新型コロナウイルスの「感染予防ハンドブック」

タブレット

感染予防に個々が取り組み
新型ウイルスの感染拡大を阻止

新型コロナウイルス感染症対策について、医学的見地から適宜政府に助言を行っている新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は、2月24日、
「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針の具体化に向けた見解」*¹
をまとめ、公表しています。

その冒頭で本会議は、国内におけるこの感染症の現状を、
「我々は、現在、感染の完全な防御が極めて難しいウイルスと闘っています」と説明。

「このウイルスの特徴上、一人ひとりの感染を完全に防止することは不可能」ではあるが、
「感染の拡大のスピードを抑制することは可能」と考えられる、としています。

そのうえで、感染拡大のスピードにブレーキをかけ、可能な限り重症者の発生と死亡者の数を減らしていくためには、
「この1~2週間の動向が、国内で急速に感染が拡大するかどうかの瀬戸際」であるとして、
国民一人ひとりが感染予防に取り組む重要性を強くアピールしています。

折しも、感染症対策の専門家でNHKなどの解説でお馴染みの東北医科薬科大学の賀来満夫(かく みつお)特任教授監修のもと、新型コロナウイルス感染を予防するための市民向けハンドブックがまとめられ、ネット上に無償で公開されています。

今回は、そのポイントとなる部分を紹介してみたいと思います。

敵の正体を理解して対応し
安心して日々の生活を送る

「新型コロナウイルス感染症 市民向け感染予防ハンドブック」
と題するこのハンドブックは、A4サイズ20ページのPDFデータに収められており、東北医科薬科大学病院のWEBサイトからダウンロードできるようになっています*²。

新型コロナウイルスとこのウイルスによる感染症は、必要以上に恐れないことが重要です。
そのためには、いわば敵であるウイルスと病気の正体を、解明されている範囲で正しく理解することが大切です。

そのうえで、その特徴を踏まえた感染予防に取り組むことにより、すべての市民がこのウイルスの存在を意識しつつも安心して日々の生活を送ることができるようにとの意図から、本ハンドブックは、以下の構成で平易にまとめられています。

■新型コロナウイルスとは?
■新型コロナウイルス感染症が発生している国や地域は?
■新型コロナウイルス感染症にかかると、どのような症状が出ますか?
■どうやって感染するの?
■気になる症状があるときに、気をつけることは?
■感染伝播防止の徹底(感染症にかからない、うつさないために)
対策1.咳エチケットを守りましょう!
対策2.手洗いをしましょう!
対策3.環境消毒・換気
■感染予防に関するQ&A

新型ウイルスの長い生存期間
室内の消毒と換気も忘れずに

新型コロナウイルスの感染予防については、メディアなどが日々繰り返し伝えています。

そこで取り上げている対策は、マスクや手洗いの話、あるいは狭い空間において、対面(顔をむき合わせた状態)で至近距離(腕を伸ばして届く距離が目安)での会話をしないなど、公共の場における話に集中しているように思います。

その点本ハンドブックでは、日々の家庭生活において重視すべき感染予防策を具体的に紹介しているのが特徴です。

その1点が、「対策3.環境消毒・換気」としてまとめられている項目です。

咳やくしゃみが出そうになると、思わず自分の手で鼻や口を覆うといったことは、誰もが日常的によく経験することです。
このとき、仮にその人が新型コロナウイルスに感染していれば、咳やくしゃみと共に飛び出したコロナウイルスは、その人の手につきます。

そのウイルスがついた手で手すりやドアノブ、テーブルなどに触れ、その手すりやドアノブなどに他の人が触れて、そのまま鼻や口、目を触れると、ウイルスに感染してしまうリスクがあります。いわゆる接触感染です。

この手すりなどについた新型コロナウイルスの生存期間については、CDC(米国疾病対策センター)が2月27日、銅や鉄などの表面では2時間程度だが、段ボールやプラスチックなどの表面ではさらに長時間、感染力を持った状態で生存し続けることを報告。
その感染力の強さには驚かされます。

この場合の感染予防策として本ハンドブックは、
「1日1~2回、ドアノブやテーブル、手すり、スイッチなど、手のよく触れるところを、薄めた漂白剤(0.02%次亜塩素酸ナトリウム水溶液)*または、アルコールを含んだティッシュで吹きましょう」と、消毒の徹底を促しています。
*例えば次亜塩素酸 ジアニスト がある。

加えて、部屋の十分な換気を行うことも必要で、「日中は2~3時間ごとに窓や扉を開けるなどして部屋の空気を新鮮に保ちましょう」と促しています。

自宅で療養する場合の
家庭内での感染対策Q&A

新型コロナウイルス感染症対策については、2月25日政府が基本方針を打ち出しています。

このなかで政府は、国内の感染が急速に拡大しかねない状況にあることを踏まえ、患者数が大幅に増えた時に重症者が的確な医療を受けられるように医療提供体制を整備する方針であることを明示しています。

そのための対策の一つとして、
「(新型コロナウイルスへの感染が疑われる)風邪症状が軽度である場合は、自宅での安静・療養を原則とし、状態が変化した場合に(強いだるさや息苦しさなどの症状が現れる)、相談センター、またはかかりつけ医に電話で相談したうえで、指示があれば受診する」
ことをあげています。

この場合の「自宅での安静・療養」している場合の感染予防策については、現時点では、あまり情報がありません。

しかし、本ハンドブックでは「感染予防に関するQ&A」のコーナーで、以下の観点から詳細かつ具体的に解説されていますから、手元にあれば心強いはずです。
■感染した(または感染が疑われる)家族を看病する場合に気をつけること
■感染の可能性のある人と食事をするときに気をつけること
■感染の可能性のある人の衣類・寝具はどうすればいいか
■感染の可能性のある人と共有するトイレに関して気をつけること
■感染の可能性のある人や感染した人の唾液や喀痰を拭うのに使用したティッシュなど、ごみを捨てるときに気をつけること
■感染の可能性のある人が療養している部屋の掃除はどうすればいいか

参考資料*¹:「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針の具体化に向けた見解」

参考資料*²:「新型コロナウイルス感染症 市民向け感染予防ハンドブック」