新型コロナ感染拡大の影響は
高齢者の「通いの場」にも
一人ではなかなか長続きしない体操を定期的に集まって一緒にしたり、仲間とゲームに興じたり、おしゃべりをして笑い合ったりと、地域で暮らす高齢者の触れ合いの場として、「通いの場」はこのところますます人気が高まっているようです。
全国に10万カ所以上はあるとされる通いの場に出かけて行き、そこで過ごす時間が、次のような効果をもたらしていることが、調査等で確認されています。
⑴ 気持ちが明るくなりうつ病のリスクが下がる
⑵ 生活不活発病やフレイル、転倒などを防ぎ、介護予防につながる
⑶ 他者とのコミュニケーションや笑いが認知症のリスクを下げる
ところが、健康長寿を願う人々の間で好評だったこの通いの場も、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のために活動自粛が実施されて早や3か月……。
ここにきてやっと再開する動きが出始めているようです。
再開される通いの場に参加する際の留意点
とは言え、新型コロナウイルス感染は完全に収束したわけではありません。
今後の感染状況について、人工知能(AI)による分析の結果では、来年(2022年)の1月中旬ごろに第6波のピークを迎えると予測され、依然として警戒が必要な状況です。
そこで厚生労働省は、再開される通いの場に参加する際の留意点をリーフレットにまとめて感染予防の徹底を呼びかけています。
今回はそのポイントをお伝えしておきたいと思います。
通いの場に参加する際は
コロナ感染対策の徹底を
自粛中の通いの場の活動を再開するか否かは、それぞれの地域における新型コロナウイルス感染症の流行状況から、感染症の専門医や保健師ら公衆衛生の専門家が協議したうえで判断されることになります。
再開される通いの場に参加する際にまず留意したいのは、感染対策です。
リーフレットでは、そのポイントとして以下の7点をあげています。
- 毎日決まった時間に体温を計測し、その日の体調を確認しましょう
- 体調の悪いとき(風邪症状や強いだるさがあるなど)は参加を見合わせましょう
- 感染を疑う症状(咳や喉の痛みなどの呼吸器症状)がなくてもマスク、それも不織布マスク*を着用しましょう
- 通いの場では、こまめに、流水と石けんでていねいな手洗いをしましょう
- 1時間に2回以上の換気をしましょう
◇1回数分間以上、窓を全開する - お互いの距離は、フィジカルディスタンス(身体的距離)を確保、つまり
お互いに手を伸ばしたら手が届く範囲以上空けるようにしましょう
◇できれば2m、最低でも1mの間隔を - 会話をする際は正面に立たないようにして、会話時に飛び散るしぶき(ウイルスを含む可能性がある)を吸い込まないように気をつけましょう
体操などで身体を動かすときは
マスク着用の負荷に注意
そもそも通いの場は、
「高齢者が容易に通える範囲内(歩いて15分以内程度)で、週1回以上、継続して筋力向上のためのトレーニングができる場所」
として設置されるようになったものです。
したがって、通いの場では多くの時間を筋肉トレーニングなどの体操に費やすことになると思います。その際の留意点としては、以下の2点がポイントとして挙げられます。
- マスクを着けて運動する場合は、身体への負担が著しく大きくなりやすいため、無理をせず、早めに休憩をとりましょう
- 熱中症予防のため、こまめに水分補給を行うとともに室温を調整しましょう(夏季)
この1にある「マスクを着けたままで行う運動による身体への負担」については、日本救急医学会が、マスクをしたまま軽い運動を行うと、呼吸数や心拍数などが増加し、顔面の温度も1.7℃上昇したとする研究データを紹介しています。
このデータから、マスク着用により身体にいつも以上の負担がかかることは明らかだとし、夏季は例年以上に熱中症のリスクが高くなると警告しています。
仲間との飲食時には
お互いが飛沫を意識する
もともとは体操が目的だった通いの場も、毎週のトレーニングに継続して参加し仲間と顔を合わせているうちに、「階段の昇り降りが楽になった」とか「膝の痛みがなくなった」など、トレーニングの効果を語り合うようになってきます。
さらに交流が進むと、トレーニングの後に仲間内で自主的に歓談の場を設け、茶話会や食事会など飲食を共にする機会が自然と多くなってくるようです。
その際には、新型コロナウイルスの感染経路、とりわけお互いの呼吸や咳、くしゃみを介して、さらには会話をしたり笑い声を上げるたびに口や鼻から飛び出す微細な飛沫に感染リスクがあることを意識して、以下の点に留意するよう促しています。
- 座席は、対面を避け、横並びで座るなどの工夫を行いましょう
- 会食等では、料理は個々に分けて、茶菓は個別包装されたものを選びましょう
- 食器・コップ・箸などは使い捨て(ディスポ食器)にするか、流用する際は洗剤(通常使用の洗剤でOK)で洗いましょう
「オンライン通いの場」
スマートフォン用アプリの活用を
新型コロナウイルス感染拡大により通いの場での活動が自粛され、高齢者の活動量が減少していることを懸念した国立長寿医療研究センターは、自宅でできる活動をサポートしようと、スマートフォン用アプリ「オンライン通いの場」を開発し、無料でリリースしています。
開発されたアプリには、以下の機能があり、外出を通じて活動量を増やすことにより、自粛中の通いの場の機能を補強できるシステムになるよう工夫されています。
また、居宅で過ごす時間が長くなることを想定して、自宅でできる活動や、認知症予防を目的とした「コグニサイズ」といって、軽い運動をしながら頭で計算やしりとりをする運動画像の配信や脳活性化ゲームなども搭載されています。
- 外出支援機能
外出を促進するための「散歩コース」の自動作成
お出かけポイントの付与・活動量をチェックできる - 体操動画機能
自宅でできる体操動画約50種類 - 健康チェック機能
7つの質問に答えて、自分に適した運動・活動パックを見つける - 通いの場情報機能
- 脳活性化トレーニング機能
脳を鍛えるゲーム - 食事の注文機能
- 宅配や買い物機能
- コンテンツランキング機能
上記機能の一部は未公開ですが、順次公開される予定だそうです。
アプリはGoogle Playで「オンライン通いの場」と検索してみてください。
まずはAndroid版を先行させ、準備が整い次第iOS版の提供も始めるとのことです。
アプリの公開直後は画面のフリーズなどが発生しがちだったようですが、最近ではその手のトラブルも減っているようですから、一度挑戦してみてはいかがでしょうか。
なお、自粛で疲れ気味の脳の活性化には、手を使うこともオススメします。