要な受診を控えないよう呼びかけています。

定時処方薬が切れてしまい
服用を中断してはいませんか

この特設サイトでは「コロナ禍でも医療機関で必要な受診を」をモットーに、以下の4点を広く一般にアピールしています。

  1. 過度な受診控えは健康上のリスクを高めてしまう可能性があります
  2. コロナ禍でも健診や持病の治療、お子さまの予防接種などの健康管理は重要です
  3. 医療機関や健診会場では、換気や消毒でしっかりと感染対策をしています
  4. 健康に不安があるときは、まずはかかりつけ医・かかりつけ歯科医に相談しましょう

高血圧や糖尿病、あるいは慢性呼吸器疾患などの持病があり、かかりつけ医による処方薬を定期的に服用している方は少なくないでしょう。

この定期的に服用している、いわゆる定時処方薬を、「病院に行くと感染を受けるリスクがあるから」と受診を先延ばしにしているために処方が切れ、そのまま服用しないでいると、せっかくいい状態にコントロールできていた持病が悪化するおそれがあります。

なお、2022(令和4)年4月からは、「リフィル処方箋」により、症状が安定している慢性疾患の方を対象に、1枚の処方箋を3回まで使用して処方薬を受け取ることができるようになっています。詳しくはこちらを。

高血圧などで医師の処方薬を継続して服用していると、毎月のように薬の処方を受けるだけの通院を負担に感じることはないだろうか。この4月から導入された「リフィル処方箋」なら、その負担が軽減される。このリフィル処方箋を受けられる条件と使用法をまとめた。

対面診療を行わない
オンライン診療には限界が

こうした事態を避けようと、厚生労働省はオンライン診療の手続きを簡略化して、病院やクリニック、および薬局の待合室で待つことなく、処方薬を受け取れるようにしています。

したがって、オンライン診療を利用すれば、出掛けなくても再診での処方を受けることができ、定時処方薬が切れて服用を中断してしまうといった事態は避けられるでしょう。

ただし、電話などオンラインによる診療では、病状の変化や新たな不調を的確にとらえることは難しく、場合によっては対面による診療が必要になることも十分あり得ます。

その際には、かかりつけ医の指示に応じて医療機関を受診するようにしたいものです。

「みんなで安心マーク」により
医療機関の感染対策をチェック

受診が必要なことは重々わかっていても、病院やクリニックで新型コロナウイルスの感染を受けるリスクを考えると、つい二の足を踏みがちですが……。

厚生労働省は、全国の医療機関に感染対策の徹底を要請しています。

これを受けて医療機関は、関連学会等による「院内感染*防止のガイドライン」に基づき、従来以上に万全の感染防止対策を実施しています。

*院内感染とは、病院などの医療機関内で入院中、あるいは外来等を訪れた患者や医療スタッフが、「新たに」ウイルスや細菌などの病原体に感染すること。
医療機関内には、病原体に対する抵抗力が低下していて、感染を受けやすい状態にある患者が多く、感染症が発生しやすい環境にある。
院内感染を防ぐために、各医療機関は院内感染対策チームを組織して、基本的な感染対策を常時徹底させている。

日本医師会が発行する「安心マーク」

また、日本医師会は、患者が安心して医療機関を訪れることができるよう、感染対策を実施している医療機関に対して、
「新型コロナウイルス感染症等感染防止対策実施期間 みんなで安心マーク」
を発行しています*²。

この安心マークは、日本医師会がWebサイト上で提示している「感染対策セルフチェックリスト」のすべての項目を実践していることを回答した医療機関にのみ発行されるものです。

安心マークの発行を受けた医療機関のリスト*³は、日本医師会のWebサイト上に掲載されていますから、これによってかかりつけの医療機関の感染対策状況をチェックすることができます。

また、安心マークは、チェックを終えた感染対策のセルフチェックリストとともに、医療機関の玄関や待合室などに掲示することが義務づけられています。

医療機関を訪れた際には、そのチェック状況から、感染対策がきちんと実施されているかどうかを把握することができるようにもなっています。

コロナ禍を機に「かかりつけ医」をもとう

厚生労働省が「コロナ禍でも医療機関で必要な受診を」の「4」でアピールしているように、今回の新型コロナウイルスの登場により、多くの方が「かかりつけ医」を持つことの大切さを実感されたのではないでしょうか。

かかりつけ医を決めておくことのメリット等については、こちらの記事で詳しく書いていますので、参考にしてみてください。
→ 「かかりつけ医」を持つメリットをご存知ですか

参考資料*¹:厚生労働省「新型コロナウイルス対策を踏まえた適切な医療機関の受診(上手な医療のかかり方)について」
参考資料*²:日本医師会「みんなで安心マーク」について
参考資料*³:日本医師会「みんなで安心マーク」発行医療機関