コロナ対策で注目のビタミンDをどう補うか

日光浴

新型コロナ対策としての
免疫力強化とビタミンD

新型コロナウイルス感染症が新たな局面を迎えています。重症化率は低いものの連日新規感染者数は増加していますから、マスクの着用やこまめな手洗い・手指の消毒、3密(密閉、密集、密接)の回避といった感染対策の基本にいっそう力を入れたいところです。

さらには、ここにきて新型コロナウイルスに対する免疫力を強化するうえで不可欠な栄養素として、特に「ビタミンD」への関心が高まっています。

サプリメントでビタミンD を補充すれば感染を予防できるのではないか、といった類の話までSNS上で飛び交っているのですが……。

さて、真偽の程はどうなのか、急ぎ調べてみましたので、わかったことを、以下にお伝えしてみたいと思います。

コロナ対策としての食生活に
日本栄養士会会長がメッセージ

新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)が始まって間もない頃、英国栄養士会は、パンデミック下での食生活について一般市民から寄せられた質問とその回答をまとめた文書を公表しています。

これを受けるかたちで日本栄養士会の中村丁次(ていじ)会長が、わが国におけるコロナの感染状況や日本人の食生活の現状を踏まえた解説文を作成し、一般向けメッセージとして同会のホームページで公開しています*¹。

「Q&A」形式でまとめられたこのメッセージ、「新型コロナウイルスの状況下、今、栄養指導に必要な一般生活者へのアドバイス」には、以下8つの「Q」が収載されています。

  1. 食事療法によって免疫システムを強化できますか?
  2. ビタミンDサプリメントは、とるべきですか?
  3. 水分の補給は関係ありますか?
  4. 特別に食品を購入しておく必要がありますか?
  5. 食品衛生と新型コロナウイルス感染について心配する必要がありますか?
  6. 新型コロナウイルスで栄養不良の改善が重要なのはなぜですか?
  7. 栄養不良のリスクがある人へのアドバイスやサポートする際のチェックポイントは?
  8. 病気により、すでに食事療法を実施している人は、どのようにすればいいでしょうか?

コロナ対策の食事の基本は
さまざまな食品をバランスよく

このうち「Q1」では、ウイルスなどの外敵から私たちを守ってくれる免疫システムは、さまざまな栄養素が複雑に関係し合って成り立っており、特定の栄養素だけで免疫力を高めることはできないことを改めて強調しています。

一方で、たんぱく質欠乏症や極端なやせ、肥満、低栄養などにより一時的に免疫力が低下することが仮にあったとしても、栄養バランスのとれた食事を続けることにより、免疫システムの正常な機能を回復することができると説明しています。

そのうえで、さまざまな食品をバランスよく摂取することを推奨しているのですが、「栄養バランスのとれた食事を」と言われても、格別栄養学的な知識を持たない者にとってはわかりにくく、実現も難しい、という方が少なくないと思います。

そんな方には、「まごたちわやさしい」の頭文字に沿って9種類の食材を意識してとることをすすめる「まごたち食」の考え方が参考になるのではないでしょうか。

「ピンピンコロリ」を望んでいても、歳を重ねるにつれて食が細くなり低栄養に陥りがち。低栄養が続けば活動は鈍くなり、「閉じこもり」や「寝たきり」になりがちです。その予防策として、おかずの食べ方の指針となる「まごたち食」を紹介します。

ビタミンDに期待できる
免疫機能の維持・調整役

そこで肝心のビタミンDですが、「Q2」に、「ビタミンDのサプリメントは、とるべきですか?」とあります。

ご承知のように、ビタミンDは脂溶性ビタミンの一つです。

カルシウムやリンなどとともに、骨の新陳代謝、つまり骨の代謝を維持して骨の健康を保つうえで、また筋肉や歯の健康維持にも欠かせない栄養素です。

加えて最近では、免疫システムの機能維持や調整にビタミンDが重要な役割を担っていることが注目されるようになっています。

ビタミンDは不足しがちな栄養素

改定されて間もない「日本人の食事摂取基準・2020年版」では、ビタミンDの1日摂取目安量は、18歳以上の男女ともに5.5㎍(マイクログラム)とされています。1㎍は100万分の1グラムに相当します。

