介護疲れは「レスパイト入院」でリフレッシュ!!

息抜き

介護保険で人気の
「ショートステイ」サービス

在宅で家族の介護を担っている方は、介護保険制度に「ショートステイ」、正確には「短期入所生活介護」と呼ばれるサービスがあることはご存じのことと思います。実際に利用した経験がある方も少なくないでしょう。

要介護認定で「要介護1」以上の認定を受けて在宅で介護保険サービスを利用している方が、特別養護老人ホームなどの施設に短期間だけ入所して、食事や入浴など、日常生活を送るうえで必要な介護や機能訓練を受けることができるサービスです。

要介護認定を受けるには申請手続きが必要です。その具体的な方法については、こちらを参照してください。

介護保険制度については、「申請方法がよくわからない」「かかりつけ医がいないので申請できないのでは」といった声をよく見聞きする。用意されているサービスを上手く利用できていない方も多いと聞く。そこで、改めて基本的なことを整理してみた。

最長で30日間の施設入所が可能に

ショートステイで入所できる期間は1カ月につき最長で30日間です。このサービスを利用すれば、日々の在宅介護で気が休まる間もなく少々疲れ気味の方は、一時的とは言え、介護の対象者であるご家族(介護保険の利用者本人)が施設に入所している間はしばし介護から解放されます。

このことが介護負担を軽減して貴重な癒しとなります。介護者は空いた時間を趣味に当てたり、友人と外食を楽しむなどして、心身ともにリフレッシュして、気持ちも新たにまた介護に取り組むことができるようになります。

介護する側にもされる側にもなかなかの人気で、利用者も比較的多いサービスと聞きます。

医療的ケアが必要なら
医療保険の「レスパイト入院」を

ところが、同じ在宅療養をしている方で、要介護認定により「要介護1」以上の認定を受けていても、口から食べられず点滴や胃ろうから栄養補給をしているなど、医療的なケアが必要な状態にある場合は、介護保険施設でのショートステイは断られてしまいます。

そのような在宅療養者が、ショートステイ同様のサービスを公的な医療(健康)保険で利用できるようにと、「レスパイト入院」という制度が用意されていることをご存知でしょうか。

レスパイト入院を利用できる方の条件としては、受け入れ先の医療機関により多少の違いはありますが、一般に、「以下のような医療的ケアが連日必要」ではあるものの、「病状自体は安定していること」「かかりつけ医の紹介状があること」等があげられます。

⑴ 胃ろうや経鼻、点滴による栄養補給を受けている
⑵ 人工呼吸器を使用している
⑶ 気管切開をしている
⑷ 在宅酸素療法を受けている
⑸ 褥瘡(床ずれ)の処置が必要である

レスパイト入院を利用して
介護者がいっとき休息をとる

ところで、レスパイト入院の「レスパイト(respite)」という英語には、「休息」とか「一時休止」あるいは「息抜き」といった意味があります。

この言葉が意味するように「レスパイト入院」とは、在宅療養者を支えている介護者がひとときの休息をとるために、在宅療養者の一時的入院を引き受けるサービス、つまりレスパイトケアと説明することができます。

レスパイト入院を受け入れているのは、主に「地域包括ケア病棟」のある医療機関です。

地域包括ケア病棟とは、急性期の治療が一段落して病状が安定した方が、在宅療養へ向けて準備する期間を過ごすために用意された病棟を言います。

レスパイト入院として入院できる期間は、「原則2週間」とされています。

加えて、レスパイト入院に使える病床数が限られていることなどから、次回のレスパイト入院については、前回レスパイト入院の退院から3カ月程度空けること、との条件を設けている医療機関が多いようです。

最寄りのレスパイト入院を受け入れている医療機関については、「レスパイト入院 〇〇市区町村(お住まいの自治体名)」でネット検索するか、最寄りの地域包括支援センター*、あるいは担当のケアマネジャーや訪問看護師にお尋ねください。

*最寄りの地域包括支援センターは、厚生労働省のホームページ*¹から都道府県別一覧にリンクできるようになっている。

医療保険でカバーできる
レスパイト入院の入院料

レスパイト入院には公的医療保険が適用されます。入院費用は、年齢や必要とする医療的ケアなどにより異なりますが、一般に地域包括ケア病棟入院料として1日当たりの定額に食事代などが加わることになります。

例えば75歳以上で医療保険が3割負担の方の場合、レスパイト入院で2週間入院すると、医療費や食事代で自己負担分は15万円程度となります。

ただしこれはあくまでも目安で、医療費・食事代は、所得に応じて異なる場合があります。また、高額療養費制度などを利用すると自己負担分はかなり軽減されます。

医療機関で検査を受けたり薬局で処方薬を受け取って支払う医療費は、一部の自己負担分だけに抑えられるものの、高額になることも珍しくない。その負担が家計を苦しめないよう「高額療養費制度」が設けられている。この制度の利用方法についてポイントをまとめた。

介護者のレスパイト(休息)に加え
冠婚葬祭、旅行の際も利用できる

レスパイト入院は、介護者の休息目的以外にも、身内や友人などの冠婚葬祭や出張、旅行などにより一時的に在宅介護から離れる場合も利用できる制度です。

レスパイト入院の利用を考えている方は、遠慮なく、かかりつけ医か担当の訪問看護師、あるいはケアマネジャーに相談することをお勧めします。

ところでレスパイト入院については、ごくまれに「社会的入院」と混同され、周りの目を気にして敬遠されることがあるようです。

しかし社会的入院とは、医学的には治療を続ける必要がなく、在宅療養が可能な状態にあるにもかかわらず、介護の担い手がいないなどの家庭の事情や患者の引き取り拒否などにより、長期間入院している状態のことです。

つまり、社会的入院は退院を前提としていない入院のことであり、レスパイト入院とははっきり区別する必要があります。

排泄支援機器を活用して排泄ケア負担の軽減を

なお、在宅で家族を介護している方の一番の悩みとしてあげられることの多い排泄ケアについては、排尿のタイミングを事前に知らせてくれる「排泄予測支援機器」が、2022年4月から介護保険の適用になっています。

つまり、購入費が介護保険給付の対象となり、1割、もしくは2割、3割を負担すれば購入できることになります。詳しくはこちらを!!

デジタル技術により膀胱内の尿量を推定して排尿のタイミングを予測し、通知してくれるセンサー「排泄予測支援機器」が特定福祉用具販売の対象に加わった。購入費用が介護保険給付の適用となるのだ。膀胱が正常に機能している人はこの機器を活用してトイレでの排尿自立を。

認知症介護の息抜きも

認知症の家族を介護している方の息抜きに利用できる介護保険サービスもあります。詳しくはこちらを参考に!!

在宅で認知症などの夫や妻を介護していると、24時間、365日一緒に暮らしていることから心身ともに疲労困憊の状態に陥りがち。時には介護から解放される時間を持つことがすすめられる。その一つの方法として、デイサービスやデイケアの利用の提案を。

参考資料*¹:厚生労働省「全国の地域包括支援センターの一覧」