コロナ禍における認知症予防と認知症への備え

パズル

緊急事態宣言で長引く
生活不活発状態と認知症

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、政府は再度、緊急事態宣言を発令しました。
現時点では東京、埼玉、神奈川、千葉の4都県が対象です。

しかし、この4都県以外にも、大阪府や愛知県、岐阜県、さらには茨城県などでも、1日に報告される新規感染者数が連続して過去最多を更新しており、全国的に、感染の急拡大に歯止めがかかっていない状況が続いています。

いずれにしても高齢者や基礎疾患(心疾患、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患、がん、腎臓病など)がある方は、感染して発症すると重症化しやすいことが繰り返し報告されています。

該当する方は、感染を避けるため、この先もいっそうの外出自粛が求められます。

とは言え、外出自粛を続ける生活も、すでに1年余りになろうとしています。

これだけ長く自宅にこもり、生活が不活発な日々が続くと、高齢者は、身体機能の低下に伴う要介護状態の重症化が進むばかりか、認知機能もバランスを崩して低下してしまいがちです。

そこで今回は、感染対策としてステイホームが求められる状況下にあって、認知機能の低下や、その先の認知症の発症や進行を防ぐために、経済面も含めどう備えるかといったことを中心に書いてみたいと思います。

閉じこもりがちな生活と
認知症予防のための活動

新型コロナウイルスの感染を恐れて自宅に閉じこもりがちになる生活について、
「認知症予防の観点からみると最も悪い行動パターンです」
と警告する専門家がいます。

認知症の診断および予防の第一人者として注目を集める、浦上克哉(うらかみ かつや)医師(鳥取大学医学部保健学科生体制御学講座・教授)です。

認知症は、その人の努力次第で予防することも可能だとされています。
また、確実に予防することはできないまでも、認知症になるリスクを下げることはできるし、認知症になる時期を遅らせることもできる――、と浦上医師。

認知症予防のために運動・知的活動・会話を

新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない状況下にあって、感染対策と併行して認知症予防のために心がけたいこととして、浦上医師が理事長を務める「日本認知症予防学会」は、公式Webサイトで以下の提言を行っています*¹。

  1. 1日30分以上の体を動かす運動や体操を行いましょう
    ・3密(密集、密接、密閉)を避けた環境、できれば屋外で、散歩などの運動を行う
    ・屋内でも、スクワットなど、下半身を中心に筋力アップの運動を行う
  2. 自分の好きな、楽しめることを日課にしましょう
    ・頭を使って指を動かす知的活動が理想的
    ・ぬり絵、パズル、短歌や俳句、川柳などを作る、歌を歌う、ピアノ演奏など
  3. 家族や友人との会話を楽しみましょう
    ・感染対策上直接会っての会話は難しいが、電話等の通信機器、できればビデオ通話など顔が見える機器を活用して、コロナ禍以前より頻回に家族や友人らと会話をする
    ・孫との会話は認知症予防上特に大切
    ・対面にて会話する際は、フィジカルディスタンス(身体的距離)を1.5~2m保ちつつ、ソーシャルディスタンス(心理的距離)は密に

認知症になったら
自分はどうしてほしいか

認知症については、まずは自分のできる範囲で着実に予防に取り組むことが大切でしょう。

同時に、高齢者と呼ばれる年代に入ったら、認知症を他人事と思わず、自分が認知症になったときのことも考えて備えをしておくことをおすすめします。

何しろ、2017(平成29)年版の高齢社会白書によれば、わが国の認知症患者は、2012年の時点ですでに約460万人、65歳以上の高齢者の約7人に1人と推計されています。

この数に、認知症の前段階とされる「軽度認知障害」と推計される400万人を合わせると、4人に1人が認知症あるいはその予備軍ということになります。

さらに、団塊の世代と呼ばれる1947~1949年生まれの全員が後期高齢者(75歳以上)となる2025年には、軽度認知障害と認知症の患者数は、約1362万人に達し、65歳以上の約3人に1人が認知症あるいは認知症予備軍になると見込まれているのです。

このように、認知症は高齢者にとっていたって身近な病気であることを考え、
「もしも認知症になったら、自分としてはどうしてほしいか」、
つまり、自宅で家族に介護してもらいたいのか、それともそれなりの高齢者施設に住み替えることを望むのかを、人生会議で自分の意思を家族に伝えておくことを、先に提案しました。

認知症への備えとして
認知症保険への加入を検討

加えて今回は、もう一つの認知症への備えとして、民間介護保険の一種である「認知症保険」への加入を検討することを提案したいと思います。

認知症になると、状態や要介護度にもよりますが、その介護には通常の介護以上に人手が必要になりますから、経済的負担もそれなのにかさむことになりがちです。

家計経済研究所の調査によれば、要介護1~5の場合、1か月に介護サービスにかかる費用の平均は、認知症がなければ1.6万円い゛すが、最も介護負担の重い重度の認知症になると7万円と、5倍近くの差が生じてきます*²。

認知症の診断を受ける前に

というわけで、否応なく認知症保険の必要性を実感させられることになるのですが、認知症と診断された時点で慌てて加入しようとしても間に合わない場合が多いというのが現実です。

たとえば、朝日生命の「認知症介護一時金保険D」という商品を見て見ると、一時金が支払われるのは、「加入から2年以上が経過したのち、要介護1以上で器質性の認知症と診断された場合」という条件が付いています。

認知症保険は各保険会社が提供していますが、その多くは、認知症発症前、あるいは要介護状態になる前であることが、保険加入の条件になっています。

商品によっては、認知症と診断された後、あるいは要介護認定を受けた後でも加入できるものもあります。しかしその場合は、加入から一定期間が過ぎないと給付金を受け取ることができないものが多いようです。

認知症保険は、一般に40歳から75歳まで加入できるようです。
また、子どもが契約者になり、親を被保険者にして加入できる商品もありますから、そのときになって慌てないように、早めに加入を検討してみることをおすすめします。

参考資料*¹:日本認知症予防学会「新型コロナウイルス感染症関連」

参考資料*²:家計経済研究所「在宅介護のお金と負担 2016年調査」