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聞きとりにくそうな人に
補聴器をすすめて断られた
年齢を重ねるに伴い、否応なくからだのあちこちに不具合が生じてくるものです。耳について言えば、だんだん聞きとりにくくなってきます。
「人と話をしていて聞き返すことが多くなった」とか、「テレビのボリウムを上げ過ぎて、家族から音が大きすぎるとよく言われる」ことなどは、遅かれ早かれ誰もが経験することです。
一方で、聞きとりにくくなっている人が周りにいたりすると、つい気を利かしたつもりで、
「補聴器を使ってみたらどうかしら」と勧めたりしがちです。「最近の補聴器はとても性能がよくなっているし、デザインもおしゃれなものがあるから」、などと話してみるのですが、色よい反応がないという経験はないでしょうか。
「少々聞こえにくいけど、補聴器を使うのは大げさすぎる」とか、「私はまだ、補聴器が必要なほど年をとっていない」ことを理由に、補聴器を敬遠する高齢者は少なくありません。そんな方におすすめしたい集音器について、今回は書いてみたいと思います。
加齢性難聴と
ストレス性難聴の違い
ところで、「聞こえにくい」「聞きとりにくい」という症状は「難聴」と呼ばれますが、これにはいくつかタイプがあります。ここでとり上げているエイジング(加齢)による「加齢性難聴」は、両方の耳が長い時間をかけて徐々に聞こえが悪くなってくるのが特徴です。
一方で、「突発性難聴(とっぱつせいなんちょう)」のように、ある日突然、片耳だけが聞こえない、あるいは聞こえにくくなる難聴もあります。このタイプの難聴は、ストレスの多い人や睡眠不足が続くなどして心身ともに疲労がピークに達しているような人に多く、まれに両耳に起こることもあるようです。
同様に、ストレスや過労などによる自律神経のバランスの乱れが原因で起こるとされるメニエール病でも、めまいや吐き気、耳鳴りとともに難聴になることもあります。
このような突発性難聴やメニエール病による難聴、さらには中耳炎のような耳のトラブルによる難聴の場合は、難聴の治療に明るい耳鼻科医の診察を受け、集音器ではなく補聴器の使用について相談されることをお勧めします。
集音器は音響機器
補聴器は医療機器
「集音器」は、小さな音を大きく増幅させて「聞こえをよくする」機器です。「聞こえをよくする」という点では、補聴器も同じです。ただ、同じ「聞こえをよくするための機器」であっても、集音器が「音響機器」であるのに対し、補聴器は「医療機器」です。ここに決定的な違いがあります。
医療機器には、使用上の安全性や有効性を確保するために厚生労働省が定めた一定の基準があり、その基準をクリアすることが求められています。補聴器で言えば、ただ音を大きくして聞こえをよくすればいいというものではありません。
「補聴器相談医」などが、使う人それぞれの聴力の状態に合わせて処方し、その処方に基づいて音の増幅方法を調整して、その人独自の、いわばオーダーメイドの補聴器を作るわけです(「補聴器相談医」についてはこちらを参照してください)。
音響機器としての集音器は、基本的には音の増幅だけを行うもので、使う人に合わせて音量や音質を調節することはできません。つまり、レディーメイド(既製品)の音響装置なのです。集音器を使うに際しては、この点を踏まえておくことが大切です。
補聴器を販売するには厚生労働省の審査をクリアする必要があります。しかし、集音器については、製造や販売方法に規制がありません。そのため国民生活センターには、購入はしたもののうるさくて使用できなかったとか、音が大きすぎる、雑音がする、耳に入るタイプなのに耳に入らないなどの苦情が少なからず寄せられているようです。不都合な状態のまま使用していて耳に悪影響を与えるなどの問題も少なからず発生していることから、国民生活センターは、「購入に際しては商品チェックを怠らないこと」と「同封の取り扱い説明書をよく読むこと」の2点を注意喚起しています。
集音器を買うなら
音質の良さをポイントに
そこで集音器についてですが、数ある中でも、音の専門メーカー、パイオニアが開発しただけあって音質のよさが評判のフェミミ があります。
高齢者が使用することを考慮して、極力簡単に操作できるように設計されているのも特徴で、電源を入れてイヤホンを耳に入れ、音量を調節するだけで、自分にとってほどよい音量でクリアに再現してくれます。
また、突然大きな音が発生したような場合は、自動音量調節回路が作動して、耳を守ってくれるような造りになっています。両耳で聴くステレオ方式ですから、人の話も聞きとりやすく、聞こえ方もより自然です。
何よりも、携帯音楽プレーヤー、いわゆるウォークマンのようにコンパクトなサイズでおしゃれなデザインですから、補聴器を敬遠される方にも他人の目を気にすることなく使っていただけるのではないでしょうか。
耳穴にすっぽり収まる集音器も
集音器には、超小型集音器 スーパーミニ のような耳穴にスッポリ収まるタイプもあります。超小型で目立ちにくいように作られていますから、他人の目が気になるうえに携帯するのもおっくうだという方には、こちらがおすすめかもしれません。
なお、補聴器の購入にかかる費用については、聴力障害の程度や居住地によっては、何らかの助成や補助を受けられる可能性があります。しかし集音器については、そのような公費負担、あるいは助成制度は、現時点(2023年12月現在)ではありません。
テレビの音を聴こえやすい音質に変えてくれるスピーカーも
補聴器を使うほどの難聴ではないものの、テレビの音が聴こえにくいためについボリュームを上げてしまい、家族から「大きすぎる」と指摘されている方も少なくないでしょう。
このような方には、音の大きさではなく音質を変換することにより、聴こえにくい方もそうでない方も一緒にテレビを楽しめるというミライスピーカー のような進化したスピーカーが、最近は市販されています。試してみてはいかがでしょうか。