40歳過ぎの膝の痛みと「変形性膝関節症」

歩行障害

立ち上がるときの膝の痛みは
変形性膝関節症の始まり

ちょっとした集まりでよく顔を合わせる50代と思しき女性が、「このごろ立ち上がるときに膝が痛むのよね」と隣の女性に話しているのを耳にし、とっさに「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」という病気のことが頭に浮かびました。

「膝の痛み」は年齢や性別に関係なくさまざまな原因で起こるのですが、40歳を過ぎて自覚する膝の痛みは、その大部分がこの病気で、全国に約800万人の患者がいると聞きます。

肥満が原因のこともありますが、多くは膝関節の加齢変化、つまり老化現象の一種です。

膝に限らず関節と呼ばれる部分は、2本、あるいは3本の骨が向き合ってできています。

これらの骨の先端の、軟骨(なんこつ)と呼ばれる部分の表面は、年齢を重ねるにつれて少しずつすり減って滑りが悪くなってきます。

ときに軟骨のヘリに余分な骨ができて骨の形が変わったりして、痛みを感じるようになるのが、「変形性関節症」と呼ばれる病気です。

変形して痛みが出やすい膝関節

私たちの体にはあらゆる個所に関節があります。

よく知られているのは手指や手首の関節、あるいは股関節ですが、正座する習慣のある日本人でいちばん変形しやすいのが膝関節だそうです。

男性よりも女性に多く、40歳を過ぎて膝に痛みを感じるようになったらこの病気を疑い、足を引きずるなど歩行に支障が出ないうちに受診したほうがいいと、整形外科医を取材した折に説明を受けたことがあります。

今日はそのときうかがった話をもとに、変形性膝関節症について書いてみたいと思います。

膝に痛みを感じたら
早めに整形外科を受診する

加齢や肥満により膝関節のなかでクッションの役割をしている軟骨が弾力性を失い、すり減って滑りが悪くなってくると、立ち上がろうとしたり、歩き始めようとして膝を曲げたりすると、なんとはなしの違和感や痛みを感じるようになります。

初期段階であれば、痛みは少し歩いているうちにラクになり、痛みを忘れてしまうというケースが多いようです。

このようなかたちで症状が軽いまま経過することが多いものの、人によっては、足を引きずって歩くようになってきます。

やがて、すり減った軟骨が変形してくると、膝の動きが制限されて、立つ、坐る、歩くといった動作がつらくなるため、日常生活が不自由になり、閉じこもりがちになったり、車椅子や寝たきりの生活になる可能性があります。

そこまで進行すると、治療には手術が必要になりますから、そうならないためには、最初に違和感や痛みを感じた段階で、一度整形外科を受診しておけば安心です。

なお、受診に際しては、自分が感じている痛みを医師に正確に理解してもらうために、こちらの記事で紹介している「いたみノート」アプリを活用して、痛みを記録したものを持参すると、よりスムーズに的確な治療を受けることができます。

痛みは本人にしかわからない個人的かつ主観的な感覚で、客観的に評価することはまずできない。それを可能にする試みがいくつか進められている。その1つ、スマホアプリの「いたみノート」を紹介する。自分で記録したものを「痛み日誌」として医師と共有し、痛みの緩和に活用を。

変形性膝関節症の進行を防ぐ
日常生活の注意点

整形外科を受診し、たとえば膝関節のエックス線(レントゲン)写真、あるいはMRI(核磁気共鳴画像法)検査などにより膝の軟骨がすり減っていることが確認されると、「変形性膝関節症ですね」と、診断されるはずです。

この診断を受けても、多くの場合、すぐに具体的な治療が行われるわけではありません。

おそらく医師からは、自分の体にあった膝関節の使い方をして、関節に過度の負担をかけて軟骨や骨の変化を進行させないように、といった説明があるはずです。

その方法については、日本整形外科学会が患者向けに作成した「整形外科シリーズ」の「変形性膝関節症」のなかで「日常生活の注意点(予防)」として以下をあげています*¹。

  1. 運動療法で大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)を鍛える*
  2. 肥満であれば減量して体重を軽くし、膝関節への力のかかり方を少なくする
  3. 正座を避ける
  4. 膝を冷やさない
    (急に痛むときは湿布薬などで冷やすが、痛みが続くときは温めて血行をよくする)
  5. 和式のトイレは避けて洋式トイレを使用する
  6. 階段の昇降や長距離の歩行はなるべく避ける

なお、痛みが続くときは、医師に消炎鎮痛薬を処方してもらうことができます。

その際は、薬で痛みが治まっているからと油断して、膝関節につい過分な負担をかけて病状を進行させないように注意する必要があります。

*大腿四頭筋を鍛えるには、手軽にできるスクワットを無理のない範囲で行うといい。幸い最近は、椅子やソファに腰掛けてできるすわってスクワット もありますから、活用してみてはいかがでしょうか。

膝関節の安定には
巻くタイプのサポーターを

ところで、変形性膝関節症の初期には、立ち上がるときに膝に痛みを感じるものの、立ち上がってから少し休んでいると痛みが治まることがあります。

あるいは歩き始めに膝が痛むことがあっても、歩いているうちに痛みがなくなるといったことも珍しくないようです。

このような状態のときは、膝専用のサポーターを着けて膝関節をしっかり安定させ、膝がぐらつくのを抑えてあげると、痛みが和らぎ、症状の進行を遅らせることができるようです。

この場合の膝関節サポーターとして現在市販されているものには、筒状になっている履くタイプと、着けるたびに膝関節に巻きつけるベルトタイプとがあります。

このうち履くタイプのサポーターは、時間の経過とともに締めつけられる感じが強まったり、時にずり落ちたりすることがあるため、着けるときにきつさを調節できるお医者さんのがっちり膝ベルト のようなベルトタイプの方がおすすめとのことです。

「それも、少し余裕のあるサイズで、きちんと固定できるものを選ぶといい」と、整形外科医が語っていたことを思い出します。

歩行時などにサポーターを着けていても痛みが日増しに強まったり、安静にしていても痛むようなら、安心のためにも、やはり整形外科医の診察を受けておくべきでしょう。

参考資料*¹:日本整形外科学会「整形外科シリーズ 3 変形性膝関節症」