コロナ禍における認知症予防と認知症への備え

パズル

コロナ禍で長引く
生活不活発状態と認知症

連日報道される新型コロナウイルスは感染拡大の第7波に入り、過去最高の新規感染者数が各地で相次ぐなど、気を許せない状況が続いています。

とりわけ高齢者や心疾患、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患、がん、腎臓病などの基礎疾患がある方は、感染して発症すると重症化しやすいだけに、該当する方は、感染を避けるため、この先もいっそうの外出自粛が求められます。

とは言え、外出自粛を続ける生活も、すでに3年余りになろうとしています。

これだけ長く自宅にこもり、生活が不活発な日々が続くと、高齢者は、身体機能の低下に伴う要介護へのリスクが高まるばかりか、認知機能もバランスを崩して低下しがちです。

6月14日は、日本認知症予防学会が定めた「認知症予防の日」*でした。

そこで今回は、感染対策として家に閉じこもりがちな状況下にあって、認知機能の低下や、その先の認知症予防のために心がけたいポイントをまとめてみたいと思います。

*認知症予防の日:6月14日はアルツハイマー型認知症に特徴的な脳の萎縮を発見したドイツの医学者、アルツハイマー博士の誕生日。これにちなんで日本認知症予防学会は毎年同日を「認知症予防の日」と定め、広く社会に認知症予防の啓蒙活動を実施している。一方で「国際アルツハイマー病協会」はWHOと共同で、毎年9月21日を「世界アルツハイマーデー」としている。

コロナ禍による閉じこもりと
認知症予防のための活動

新型コロナウイルスの感染を恐れて自宅に閉じこもりがちになる生活は、「認知症予防の観点からすれば最も悪い行動パターン」だとして強く警告する専門家がいます。

認知症の診断および予防の第一人者として注目を集める、浦上克哉(うらかみ かつや)医師(鳥取大学医学部保健学科生体制御学講座・教授)です。

認知症は、その人の努力次第で予防することも可能だとされています。

また、確実に予防することはできないまでも、認知症になるリスクを下げることはできるし、認知症になる時期を遅らせることもできる――、と浦上医師は言います。

認知症予防のために運動・知的活動・会話を

新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない状況下にあって、感染対策と併行して認知症予防のために心がけたいこととして、浦上医師が理事長を務める「日本認知症予防学会」は、公式ホームページで以下のような提言を行っています*¹。

  1. 1日30分以上の体を動かす運動や体操を行いましょう
    ・3密(密集、密接、密閉)を避けた環境、できれば屋外で、ウォーキングを行う
    ・屋内でも、スクワットなど、下半身を中心に筋力アップの体操を行う
  2. 自分の好きな、楽しめることを日課にしましょう
    頭を使って指を動かす知的活動が理想的
    ぬり絵、パズル、短歌や俳句、川柳などを作る、歌を歌う、ピアノ演奏など
  3. 家族や友人との会話を楽しみましょう
    ・感染対策上直接会っての会話は難しいが、電話等の通信機器、できればビデオ通話など顔が見える機器を活用して、コロナ禍以前より頻回に家族や友人らと会話をする
    ・孫との会話は認知症予防上特に大切
    ・対面で会話する際は、フィジカルディスタンス(身体的距離)を1.5~2m保ちつつ、ソーシャルディスタンス(心理的距離)は密に

このうち「2」の「頭を使って指を動かす知的活動」の手軽な方法の一つとして、普段使う利き手ではなく、使い慣れていないほうの手で行う大人のぬり絵があります。

認知症予防は多種多様な方法が紹介されているが、「知的活動」が最も重要とのこと。それも、普段やり慣れていないことをやり慣れていない方法で行うと、脳血流はより効果的にアップし、脳機能が活性化する。おススメは、利き手と反対の手による「塗り絵」だ。

また、「外部の脳」と言われる「手(指)」を動かすことによって脳を動かし、脳の血流をアップさせるにはピアノのレッスンもおすすめです。

哲学者のカントによれば「手は外部の脳」とのこと。手を動かすことは脳を使うことであり、脳内細胞の活性化、血流アップにつながるというわけだ。これを認知症予防に生かさない手はないということで、80歳でピアノを習い始めた知人の話、ぬり絵の話等々を紹介する。

認知症になったら
自分はどうしてほしいか

認知症については、まずは自分のできる範囲で着実に予防に取り組むことが大切でしょう。

同時に、高齢者と呼ばれる年代に入ったら、認知症を他人事と思わず、自分が認知症になったときのことも考えて備えをしておくことをおすすめします。

何しろ、わが国の認知症患者は、2020(令和2)年時点ですでに約630万人にのぼります。

これが、団塊の世代と呼ばれる1947~1949年生まれの全員が後期高齢者(75歳以上)となる2025(令和7)年には、約700万人に達し、65歳以上の約5人に1人が認知症になると見込まれているのです。

このように、認知症は高齢者にとっていたって身近な病気であることを考え、「もしも認知症になったら、自分としてはどうしてほしいのか」、つまり自宅で家族に介護してもらいたいのか、それともなんらかの高齢者施設に住み替えることを望むのかを、人生会議で自分の意思を家族に伝えておくよう、先に提案しました。

新型コロナの感染拡大により、年末年始に帰省する人は例年に比べ大幅に減少しそうだ。この休暇は家族で人生会議をするいい機会だ。オンラインでもいいから、最期を迎える時以前の話として、認知症になったら自分はどうしたいか、人生会議で話し合ってみてはどうだろうか。

認知症への備えとして
認知症保険への加入を検討

加えて今回は、もう一つの認知症への備えとして、民間介護保険の一種である「認知症保険」への加入を検討することを提案したいと思います。

認知症になると、状態や要介護度にもよりますが、その介護には通常の介護以上に人手が必要になりますから、経済的負担もそれなのにかさむことになりがちです。

家計経済研究所の調査によれば、要介護1~5の場合、1か月に介護サービスにかかる費用の平均は、認知症がなければ1.6万円ですが、最も介護負担の重い重度の認知症になると7万円と、5倍近くの差が生じてきます*²。

認知症の診断を受ける前に

というわけで、否応なく認知症保険の必要性を実感させられることになるわけですが、認知症と診断された時点で慌てて加入しようとしても間に合わない場合が多いのが実情です。

たとえば、朝日生命の「認知症介護一時金保険D」という商品を見てみると、一時金が支払われるのは、「加入から2年以上が経過したのち、要介護1以上で器質性の認知症と診断された場合に限る」という条件が付いています。

認知症保険は各保険会社が提供していますが、その多くは、認知症発症前、あるいは要介護状態になる前であることが保険加入の条件となっています。

商品によっては、認知症と診断された後、あるいは要介護認定を受けた後でも加入できるものもありますが、その場合は、加入から一定期間が過ぎないと給付金を受け取ることができないものが多いようです。

認知症保険は、一般に40歳から75歳まで加入できるとされています。

また、子どもが契約者になり、親を被保険者にして加入できる商品もありますから、そのときになって慌てないように、早めに加入を検討してみることをおすすめします。

参考資料*¹:日本認知症予防学会「新型コロナウイルス感染症関連」

参考資料*²:家計経済研究所「在宅介護のお金と負担 2016年調査」