コロナワクチン接種の前に考えておきたいこと

ワクチン

現実味を帯びてきた
コロナワクチン接種

新型コロナウイルス感染症の国内における流行は、11都府県に対する緊急事態宣言発令により人の動きが制限されたこともあり、多少落ち着く傾向を見せています。

しかし、重症者数、そして亡くなる方の数がこのところ増加し続けています。

そんななか、待ちに待ったワクチンの話がいよいよ現実味を帯びてきました。

アメリカの製薬会社ファイザーが開発した新型コロナウイルスワクチンの日本国内での使用に向け、有効性と安全性を審査する作業が鋭意進められていたことはご承知の通りです。

この審査から承認までの手続きは、通常なら優に1年以上はかかります。

しかし今回は、特例制度が適用されて手続きが大幅に簡略化され、
2月15日には厚生労働省が正式承認される見込みであることが発表されています。

厚生労働省は2月14日、ファイザー社製の新型コロナワクチンの安全性や有効性が確認されたとして、国内での使用を正式に承認。既定のスケジュールどおり、17日から先行接種が行われることになります。

正式承認されれば、17日には東京都内の医療機関で、安全性調査に同意が得られた医療従事者約1万人を対象に、先行接種が始まる予定になっています。

そこで、このスケジュール通りに進み、いよいよワクチン接種が受けられることになったときを想定し、自分としては受けるかどうか今のうちに考えてみてはいかがでしょうか。

2月5日には、イギリスの製薬会社アストラゼネカも、厚生労働省に、開発した新型コロナウイルスの日本国内での使用に承認を求める申請を行っている。

65歳以上の高齢者は
ワクチン接種順位の上位に

このコロナワクチンが承認された場合のワクチン接種の対象者や接種順位については、
2020年9月25日、政府の「新型コロナウイルス感染症対策分科会」が、
コロナ対応に当たっている医療従事者や65歳以上の高齢者、および基礎疾患を有する人を優先するとの方針を決めています。

現時点(2月12日)でのスケジュールでは、65歳以上の高齢者(令和3年度中に65歳以上に達する、昭和32年4月1日以前に生まれた方)らが接種を受けられるのは、
4月1日以降になりそうです。

ところで、これは今回の新型コロナウイルスワクチンに限ったことではありませんが、
ワクチン接種はすべてが強制的に行われるものではありません。

接種に際しては、インフォームドコンセントを行うこと、つまり、
「しっかり情報提供を行ったうえで、接種を受ける方の同意がある場合に限り接種を行う」
と決められています。

ということは、ワクチン接種の提案を受ける側には、ワクチン接種を受けるかどうかを、
もちろん自分の健康状態を理解してくれているかかりつけ医と相談することにはなりますが、最終的には自分で判断するよう求められることになります。

この意思決定においてまず気になるのは、
⑴ このワクチンは新型コロナウイルスにどのような効果があるのか
⑵ 副作用の心配はないのだろうか
の2点ではないでしょうか。

ファイザー社ワクチンの
感染予防効果は95%

今回のワクチンは、ファイザー社とドイツのビオンテック社が共同で開発したもので、
イギリスとアメリカではすでに使用が認められ、昨年12月から高齢者や医療従事者への接種がスタートしています。

このワクチンの有効性についてファイザー社は、数万人を対象にした最終段階の臨床試験で、新型コロナウイルスの感染予防効果、つまり感染を防ぐ効果は95%であったと報告しています。

このワクチンを最も必要としているのは、免疫力が低下傾向にあるため、新型コロナウイルスに感染しやすく、いったん感染すると重症化しやすい人*です。

この点についてファイザー社は、重症化リスクが高いとされる65歳以上の人においても、感染防止に94%の有効率が得られたと報告しています。

新型コロナウイルス感染症が重症化するリスク因子としては、①65歳以上の高齢者、②慢性閉塞性肺疾患(COPD)、③慢性腎臓病、④糖尿病、⑤高血圧、⑥心血管疾患、⑦肥満(BMIが30以上)があげられている。
また、要注意な基礎疾患などには、①生物学的製剤の使用(関節リウマチなどに使用)、②臓器移植後やその他の免疫不全、③HIV感染症、④喫煙歴、⑤妊婦、⑥悪性腫瘍が該当する。*¹

気になる副反応の報告は
すぐに治まる倦怠感と頭痛

ワクチン接種で最も気になるのは安全性、つまり副反応(副作用)の問題でしょう。

ファイザー社の報告では、最終段階の臨床試験(第3相試験)では、
ワクチン接種後に接種部位の痛みが出ることに加え、
⑴ 倦怠感(体のだるさ)が16歳から55歳で59%、56歳以上では51%
⑵ 頭痛が16歳から55歳で52%、56歳以上では39%
の割合で見られたものの、多くはすぐに症状が治まったそうです。

症状が長引くなどの比較的重い副反応としては、
倦怠感が3.8%、頭痛が2.0%で確認されたものの、
「重大な安全性の懸念は報告されなかった」としています。

アレルギー反応を起こした経験があれば接種しない

ただ、ニュース報道によれば、12月19日の時点で、イギリスでこのワクチン接種を受けた2人、アメリカでは5人に、全身に発疹が出るなどのアナフラキシーショックのような激しいアレルギー反応が出て入院治療を受けているとのことです。

このうちイギリスの2人については、過去にアレルギー反応が出た既往があったことが確認されていますが、アメリカの5人のアレルギー既往の有無については報告がありません。

ファイザー社は、アレルギー反応は、ワクチンに含まれるポリエチレングリコールという物質が原因の可能性があるとしています。

こうした事態を受け、イギリスの規制当局もアメリカのCDC(疾病対策センター)も、
過去に卵などの食べ物や医薬品、ワクチンによりアレルギー反応が出たことのある人は、
このワクチン接種を控えるよう勧告しています。

ワクチン接種後の健康被害に救済制度

ワクチン接種後の副反応は、極めてまれではあるものの、不可逆的に起こり得るものです。
そこで、副反応が起きた場合に備え、国による健康被害救済制度が設けられています。

ワクチン接種と健康被害との因果関係が認定された場合は、この救済制度により(申請手続きが必要)市区町村から給付が受けられるようになっています。

この制度の詳細はリーフレット*²にまとめられています。

参考資料*¹:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第4版

参考資料*²:厚生労働省「予防接種後健康被害救済制度について」