新型コロナの家庭内感染予防に歯磨きの見直しを

歯ブラシ

新型コロナの感染拡大を受け
「いつもと違う年末年始」を

12月17日、東京都で過去最多の822人の新規感染者が確認されるなど、新型コロナウイルスの感染拡大は全国的に収まる気配がありません。

東京都のコロナ対策に政策提言を行っている「東京 i CDC(東京感染症センター)」専門家ボード(座長:賀来満夫東北医科薬科大学教授)は、感染拡大防止の観点から、
「いつもと違う年末年始の過ごし方」として、以下を求めています*¹。

⑴ 休暇中は日常生活を共にしている家族や親しい人と自宅で過ごす
⑵ 祖父母や地元の友人など「久しぶりの人」に会うのはできるだけ避ける
⑶ 帰省もできるだけ避ける
⑷ 遠方の親戚との会話は電話やオンラインで済ませる
⑸ 初詣はオンラインでするか、3が日をはずし人の少ないときを選んでゆったりと出かける
⑹ 帰省する場合は2週間前から(職場の同僚や友人らとの)会食を控える

このところの感染拡大の傾向として気になるのは、家庭内感染が増えてきていることです。

その多くは、一緒に暮らす子どもや孫といった若い世代から感染を受けた70代、80代の高齢家族が重症化し、入院といった事態に至るケースのようです。

そこで今回は、日々の家庭生活において重視すべき感染予防策のなかで、とかく見逃されやすい「歯磨き」にスポットを当ててポイントを書いてみたいと思います。

適切な歯磨きは
コロナの感染予防に有効

日々の家庭生活において重視すべき新型コロナウイルスの感染予防策については、東京iCDC専門家ボードの座長である賀来教授が2月にまとめた「新型コロナウイルス感染症 市民向け感染予防ハンドブック」を紹介していますので、是非チェックしてみてください。

そのうえで、巷ではあまり語られていないのですが、誰もが、最低でも1日に1回は行っている歯磨きが新型コロナウイルスの感染予防に関係しているのかどうかが気になるところです。

この点については、東京医科歯科大学歯学部付属病院歯科総合診療部の礪波健一(となみ けんいち)医師が、同病院のWebサイトにある「新型コロナウイルス感染症対策」のコーナーで、Q&Aスタイルにまとめて解説しています*²。

まずQ1の「歯磨きは新型コロナウイルス感染症予防に有効ですか?」には、
「(歯磨きなどの)適切な口腔ケアは、新型コロナウイルスの感染予防に有効です」
と答えています。

その理由として、歯磨きなどの口腔ケアを徹底することにより口腔内の細菌数を減らすことは、たまたま侵入してきた新型コロナウイルスが口腔内の細胞に付着しようとするのを阻害することにつながるからだ、と説明しています。

感染対策としては
就寝前の歯磨きが効果的

では、口腔内の細菌数を最大限減らしてウイルスが細胞に付着するのを防ぐには、どのようなことに注意して歯磨きをすればいいのでしょうか。

とかく私たちは、歯磨きの回数を増やせば増やすほど、口腔内の細菌を減らすことができるから、感染予防により効果的なのではないか、などと考えがちです。

ところがこの点については、
「雑に何回も磨くよりは、1日に1回でも、時間を十分かけて歯と歯茎の境を中心にていねいにブラッシングして細菌数を低い水準に抑えておく方が効果的」
であると説明しています。

しかもその1回は「就寝前が効果的」であり、なおかつ歯をブラッシングして歯垢(しこう)と呼ばれるネバネバした細菌のかたまりを取り除くことに加え、舌の表面にある舌苔(ぜったい)を取り除くことも忘れないよう、注意を促しています。

歯磨きと舌苔(ぜったい)除去

舌苔とは、口腔内の細菌や食べかす、口腔粘膜の剥がれた上皮などが舌の表面に付着した状態を言います。白っぽく苔が生えているように見えることから舌苔と呼ばれています。

舌苔は、毛が少し軟らか目の歯ブラシで、奥から手前へやさしくかきだすようにして取り除くといいでしょう。専用の歯ブラシやヘラのような物も市販されていますが、毎日きちんと取り除いていれば、歯ブラシで十分です。

歯磨き後に吐き出す
唾液やしぶきにウイルスが

もう一点、歯ブラシなどの口腔ケアをする際に、新型コロナウイルス感染予防の観点から十分な配慮が求められるのが、ブラッシングやうがいをした後に吐き出す唾液の始末です。

十分ご承知のことと思いますが、新型コロナウイルス感染者(陽性者)が咳やくしゃみをした際に周囲に飛び散る飛沫、つまり唾液やさらに細かい水滴、いわゆる「しぶき」には、このウイルスが含まれている可能性があります。

この飛沫が鼻や口から侵入してくるのを防ごうとマスクを着用したり、飛び散ってドアの取っ手や手すりなどに付着している飛沫に触れた手を介して感染するリスク対策として、こまめな手洗いや消毒による手指衛生の徹底に努めているわけですが……。

意外と漏れているのが、歯磨きやうがいをしたときに周囲に飛び散る唾液等の飛沫に対する感染予防策ではないでしょうか。

歯磨きはタイミングをずらして
歯磨きした後は周囲を消毒

新型コロナウイルス感染者の動向として、無症候性感染者と呼ばれる、ウイルスに感染しているもののそれらしい症状が出ていない人が多くなってきていることが指摘されています。

したがって、PCR検査などで感染が確認されているいないに関係なく、歯磨きの際に無意識のまま唾液に触った手でドアノブなど、あちこち触らないこと、また唾液を周りに飛び散らしたままにしないことは、感染対策上特に重要です。

この点について礪波医師は、
「唾液に他の人が接触したり、飛沫を吸い込んだりしないように注意する必要がある」
として、以下の配慮を求めています。

⑴ 歯磨きのタイミングをずらして3密(密集、密接、密閉)を避ける
⑵ 洗面所等の歯磨きをする場所の換気(冬場は加湿も)をよくする
⑶ 家族の歯ブラシをまとめて保管する際は、歯ブラシ同士が接触し合わないように注意する

なお、歯磨きをした後の周辺は、キッチンハイターのような塩素系消毒薬(次亜塩素酸ナトリウム)や家庭用洗剤等の界面活性剤を染み込ませたキッチンペーパーなどで拭き掃除をしておくことをお忘れなく。

新型コロナウイルスに対する「うがい」の効用については、こちらを参照してみてください。
→ 新型コロナウイルスに「うがい」はどうなの?

年末年始に都営大江戸線の運転士などが新型コロナウイルスに集団感染し、運行を制限していた問題で、調査に当たった保健所は、歯磨きやうがい、トイレ後の手洗いなどで使っていた洗面所の蛇口(手で回すタイプ)を介して感染が広がった可能性が高いとする結果を報告している。

参考資料*¹:東京 i CDC

参考資料*²:新型コロナウイルス感染予防と歯磨き