また、1日の耐用上限量、すなわち過剰摂取による健康被害を未然に防ぐ、いわば許容摂取量は、1日100㎍に設定されています

少し前になりますが、2016年国民健康・栄養調査によると、日本人のビタミンDの1日平均摂取量は7.2㎍ですから、データ上は、平均的に摂取量の目安を満たしていると言えそうです。

しかし、ビタミンDの合成には日光の紫外線が大きく影響します。

そんなことも影響して、血中濃度(血液中に吸収されて全身の組織に運ばれるビタミンDの濃度)で見ると、日本人のおよそ半数、日照時間が極端に短い地域、あるいはシーズンに限ってみると、なんと8割以上の人がビタミンD不足の状態にあると推計されています。

バランスのとれた食事を最優先に

おそらくこうした背景もあってのことでしょう。

新型コロナウイルスの感染拡大という深刻な事態を受け、不足しがちなビタミンDをサプリメントにより補充して免疫力を強化すればコロナ感染を予防できるのではないか、といったことがSNS上で飛び交っているのだろうと推察します。

しかし、「予防できる」とする確かな科学的根拠はなく、「健康的で栄養バランスのとれた食事を維持し、なおかつ十分な日光を浴びることができていれば、あえてビタミンDをサプリメントで補充する必要はない」と、中村会長はメッセージのなかで明言しています。

食事も日光浴も不十分なら
サプリメント利用の検討も

とは言え、通常ビタミンDは、そのほとんどが食事からではなく日光(紫外線)により産生されていますから、ビタミンDとして働くには紫外線が欠かせません。

感染拡大防止策として外出自粛が続くなか、日光を浴びる時間が著しく減少している人では、ビタミンD不足に陥らないように、晴天の日は庭や軒先、ベランダなどで過ごす時間を極力多くとるようにするといいでしょう。

ただし、日光浴がいいからと、肌の色が赤くなるまで紫外線を浴びるのはむしろ皮膚がんなどのリスクを高めることになり逆効果です。

日光浴をする際は、皮膚に有害な作用が起きない範囲、季節や地域によって異なりますが、おおむね1日15~20分で十分とのこと。その際は、顔と両腕を露出した方が効果的です。

ビタミンDは脂身の多い魚ときのこ類に

悪天候続きで、あるいは仕事などの関係から日光を十分浴びることができない場合は、ビタミンDが豊富な食品を、意識して多く摂るようにします。

動物性食品なら、サケ、サンマ、マグロ、サバといった脂身が比較的多い魚、あるいはうなぎの蒲焼などもおすすめです。

サケについて言えば、普通サイズの1切れで1日に必要な量を賄うことができます。

一方、ビタミンDを多く含む植物性食品は、キクラゲ( 純国産 キクラゲ 粉末は便利です)やマイタケ、干しシイタケ、エリンギなどです。

ビタミンDは脂溶性ですから、これらの食品を炒め物や揚げ物にして油とともに摂取すると吸収率を上げることができます。

牛肉や豚肉といった肉類にはビタミンDはほとんど含まれていませんが、大人のための粉ミルク やフルーツヨーグルトのダノンヨーグルト など一部の乳製品にはビタミンDが添加されていますから、これらを活用するのも一法でしょう。

ビタミンDのサプリメントはかかりつけ医に相談のうえ

また、体調が思わしくない上に食事も十分に摂れず、日光浴もほとんどできないといった場合には、サプリメントを活用するのも有効な方法と考えていいようです。

とは言え、ビタミンDには過剰摂取による健康障害を起こすリスクもあります。サプリメントを利用する際は、極力かかりつけ医と相談するようにしてください。

なお、外出自粛により食品の買い出しも抑え気味なこの時期、バランスのとれた食事のために、フリーズドライ食品冷凍食品等を積極的に利用してみるのも一法です。

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この先しばらくは新型コロナウイルスと共存せざるを得ないようだ。食料品の買い出しも自粛が求められるなかで食生活の充実を図る秘訣の1つとして、保存性の高い冷凍食品を上手に活用することを提案したい。素材のもつ栄養分を最大限活かす健康的な利用法をまとめた。

参考資料*¹:日本栄養士会「新型コロナウイルスの状況下、今、栄養指導に必要な一般生活者へのアドバイス」