動脈硬化の進行は青魚の缶詰で食い止める

缶詰

青魚のDHA・EPAは
生のままか缶詰がいい

取材の帰り道、管理栄養士の友人とデパ地下に立ち寄ったときのことです。

「今日の夕食は手抜きしたいから、青身の焼き魚でも買って帰ろうかしら」とつぶやいたところ、「家に帰れば、サバ缶でもイワシ缶でもあるでしょ。その方がいいわよ」と、半ばたしなめるような口調で言われてしまいました。

「サバ缶だったらあるから、じゃあ、そうする……」と、買わずにそのまま乗ったタクシーの中で、彼女がこんな話をしてくれました。

「あなたもわかってるでしょうけど、魚のあぶらは加熱調理や光によって、また空気に触れるだけでも酸化されやすく、動脈硬化のリスクを高める過酸化脂質(かさんかししつ)に変化しやすいわけだから。魚はやっぱり生で食べるのが一番よね」

こう言われると、ちょっと黙っていられないのが私の困ったところです。

「それは知ってるけど。ときには焼き魚や煮魚も食べたいじゃない」
「だったら、やっぱり自分で調理して、あまり時間を置かずに食べないと、せっかくのDHAやEPAのような不飽和脂肪酸も、むしろ逆効果なのよね」

この言葉に、「それは缶詰だって同じじゃない」と、重ねて反論してしまいました。

青魚の缶詰を選ぶときは
栄養成分表をチェック

私の反論に返ってきたのは、「必ずしも同じではない!」というものでした。

国内大手の水産メーカーは、水揚げする漁港のすぐそばに加工工場を持っていて、水揚げしてすぐの新鮮なままの魚を即、真空加熱調理して缶に詰めているそうです。

そのため、水揚げされてから食卓に届くまでの運送方法によっては、生のまま刺身にしていただくよりも、むしろ缶詰の方がDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)を多く摂れることもあるとのこと。

「もちろんすべてのメーカーの缶詰がそうだとは言えないけど、缶に記してある栄養成分表にエネルギー量やたんぱく質量、脂質量などと並び、DHAやEPAの含有量まできちんと明記してあるなら、水揚げしてすぐに製造された缶詰と考えていいでしょう」
とのことでした。

この話を聞いて自宅に戻ったその足で、キッチンへ行き、買い置きしてあるマルハニチロ さば水煮月花(プルトップ缶) をチェックしてみました。

これには1缶(200g)の栄養成分として「DHA:2660㎎、EPA:2300㎎」とあります。

そこでマルハニチロのホームページをチェックしてみたところ、サバ缶以外に月花 いわし水煮月花 さんま水煮にもDHAやEPAの含有量が明記してありました。

動脈硬化改善を期待できる
青魚缶詰のDHA・EPA

友人は都内の大学病院で管理栄養士として働いています。

彼女によれば最近の傾向として、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)値や中性脂肪値が高い患者さんに、DHAやEPAの含有量が多い青魚の缶詰を紹介し、動脈硬化を防ぐため、あるいは動脈硬化を改善して進行を阻止するため毎日1缶食べるように指導する医師が増えているそうです。

LDLコレステロールや中性脂肪は動脈硬化を促進させる危険因子です。

たとえば心臓に酸素などの栄養を送っている冠動脈が動脈硬化により極端に細くなったり、血管自体が詰まって血液の流れが過度に少なくなると、心筋梗塞や狭心症のような動脈硬化性疾患につながる危険があります。

認知症につながりやすいとして危険視される脳梗塞なども、動脈硬化が進行して引き起こされる疾患です。

管理栄養士は、医師から患者個々に出された食事(処方)箋に沿って具体的な指導を行っています。

その際、担当医から「DHAやEPAの含有量が多い青魚の缶詰を摂るように」といった指示が出ている患者には、次の点に注意するよう話をしていると言います。

  • 肥満気味でウエイトコントロールをするように医師から言われている場合は、カロリー過多にならないようにオイル漬けタイプの缶詰は避ける
  • 減塩中、あるいはむくみなどが出やすい場合は、塩分過多になりがちなみそ煮や煮付タイプの缶詰ではなく水煮の缶詰を選ぶようにする
  • 減塩中でないことを前提に、缶詰の汁にはDHAやEPAを含むあぶらが溶け出しているため、この汁も使う調理法を選ぶ
  • イライラ対策や骨粗鬆症が心配でカルシウムを多く補給したいという場合は、魚の骨を取り除いてない缶詰を選ぶ

青魚の缶詰購入時は製造年月日のチェックを

青魚の缶詰だけではありませんが、野菜や果物類のもの以外の缶詰は、栄養的価値を落とすことなく長期保存が効く食材です(野菜や果物類の缶詰の場合は製造過程で、高熱に弱いビタミン類が少し失われるようです)。

ただし、あまりに古いものや保管方法が悪いと味が落ちることがありますから、購入時は製造年月日のチェックを忘れずにしたいものです。

製造年月日は、品名、製造工場名とともに、通常は缶詰の上ぶたに3段にわたり記号で記してあります。

上段は品名、下段は製造工場名で、中段に並んでいる数字が製造年月日です。
たとえば中段に「190430」とあれば、2019年4月30日製造ということになります。

缶詰を使いきれなかったときは

缶詰は開けさえしなければ、一般に数年でも常温で保存がききます。
ただし、いったん開缶したら、生鮮食品と同じ扱いが必要です。

もし使いきれずに余ってしまったときは、別の電子レンジに対応可能な密封容器に移し替え、1分ほど電子レンジで加熱して殺菌してから冷蔵庫で保存し、2日を目途に使い切るることをおススメします。

缶に入れたままラップなどで蓋をして保存する方もいるようですが、いったん空気に触れると、缶の本体からスズなどが溶け出してくる可能性があり、健康上好ましくありません。

缶詰を開けて全部使いきれなかったら、別の容器に移し替えることをお忘れなく。